vs手斧ゴブリン
俺は、鞘から引き抜いた剣で、そのまま手斧ゴブリンに斬りかかった。
だが、ボウズの時と同じように盾で受け止められる。
俺は、剣をわざと滑らせ盾から外すと、切り返して相手の腹を狙った。
「……オット」
しかし、体を反らして、刃は紙一重でかわされた。
よけられはしたが、今までこんな風に剣を振ることなんてできなかった。
多分、木の伐採とランプ交換で腕が鍛えられたからだろう。
そう思うことにしておくぜ。
「っと」
考えてる場合じゃない。
すぐに手斧が飛んでくる。
と思いきや、横からガリクソンが双剣で相手を斬りつけた。
短剣が2本、手斧ゴブのわき腹に食い込む。
ガリクソンは見た目通りの軽快な動きで、即座に俺に追いついた。
これで2対1、と思った矢先、ガリクソンの体が上下に2つに割れた。
「ガリクソン!」
「がはっ」
ガリクソンの背後には、太刀ゴブ。
その間合いの中に入っちまったらしい。
逆に2対1。
今度はこっちがピンチじゃねーか……
誰かの死を気に病んでる暇なんかなかった。
俺は、手斧ゴブにタックルして、無理やり向きを変えた。
太刀ゴブと手斧ゴブが一列に並ぶよう仕向け、挟まれるのを防ぐ。
このまま2対1じゃ、分が悪い。
太刀ゴブを谷底に落とすとかして、切り離さねーと。
「……グアアアッ」
突然、太刀ゴブの顔面に、白い粉がまき散らされた。
「あんちゃんっ!」
ヒロハルは、馬車の裏から体を出して、でかいパチンコみたいなものを構えている。
あれで粉の入った袋を飛ばしたのか?
ナイスヒロハル! と思ったが、太刀ゴブがヒロハルの方に向かう。
くそっ、こいつを速攻で仕留めねーと。
しかし、中々スキが見つからねー。
目の前の手斧ゴブは、ブンブン斧を振り回す。
よけるたびに、ブオ、という風が吹き、生きた心地がしない。
俺はとうとう、断崖絶壁に追い込まれた。
「ジネエエエエエッ」
一か八か、相手が斧を振り上げた瞬間、突きを見舞えば倒せるかも知れない。
俺は、それに賭けた。
「……っ!」
しかし、手斧ゴブはすかさず俺の突きを盾でいなした。
俺の体制は崩された。
マジかよ、終わった!
「ッガ……」
「……!?」
短い悲鳴を上げて、手斧ゴブはうつ伏せに倒れた。
倒れたゴブリンの背には、斧が刺さっていた。
「借りは、返した……」
その向こうに、血まみれのボウズが立っていたが、すぐに崩れ落ちた。
最後の力を振り絞って、俺を助けたのか。
今のは5シルバーどころの働きじゃねーぜ。
俺は、ダッシュで太刀ゴブの方に向かった。
急がねーと、ヒロハルが殺されちまう!




