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メタリック・ファンタジー  作者: oga
第二章 スラム街
18/105

孤軍奮闘

「1階は片付いたか?」


 角で胸を突かれたネズミは、床に伸びて息絶えている。

俺は、落ちてる剣を拾い上げた。

念のためフロアを一周し、天井から音が聞こえないのを確認すると、2階へと延びる階段に向かった。


「って、軽くパニックじゃねーか!」


 階段には人が殺到しており、押すんじゃねえ! みたいな怒号が聞こえる。


「お前らっ、落ち着」


「どけどけどけええええ」


 階段の上から、聞いたことのある声。

キリウラのおっさんだ。


「こんなのやってられるかいっ、あっしが一番に逃げるんじゃい!」


 オイオイオイ、早速裏切ってんじゃねーよ!

名前を逆さにしたら、裏切らないになるとか、いつも裏切りって言われるんで、絶対に裏切りませんとか、そういう信条はねーのか!

キリウラは、つむじ風みたく一瞬で消えた。

何だったんだ、あいつ。


「ちょ、みなさん、道あけて下さ…… 開けろっつの!」


 強引に逃げ行く人を押しのけ、2階へと到達。


「はあ、はあ……」

 

 人を押しのけて体力を消耗したのと、ドーナツのかけらしか食ってねーから、腹が減った。

だが、そんなことを敵は気にかけてはくれない。

むしろ好機と、通路の向こう側にいたネズミ4匹が、こちらに向かってきた。


「てめーら、ちょっと待てよっ」


 休憩する間と、作戦を立てる時間が欲しい。

ふと、地面に変な生き物がいることに気付いた。


「……カナリア?」


 カナリアのじじいのカナリアじゃねーか!

使えるもんは何でも使うしかない。


「ちょっと借りんぞ!」


 俺は、カナリアを拾い上げ、パチンコにあてがうと、ネズミ目がけて発射した。


「ビエエエエエエエエエエエエエエッ」


「チチチ!?」


 カナリアはネズミの前で羽ばたき、それに気を取られてる隙に、俺は脇の部屋に飛び込んだ。


「ふーっ」


 一息ついて、呼吸を整える。

さて、どうやって4匹を始末する?

コアはもうねーし、体力もあんま残ってねー。

缶詰でも落ちてりゃ、少しは体力回復できると思うが……


「お、あるじゃねーか!」


 奇跡的に、缶詰が床に落ちているのを発見。

と思ったが、空だった。


「お預けばっかじゃねーか!」


 俺は粗相をした犬かよっ。

もういい、何とかしてあの4匹を倒す。

パチンコをうまく使うしかねー。


「……」

 

 部屋の中から、顔だけ出して通路を伺う。

ネズミ4匹は、姿を消していた。


「また天井か?」


 俺は、片手に剣を、片手にパチンコを持って、ゆっくり通路を進んだ。

全く音が聞こえない。

超、不気味だ。

どっかに潜んでるハズだが……

十字路の真ん中まで来ると、ズボボッ、という音と同時に、4匹が頭上から落ちて来た。

やっべ!

完全に取り囲まれた。

前後左右から、ネズミが迫る。


「おらああああっ」


 俺は例のごとく、スライディングで一匹の背後に回った。

相手は初見で、この戦法は知らないから、うまくいった。

これで一対一×4になったわけだが、4匹も相手にする気力は残ってない。

俺は、床に転がっている石を掴み、パチンコでネズミの抜けた穴をねらった。

パアアアアン、という音と共に、ランタンの管が砕け、オイルがネズミらにかかる。

俺は飛び上がってランタンのひもを斬った。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアーーーッ」


 炎が燃え広がり、ネズミの断末魔が響き渡った。


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