赤井流星 その22
メロンパン、俺にチャンスをくれるのか?
「マジで、助かるわ……」
抜けかけていた魂が、また宿る。
まだ、終わってねえ!
つっても、油断禁物だ。
1週間のタイムリミットが、実は8日間だった、なんてオチもあり得る。
「100パーセントの完成度はこの際、諦める。 動きゃ良い」
俺は開き直って、機械の製作に取りかかった。
10日目。
色んな幻覚が見え始めた頃、パワードスーツが完成した。
俺の名前にちなんで、色は赤。
名前は血みどろ殺人ロボ、だ。
「……どう思う、みんな?」
俺の真横には、木こりのダイク、ルネサンス運輸の社長、ホシガキらが仲良く並んで、あーでもない、こーでもないと完成したロボの名前で揉めている。
まあ、全部幻覚だが。
「さて、こっからが本番だ」
「少し休んだ方がいいのでは?」
ダイクが俺のことを気遣う。
「そうも言ってらんねーしな」
妥協案の受理から10日が経過してる。
グズグズしてる暇はねー。
「……」
突然、足下がふらつき、前屈みに体が崩れた。
糸を切られた操り人形みたく、体が言うことを聞かない。
ダイクが手で俺を支えようとしたが、すり抜けて地面に倒れ込んだ。
「……ぐっ」
「驚いた。 君って、かなり器用なんだね」
向こうから歩いてきたのは、エルビス。
俺の前に屈むと、口に何かを押し込んできた。
すると、みるみる体力が戻って来る。
センズか?
「ってか、エルビス、お前本物かよ!」
「え? そりゃそーだよ。 ホシガキに様子見するように言われたんだ」
……何だよ。
俺はてっきり、メロンパンがまだ生きてるのかと思っちまってた。
こいつが、こっちの世界にやって来たから、オオカミ化を免れただけだったか。
「どーやってここに? あと、今の口に入れた薬は?」
「ここへは船で来た。 君の口に入れたのは、いわゆる強壮剤ってやつだ。 色んな動物の睾丸の粉末を調合して作った」
……どーりで元気になる訳だ。
「それで、この木をよじ登るの?」
「ああ、急がねーとだ」
俺は、パワードスーツを着込み、木をよじ登り始めた。




