南極調査
馬車がスノーポイントに到着すると、馬に跨っていた乗り手が、よっ、と地面に降りた。
「みなさん、ありがとうございました。 これ、報酬です」
俺たちはそれぞれ、皮の袋を受け取った。
その中には、15シルバーが入っていた。
「じゃーねー」
小学生みたいな見てくれの操者は、そのまま馬車を率いて街の奥へと消えた。
「さて、こっからどーすっか」
「ねえ、寒いから、先にあそこ行かない?」
チズルが指さした先には、「しろくまジャケット」と書かれた看板が掲げられた、木造の建物があった。
まずは服装からか。
確かに、このままじゃ凍えちまう。
「金もあるしな、丁度いいか」
中に入ると、店内には暖炉が設置してあり、ポカポカと温かい。
店の広さはざっと20畳くらいか?
そこに、服を引っ掛けるためのラックが置かれていて、フカフカの暖かそうな上着が並んでいる。
俺は、適当に服を手に取って、値札を見た。
「10シルバーか。 お手頃だな」
俺の感覚的に、1シルバーは大体1000円ってとこだから、上着で1万円。
妥当な値段じゃねーかな。
つーか、むしろ安いかもだ。
「試着されてみますか?」
「ん、いいのか? って、おわあああああああああああっ」
振り向くと、そこにいたのは、シロクマ!?
俺等が入って来たのを確認して、奥の部屋から出て来たらしい。
こんなでけーシロクマが、何でこんな所にいんだよ!
「おっと、驚かせてしまいましたか。 すみません。 私、ここの支配人のシロクマです」
シロクマって、見りゃわかるっつーの。
しかも、流暢にしゃべってやがる。
他のメンバーも、手にした服を地面に落としたり、口をポカーンと開けたりと、まあ、ベタな反応だ。
そんな中、ブタがどうにか言葉を発した。
「シロクマが、シロクマの毛皮、売ってる……」
「おデブさん、それは誤解ですよ。 この毛皮、別に仲間を殺して剥いでいるわけではありません。 事故で亡くなった仲間の毛皮を、ちょこっと分けてもらってるだけです」
……その割には、大量に店内に売れ残ってっけどな。
あんま詮索したら、真実を闇に葬るために消される可能性があるから、触れないでおくか。
「それより、何でしゃべれんだよ?」
シロクマは、顔の前に人差し指を立てて、答えた。
「メタルですよ。 このスノーポイントには、飛来したメタルが大量にあります。 その影響で、私のように突然変異した生物が、この街にもたくさん住んでいます」
マジかよ……
じゃあ、この街でこういう光景は珍しくないって事か。
「メタルの影響って、もっと凶暴になるのかと思ってた」
ヒロハルがこれ以上曲げられない角度で、シロクマを見上げて言った。
スラムに現れたネズミは、人型だけど、見境なく襲って来てたしな。
「もちろん、そういった仲間もいますね。 私のようなケースの方が、稀かと」
だよな、と腕を組んで考えていると、JDがジャケットを持ってシロクマの所へと来た。
「これ下さい」
「はい、10シルバーになります」
毛皮のジャケットを購入して外に出ると、何やら見覚えのある球体がそこにいた。
「ん、オードリー?」




