オーロラ
雪かき丸の中は、まあ、快適とは言えない。
8畳程度の広さで、ゴザが敷いてあるだけ。
しかも、スピードもあまり出てないみてーだ。
「……これなら、犬ぞりの方が早くねーか?」
「確かに犬ぞりははえーけど、メタルの影響で凶暴化すっからダメなんだよ」
……そういうことかよ。
ハムスターなら、凶暴化しても大して怖くねーわな。
俺たちは特にやることもなく、ぼーっと窓の外を見ているだけだったが、突然、空にグリーンのカーテンが広がった。
オーロラだ。
「わあ、すごい! あれ、何?」
チズルが感嘆の声を上げる。
外の景色に興味なかった奴らも、その声を聞いて、窓にへばりついた。
「幻想的だね」
ブタが似合わないセリフを言う。
「あれは、天女の羽衣だ。 天女様の機嫌がいいときは、ああやって緑の羽衣をまとって空を散歩するんだよ」
「いいなー、私も羽織ってみたいかも」
天女の羽衣か。
月のデコボコを見て、ウサギの餅つきだったり、蟹だったり、色々解釈がある。
オーロラも、そんな風に国によって別々な見方があんだな。
すると、後ろからため息のようなものが聞こえた。
オードリーだ。
「……あれはオーロラだ。 太陽風が星の磁場と衝突して起こる現象で、その際発生する紫外線が、酸素やら窒素やらとぶつかって、ああいう色が出る」
さすが機械だわ。
ジョーチョの欠片もねーやつ。
「君は、あれを見てどう思う?」
チズルが、オードリーに質問した。
「どう思うって、ただの放電現象だ。 珍しくもなんともねえぜ」
「ダメね。 もっと、ロマンチックな例えをしないと私の心はつかめないわよ?」
「……ふ、フン、別に、お前に好かれようと思ってねーわ」
しっしっし、とニヤけるチズル。
からかい上手のチズルさんかよ。
そんな話をしている内に、俺たちは昼間の疲れもあって、いつの間にか眠りについていた。
「あんちゃん、起きなよ」
「……くっ」
気が付くと、車内には誰も残っていなかった。
俺が最後か?
「みんなは?」
「もうとっくに起きてるよ」
マジか。
俺は、剣を手にして、雪かき丸から降りた。
辺りは薄っすら明るく、既にメンバーが雪原に並んでいる。
ブタより起きるのが遅かったのは、軽くショックだわ。
「よーし、みんな集まったな。 今から、この先の基地に向かうが、修繕を行う前に、中の様子を確認する。 この基地で何が起こったのかを、調べねーといけねー」
……どういうことだ?
「あの、聞いてないっすけど。 ここで、何があったんすか?」
おっさん船長は、少し黙ってから、口を開いた。
「……この基地では、10日くらい前から連絡が取れなくなっていた。 いつもなら、メタルを回収した船が定期的に街に戻って来ていたのが、突然途絶えたんだ。 俺たちは、もしかしたら、魔物の襲撃を受けたんじゃねーか? という仮説を立てた」
「中の人間は殺されて、魔物の巣窟になってる可能性がある、ってことですか?」
俺も、今チビの言った状況を想像していた。
一気に危険度が上がったじゃねーか!
でも、ここまで来て手ぶらはねーよな……
「ちょっと、相談させてもらってもいいすか?」
俺たちは、少し離れた場所で輪になって相談を始めた。
「どうする?」
「武器はあるんだし、やってみようよ」
意外にも、そう言ったのはブタだった。




