オードリー故障
もう、大丈夫だよな?
感電したフリとかぜってーやめろよ!?
ツタを離して泥の中に飛び降りると、ズボ、と泥の中に足が埋まる。
トカゲ共は、口を開けて白目を剥いてるし、これで演技はねーか。
俺は、トカゲを押しのけて沼地から出ると、辺りを見回した。
ったく、どこまで行っちまったんだよ。
草がつぶれてるとこが、オードリーが走った部分か。
その後を辿ると、深い溝になってる所から呻き声みたいなのが聞こえて来た。
身を乗り出して確認すると、さっきと似たような沼地にオードリーがはまっている。
「何だよお前、抜け出せねーのか?」
「助ケテ…… 下サイ」
スパイク使って出てこれねーのか?
……ちょっと、いい気味じゃねーか。
「えっ、何てー? 聞こえねんだけど」
「助ケテ、下サイッ、ウッ、ウウッ……」
涙声交じりでちょっとかわいそうになって来たな。
こいつを助けねーと先に進めねーし、まあ、助けてやるか。
「わーったよ、これに懲りて、二度と俺に生意気な口きくんじゃねーぞ」
「ウウッ…… ワカリマシタ」
そういや、さっきのツタは使えるかも知れねーな。
何本か繋ぎ合わせたら、そこそこ長いロープになる。
それをオードリーに引っ掛けて、こっちから引っ張れば沼地から出てこれんだろ。
もっかい辺りを見回すと、太い木の幹にツタが巻き付いてるのを見つけた。
「うってつけのツタじゃねーか」
ぬかるんだ道を進む。
最近雨でも降ったのか?
沼地ばっかりだし、早いとこ街に行ってシャワーでも浴びて―ぜ。
そんな文明がこの世界にあるか知らねーけど。
ツタの巻き付いてるとこまで来ると、俺はそれを掴んで引っ張った。
……ビクともしねーよ。
さっきトカゲが持ってた剣、あれをとってくっか。
小走りでさっきの泥沼に戻って、トカゲの手から離れた剣を発見。
それを取って、またツタの所にやって来た。
「おらっ!」
ツタに剣をうち込む。
切れたツタを掴んで引き剥がし、木の周りを歩いてほどくと、そこそこ長いツタを回収できた。
2,3本もあれば十分だろ。
俺は、同じ要領で集めたツタを結んで繋ぎ合わせ、一本のロープにし、先を輪っかにして、オードリーが引っかかるようにした。
俺って、結構器用だよな?
「おい、捕まれ!」
……無理か。
まあ、投げた輪っかががうまいことオードリーに引っかかったから、後は引き上げるだけだ。
「俺が引っ張るから、おめーも回転で登って来い! せーのっ」
引っ張ると同時に、オードリーが回転する。
ツタが体に巻き付いて、勢いよく沼から抜け出すことに成功。
ってか、勢い余って危うく直撃する所だ。
「お前、こんなことしなくても、スパイクで登ってこれたんじゃねーの?」
「……キバンガシンスイシテ、機能ガ一部使エナイ」
……はあっ!?
お前、防水じゃねーのかよ!