表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メタリック・ファンタジー  作者: oga
第三章 森の街のクエスト
26/105

家族

俺の心臓は跳ねた。

俺の勘違いじゃなきゃ、やるってのは、そういう行為のことだよな?

まさか、こんなとこで童貞を卒業しちまうのか!?


「ねえ、いこうよ」

 

 チズルが、俺の手を引いてくる。

触れられて、俺は気が気じゃなくなった。

チズルは、顔は結構可愛いし、やりたくないって言ったらウソになる。

金があるんなら、別にいいか?

伝票をチラと見ると、5シルバーとかかれていた。

飯で5シルバー、チズルに5シルバーで、丁度10シルバーだ。

でも、本当にこのままついてっていいのか?

俺とこいつは、家族みたいな関係だって、ヒロハルが言ってた。

つまり、金で体を買うような関係じゃねえってことだ。


「行かないの?」


「どこに、行くんだよ」


 チズルは、手の中に握っていた鍵を見せて来た。


「これ、とある宿屋のスペアキー。 これがあれば、空き室に入りたい放題ってわけ」


 そんなもん持ってんのか。

それより、俺の中にある違和感を確認しておく必要がある。

酒でクラクラしてっけど、頭だけはシラフなのが救いだ。


「お前、俺がミナトじゃねぇっての、知ってんだろ? じゃなきゃ、いきなりこんな誘いはしてこねーはずだ」


「ヒロハルから聞いた。 だから、逆にいいかなー、なんて」


 …………こいつ、そんな軽い奴なのか? だとしたら、毎日適当な相手見つけて、小遣い稼ぎしてんのか。

どうする?

ついてくか、やめるか。


「どうするの? こんな所でずっと立ってたら、変なんだけど」


「……一旦、外出っか」


 俺は、5シルバーを支払って、外に出た。


「宿屋はこっち」


 チズルは、完全にその気で先に歩いて行った。

俺は、考えが固まらないまま、チズルの後に着いて行く。

すっかり夜が更けており、人通りはない。

そのまま、路地に入り、ボロい宿屋の前に止まった。

チズルが、鍵で扉を開けようとした、その時だった。

俺の中に、一つの考えがよぎった。

……ヒロハル、あいつ、まさか!


「お前、ヒロハルに言われて、俺を引き留めに来たんじゃねーのか?」


「……」


 チズルの手が止まった。

何も返答がないのは、図星か?


「ヒロハルから、俺のことを聞いたってのは、ヒロハルがお前に何か相談しに来たってことじゃねーのか? ミナトは、兵隊になるっつってた。 それをヒロハルは拒んでた。 だから、俺を引き留めるために、お前が人肌脱いだんじゃねーのか?」


 5シルバー俺からふんだくれば、剣を新調することができなくなって、馬車の護衛をすることができない。

それはつまり、この街から出られなくなるってことだ。

俺が女にはまって、稼ぎを全部つぎ込んだら、永久にここから出れなくなる。


「ヒロハルには、あなたしかいない。 もし中身が別人の誰かだとしても、それは変わらないのよ」


 チズルは、こちらに向き直って、真っすぐ俺を見つめた。

ヒロハル、馬鹿野郎……


「……別に、一人にするつもりはねーよ」


 ぼっちの辛さは、俺だって良く分かってる。


「あいつも、連れていく」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ