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メタリック・ファンタジー  作者: oga
第二章 スラム街
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土地を切り開いたもの

俺が不用意に火なんか放たなければ……

みな、まるで抜け殻になっちまったみたいに、何も言葉を発さなかった。

そんな中、ひとりの女性がつぶやいた。


「何で、こんな目に合わなきゃいけないの? 私が何かしたっての? 神様、そんな私が憎いなら、一思いに殺してよっ! 来る日も来る日も辛いことばっかで、生きてても仕方ないよっ」

 

 どんな経緯があって、ここに流れ着いたのかは分からないが、こいつもずっと辛い思いをして来たんだろう。

俺だって、学校でぼっちだったり、そんな思いもして来たけど、それでも一応は生きていける。

こっちは死活問題だ。

食うもんだってまともに無い日もあるに違いない。


「……」


 かける言葉が見つからねーよ……

こうなったら、黙って抱きしめてやるしかない。

……いや、セクハラになるし、キモいからやめよう。

俺が何もできず棒立ちしていると、さっきの筋肉質の男、カスガが女の横にやって来た。


「チズル、この土地を立ち上げた者たちの話は知ってるか?」


「知らないわよ…… ずずっ」


「それなら、教えてやる。 ここに人が住む前は、何もない森だった。 そこに、俺たちの祖先がやって来て、土地を切り開いたが、それは苦労の連続だったらしい。 木を切って、土地を耕すのにも、大変な労力だ。 更に、作物を育てようにも、土地は痩せていて思うようには育たない。 せっかく育った作物も、飛来したメタルでモンスター化した生物に荒らされ、何日もまともに食べられない日々が続いたとのことだ」


 みんな、カスガの話に耳を傾けていた。

ここにある街は、最初からあったわけじゃない。

それを切り開いた祖先たちの涙ぐましい努力があったからこそ、ここにある。


「どんなに辛いことがあっても、俺たちの祖先は生きて、命を繋いできた。 そうやって必死で繋いできた命を、こんな些細なことでた絶やしていいと思うか?」


 ……俺はその話を聞いて、自分の命は自分だけのものじゃねーのかも知れない、そういう思いに駆られた。


「分かったか? 生きなきゃいけないんだ。 俺たちの祖先の努力が無駄になっちまうだろ?」


「……」


 チズルは、涙を拭って立ち上がった。


「……私、頑張るよ。 こんなことで辛いなんて言ってたら、祖先の人たちに笑われちゃもんね」


「ああ、家はまた作ればいい。 だろ、みんな!」


 周りであぐらをかいていた者らは、立ち上がると、おう! と返事をした。

……ここには、いいリーダーがいるじゃねーか。


「ヒロハル、俺たちも協力すっか」


「うん、俺たち、この土地を切り開いた人たちの血が流れてるんだから、楽勝だよ!」


 俺も立ち上がった。

が、その時、ぐらっ、という立ち眩みに襲われた。


「なん、だ?」


 どさ、と腰を落とす。

何だ?

体が熱っぽい。


「あんちゃん、それ!」


 ……!

何だこれ?

俺のケツから、尻尾が生えてやがる!


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