救援
それから、どれ位時間が経ったか。
最初は体制を変えないようにと緊張していたが、特別船が傾く様子もない。
俺は、その場にあぐらをかいた。
「ふう。 とりあえず、船が谷底に落ちる心配はねーか」
「うん、大丈夫みたい」
ヒロハルは大胆にも、横になって楽な姿勢になっている。
「良かったー、僕もあぐらかこっと。 足、痺れちゃったし」
なぜか正座していたブタが、体制を変えようとしたその時だった。
ミキリ、という音が船内に響く。
「えっ、何々?」
「ブタ、動くんじゃねぇっ!」
ブタは、腰を宙に浮かせた状態で、固まった。
恐らく、今まで絶妙なバランスをキープしていたのが、ブタが動いたことで、崩れたのかも知れない。
「ちょ、この体制、無理だよ……」
ブタの額に汗が滲み、膝がプルプルし始めた。
「おめーが俺らの命綱握ってんだ。 ゆっくり、さっきの姿勢に戻せ」
「無理っ、僕、無理!」
体が浮いた。
ブタが尻餅をつく瞬間、俺は瞼を閉じた。
くそっ、終わった。
最後が寄りにも寄って、こんなダセー終わり方だとは。
しかし、そこから数秒が経過したが、何も起きない。
うっすら目を開けてみる。
「……ん?」
「あっ、ぶねぇ…… な」
ブタのケツに手を滑り込ませて、尻餅をつくのをおっさん船長が回避していた。
「あ、ありがとうございます」
「少しはダイエット、考えような」
助かった……
マジ、命の恩人だわ。
「ほんと、心臓に悪いからやめて」
チズルがホッと胸をなで下ろす。
場の空気が弛緩すると、今度はチビが口を開いた。
「皆さん、静に。 何か、外から聞こえませんか?」
チビに言われて、俺は耳をそばだてた。
確かに、くぐもった声? らしきものが聞こえる。
枕を口に当てて、おーい、って言ってるみたいな。
……もしかして、救援?
「助けが来たんじゃねーか?」
「ちょっと、俺見てみるよ」
ヒロハルが扉に向かおうとした。
「待てって、扉に近づいたら危ねーだろ!」
「でも、この中で自由に動けるのは、俺だけだよね。 重さ的にさ」
「わ、私だって軽いわよ!」
……誰もお前が重いとは言ってねーよ。
ヒロハルは扉を開けて、空を見上げた。
すると、上から垂れてきたロープが一本。
「崖の上で、誰かが手を振ってる」
救援だ!
だが、ここから一人ずつ、ロープを上らなきゃならない。




