土地を切り開いたもの
俺が不用意に火なんか放たなければ……
みな、まるで抜け殻になっちまったみたいに、何も言葉を発さなかった。
そんな中、ひとりの女性がつぶやいた。
「何で、こんな目に合わなきゃいけないの? 私が何かしたっての? 神様、そんな私が憎いなら、一思いに殺してよっ! 来る日も来る日も辛いことばっかで、生きてても仕方ないよっ」
どんな経緯があって、ここに流れ着いたのかは分からないが、こいつもずっと辛い思いをして来たんだろう。
俺だって、学校でぼっちだったり、そんな思いもして来たけど、それでも一応は生きていける。
こっちは死活問題だ。
食うもんだってまともに無い日もあるに違いない。
「……」
かける言葉が見つからねーよ……
こうなったら、黙って抱きしめてやるしかない。
……いや、セクハラになるし、キモいからやめよう。
俺が何もできず棒立ちしていると、さっきの筋肉質の男、カスガが女の横にやって来た。
「チズル、この土地を立ち上げた者たちの話は知ってるか?」
「知らないわよ…… ずずっ」
「それなら、教えてやる。 ここに人が住む前は、何もない森だった。 そこに、俺たちの祖先がやって来て、土地を切り開いたが、それは苦労の連続だったらしい。 木を切って、土地を耕すのにも、大変な労力だ。 更に、作物を育てようにも、土地は痩せていて思うようには育たない。 せっかく育った作物も、飛来したメタルでモンスター化した生物に荒らされ、何日もまともに食べられない日々が続いたとのことだ」
みんな、カスガの話に耳を傾けていた。
ここにある街は、最初からあったわけじゃない。
それを切り開いた祖先たちの涙ぐましい努力があったからこそ、ここにある。
「どんなに辛いことがあっても、俺たちの祖先は生きて、命を繋いできた。 そうやって必死で繋いできた命を、こんな些細なことでた絶やしていいと思うか?」
……俺はその話を聞いて、自分の命は自分だけのものじゃねーのかも知れない、そういう思いに駆られた。
「分かったか? 生きなきゃいけないんだ。 俺たちの祖先の努力が無駄になっちまうだろ?」
「……」
チズルは、涙を拭って立ち上がった。
「……私、頑張るよ。 こんなことで辛いなんて言ってたら、祖先の人たちに笑われちゃもんね」
「ああ、家はまた作ればいい。 だろ、みんな!」
周りであぐらをかいていた者らは、立ち上がると、おう! と返事をした。
……ここには、いいリーダーがいるじゃねーか。
「ヒロハル、俺たちも協力すっか」
「うん、俺たち、この土地を切り開いた人たちの血が流れてるんだから、楽勝だよ!」
俺も立ち上がった。
が、その時、ぐらっ、という立ち眩みに襲われた。
「なん、だ?」
どさ、と腰を落とす。
何だ?
体が熱っぽい。
「あんちゃん、それ!」
……!
何だこれ?
俺のケツから、尻尾が生えてやがる!




