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メタリック・ファンタジー  作者: oga
第二章 スラム街
19/105

火事

「へっ、一丁上がりだぜ!」


 燃えさかるネズミを背に、剣を鞘に収める仕草をとると、勝利のファンファーレが頭の中で鳴った。

俺、ちょっとかっこよくね?

てか、あちーな、オイ。

クルリと振り返ると、熱風でのけ反りそうになった。


「……やべっしょ、これ」


 想定外の火力で道が塞がれている。

しかも、ツイてねーことに、こっち側は行き止まりだ。

あー、あの天井から垂れてるオイルのせいだわ。


「って、呑気に言ってる場合じゃねぇ! こっから脱出しねーと」


 階段は一カ所しかないし、こっから逃げるには窓から飛び降りるしか無さそうだ。

ここが2階だったのが不幸中の幸いか。

窓の方に駆け出し、足を淵にかけた時、あることを思い出した。

ここの人を助けてあげて、というヒロハルのセリフだ。


「……上にいる奴らが火あぶりになっちまう」


 いやいや、無理だろ。

上に行くには階段を使わなきゃならない。

つまりは、あの火の壁を突破するってことだ。

突破できりゃ、後は屋上まで誘導して、梯子で避難させればいいが、あのメラメラと立ち上る炎につっこむ勇気はねーよ!

 その時、ゴウッ、と唸る炎が身に迫ってきた。


「くっ」


 思わず腕で顔を隠す。

……時間がねぇ。

意を決して突っ込むか、ここから飛び降りるか。


「……!」


 その時、もう一つの懸念事項に気が付いた。

もしこのまま炎が広がって、建物が燃焼したら、地下にいるヒロハルはどうなる?

火が消えるまでそこにいればいいが、燃えてる最中に蓋を開けたら丸焦げになっちまう!

上か、下か……


「くそっ」


 俺は剣を放り投げた。

やけくそだ、剣が指した方に進む。

キイン、という金属音が響き、剣は窓の方を指した。


「……うらあああああーっ」 


 俺は、窓から飛び降りた。

恨むんなら、この剣を恨んでくれ。

俺のせいじゃねぇっ。

地面に降り立つと、ジーーン、と足のシビれが脳天まで伝わる。

歯を食いしばって、どうにかこらえると、俺は火の手が迫る前に、地下へと続く物置までダッシュした。

物置に到着すると、蓋を開けて叫ぶ。


「ヒロハルッ、こっから出ろっ!」


 奧にいたヒロハルが、どうしたの? と質問してくる。


「火事だよ! モグも連れて、急げ!」


 俺たちは、建物の外までやって来た。

火は階段から一気に燃え広がり、建物を丸ごと

飲み込んだ。






「……」


 俺は、ただ見ていることしかできなかった。

煌々と燃えさかる炎が闇夜を照らす。

脱出出来た十数人のスラムに住む人も、固唾を飲んで見守ることしかできない。


「あんちゃん……」


「……わりぃ」


 俺は、ヒロハルを直視することが出来なかった。

くっそ、体が2つあれば……

いや、せめて、あのキリウラの野郎が手を貸してくれてたら……

俺がやつの顔を思い出して、握り拳を固めた時だった。

正面の扉が吹き飛び、誰かが中から出てきた。


「っしゃあああーーーっ」


 筋肉質でガタイの良い男が、数人を抱えて中から飛び出してきた。


「上には誰も残っちゃいねぇ! これで全部だ!


「さすがカスガさんだ!」


 どうやら、このカスガと呼ばれた男が、中の人を救出したらしい。

わーっ、と喝采が起こる。


「ふーっ、でも、建物はもうダメそうだな……」


 炭と化した柱が、倒れる音がした。


 

 

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