トカゲに注意
「代用の基盤なんてあんのかよ?」
「体ノナカニ、ドライバートキバンガハイッテマス」
急にしおらしくなっちまって…
ぶつくさ言いながら、つなぎ目に指を入れ、中を開ける。
入ってるのは、白菜、しめじ、ペットボトルのお茶、賞味期限がいつか分からないヨーグルト、缶チューハイ……
てか、転がり過ぎてぐちゃぐちゃじゃねーかよ。
これか?
俺は、それらしきものを手に取った。
「んで、基盤はどうやって取り換えればいい?」
「表ノ面ニ、ビス穴ガヨッツアルノデ、ソレヲハズシテ下サイ」
どこにビスなんてついてる?
蓋を閉じて、オードリーの体を転がして探してみると、あった。
ドライバーをビスに突き立てて、クルクル回して外す。
取れたビスはポケットに入れて、2個、3個と外し、最後のに取り掛かる。
「あっ!」
ビス山がつぶれた。
こうなると、面倒だ。
ドライバーをあてがって、体重をのせて……
……ダメだ、余計、山がつぶれた。
「ビス穴がナメちまった。 ここにある道具だけじゃ、多分外せねーわ」
「……」
オードリーが何か言いたげな顔をしている。
いや、表情なんてねーから、こっちが勝手にそう思ってるだけか。
「……仕方ナイデスネ。 先ニススミマショウ」
優しいなオイ。
オードリーが街までの道を把握してるから、俺はその後に着いていく。
坂になってるとこは、オードリーを押して進むしかない。
さっそく、そういう場面に遭遇した。
「くっそ、やっぱ、どっかで基盤交換しねーとダメか」
スパイクがあれば、難なく越せる坂も、俺が手で押してやらなきゃならない。
その都度剣を床に置いて、取りに戻ってくんのもめんどくせーから、剣の切っ先と柄にツタを括って、背負えるようにした。
「あとどれくらいで街につくんだよ?」
「コノペースダト、2日ハカカリマスネ」
2日!?
そんなにかかるのかよ……
空はうっすら暗くなってきている。
完全に陽が落ちたら、真っ暗で何も見えなくなっちまうから、そうなる前に、雨風を凌げるような場所を探さねーと。
「……あそこなら、少しはマシか?」
木が腐って、中がえぐれている所を発見した。
しゃがんでやっと入れる程度のスペースしかないし、快適とは言えねーけど、こんな所に旅館なんてあるわけないから、我慢するしかない。
寝るとこは見つけたから、次は飯か。
確か、冷蔵庫に白菜としめじがあったよな。
どっちも、そのままじゃ食えねーけど、鍋、ねえし。
ってか、火もねーじゃん。
オードリーのヒーターが使えりゃ、それで水を沸かせるかも知んねーけど、今は使えんのか?
「オードリー、ヒーター使えんのか?」
「ヤッテミマス」
オードリーの体から、ぼんやりと熱が発せられた。
ちょっとあったかい。
「これが限界か?」
んだよ、全然ダメじゃねーか。
「明かりも使えねーの?」
オードリーからは、何の反応もない。
接触が悪いだけか?
ガン、と蹴りを見舞うと、うっすらと明かりがついた。
「……うわああああああっ!?」
明かりがついた瞬間、俺の目の前に、無表情のトカゲが現れた。




