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メタリック・ファンタジー  作者: oga
第三章 森の街のクエスト
25/105

チズル

 一体、今何時だよ……

もう10時くらいじゃねーか?

周りはほとんど人が残っておらず、俺とおっさん、木を運ぶために待ってくれてるおっさん、合計4人だけになっていた。


「っし、これを運べば最後だ!」


「っしゃ、暗いから注意しろよ」


「……」


 俺は、返事する気力もなく、斧を置いて木に手を添えた。






 木を運んでいる途中、俺の肩からはブチブチと何かが切れる音がしたが、構わず進んだ。

本当は超痛かったけど、こいつらに言っても取り合ってくれねーし。

木を下すと、俺の目からはなぜか涙があふれた。

もう、ぜってーこんな仕事はしねーぞ。


「初めてにしちゃ、よく頑張ったな! 今日はこれで終わりだ。 親方がそこにいっから、金を受け取ってくれ」


 俺は、ヨタヨタと歩いて、朝あいさつしてた口の悪い親方の所へと向かった。


「オメーが最後だ。 ほら、受け取れ」


 親方は、俺の手のひらに、5シルバーを乗せた。

5シルバーがこんな重て―とは……

手がプルプルして、思わず金を床にばらまきそうだ。


「……って、5シルバーっすか?」


「ああ、おめーはひよっこだからな」


「は、はああっ!?」


「なんてな、がっはっは」


 ……ふ、ふざけんな。

今、そんなボケかまされても、つっこむ気力なんてねーから。

俺は、更に5シルバー受け取り、合計10シルバーを手に入れた。

そういや、斧を森に置きっぱなしだ。

斧がねーと、こいつら困るよな。


「はあ……」


 俺が森に行こうとした時、おっさんが声をかけてきた。


「斧は俺が拾っといてやるからよ、お前はもう帰れ」


 今日、ペアになったおっさんだ。


「んで、明日は来るのか? 来るんなら、俺が言っといてやる」


「……」


 行きたくねー。

仕事そのものに行きたくねー。

だけど、金稼がねーと、生きてけないし。

俺は、役所で助言をくれた戦士の言ってたことを思い出した。

上から順に、クエストを受けてけばいい。

確か、2番目は壁の補修のクエストだったっけか。


「明日は、また違うクエストにしようかなって、思ってたとこす」


「そうか。 じゃ、また気が向いたら、だな」


「……そっすね」







 夜になり、テンションはがた落ちだ。

社会人をしたことねーからピンとこなかったが、今、初めて理解した。

クタクタになるまで仕事をして、終電で帰っていくサラリーマンの気持ちは、こんなんなのか。

飯食って寝てすぐ仕事。

ゲームする暇もない。

クソみてーだな。


「まじで、クソだわ」


 俺は、石を思い切り蹴飛ばした。

……ああ、腹減った。

ふと、隣から笑い声が聞こえて来た。

すぐ横は、居酒屋か?

一人でこんなとこ入ったことなかったが、どうにでもなれ、みたいな気持ちで、俺は中に入った。

中は戦士や、今日一緒に働いた、ガタイのいいおっさんらでひしめいていた。

どっか隅っこ、あいてねーかな。

あのカウンターにすっか。

俺は、たまたま空いていたカウンターの隅に座った。

壁に貼ってあるメニューを見ると、キノコのソテー、キノコの刺身、キノコのリゾット、など森の幸的な料理がたくさん書かれている。

居酒屋だけど、がっつり系のやつにすっか。


「あ、すいません。 キノコの盛り合わせ、キノコのリゾット、あと、キノコビール」


 ビールも飲んだことなかったけど、やけくそだ。

てか、キノコビールってどんなだよ。

しばらく待っていると、今頼んだ料理が運ばれてきた。


「ハフ、ハフ…… んぐっ、んぐっ」


 俺は、目の前の料理を一気に腹に収めた。

ビールの味はよくわからねーが、喉はからっからだ。

水分なら何でもうめえ。


「ミナト、クエストしたんだ?」


 突然、耳元から声がした。

……誰だ?

振り返ると、何か見たことあるような女がそこにいた。

こいつ、確か、チズル?


「ねえ、5シルバーでやらない?」



 




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