木の伐採2
俺は、思い切り腰の高さに斧を叩き込んだ。
ドガ、と刃が木に食い込む。
ぐっ、と力を入れて抜くと、反動で尻餅をつきそうになった。
片や、おっさんは俺の2,3倍のスピードでどんどん木を削っていく。
やっぱ、年期がちげーわ。
次は、斜めに斧を振り下ろす。
ところが、滑って木に刃が食い込まない。
意外と、斧は言うことを聞かない。
「ちっきしょ……」
すると、おっさんがアドバイスをくれた。
「もっと力を加減しろ。 斜めに振るのは初心者には難しいからな。 狙った所に刃を当てるには、抑制をきかせないとダメだ」
抑制かよ。
俺は、肩の力を抜いて、感触を確かめるようにして少しずつ木に刃を入れた。
なるほどな、力任せに斧を振るったところで、刃が滑るか、変な所に食い込むのがオチだ。
おっさんのアドバイスに従えば、少なくとも狙った所には切り込みを入れられる。
慣れて来たところで、スピードアップだ。
だが、このペースでも一本斬り倒すのに相当時間かかんぞ?
マジでこれを一日中やんのかよ……
まあ、単純作業だし、頭空っぽにしてやってたらその内終わるだろう。
しばらくそれに没頭していると、おっさんが声を上げた。
「よし、こっちは終わりだ。 そっちが終わったら、木を倒すぞ」
…………おいおい。
全然終わらねーんだが。
半分どころか、まだ四分の一にすら達してねーぞ。
おっさんは、切り株に腰を下ろした。
「木は大体一本6シルバーで取引される。 お前と俺で、少なくとも4本は切らねーと、話にならねーぞ」
4本かよ……
この仕事の手取りは一日10シルバーだから、4本切れば24シルバー、4シルバーの儲けか。
同時に、それがノルマってことになる。
よくよくみれば、おっさんの腕は俺のふともも見たいに太い。
毎日斧振ってたらあんな風になるのか。
「おいおい、こっちみてねーで、早く木を削れって」
自分の仕事は終わったんで、早くそっち終わらせて下さいってか。
手が空いたんなら、手伝えっての。
職場で嫌われんぞ。
まあ、社会に出たことねーから、職場を知らねーけどな。
俺は、おっさんへの憎しみを込めながら、斧を振るった。
死ねっ、
このっ、
くそっ、
ハゲっ、
おっさんから大分遅れをとって、ようやく半分にまで切り込みが達した。
「うし、じゃあ、木を倒すから、一緒に同じ方向に木を押すぞ」
クソはげの指示に従い、木を手に添え、力を加える。
「だめだめ、一緒に力を加えんだよ。 いくぞっ、せえのおおおおっ」
グググ、と力を入れる。
「うぐっ、ぐおおおおおおっ」
ミリミリ、と木から音が出る。
「おい、もっと力出せ! 俺ばっかにやらせんなっ」
っざけんな!
俺とおっさん2人しかいねーんだから、力なんて抜けっかよ。
俺は、イラついて馬鹿力を出した。
すると、木はベキベキと音を立て、切り株の方に倒れた。
「よおおおおし、じゃあ、今からこいつを街の加工所に持ってくが、無駄な枝をここで落としちまうぞ」
くそハゲと手分けして、余計な枝を打ち落としていく。
太い枝もあって、中々めんどくせえ。
チェーンソーがありゃ、一瞬なんだろーけど、この世界に電動のものなんておそらくない。
明かりもランタンだしな。
1本目の作業が終わったのは、太陽が頭上に達した昼頃だった。
木を作業場に持ってくのは、さすがに2人じゃ無理なため、そこら辺にいた奴らを呼んだ。
「ぜえっ、ぜえっ……」
作業場に着いた頃には、腕がパンパンになっていた。
明日は、100パー筋肉痛だ。
ってか、この運ぶ作業、めっさしんどい。
途中で我慢できなくなって、下ろしてくれって言ったが、一度下すと持ち上げんのが面倒だから我慢しろって言われた。
これで全く疲れてねーから、こいつら、バケモンだわ。
「ここで木の皮をはいで、用途に応じて木をギリノコで加工していく。 まあ、こっからは熟練の大工の仕事だから、俺等は立ち入れねーがな」
ギリノコってなんだよ……
まあ、ノコギリのことだろーけど。
木は四角く切り出して、そのまま柱に使ったり、細く切り出して、枠とかに使ったりすんだろ。
皮は重ねて繋ぎ合わせて、板みたいにして出荷している。
「さあ、2本目、いっちゃおーぜ!」
なんでそんなノリノリなんだよ……




