スラムの街
ヒロハルの後について行くと、築何年なのか分からない位ボロボロの、木造の四角い建物が並ぶ一角にやって来た。
「この辺がスラム街だよ。 一般人は絶対に立ち寄らない場所さ」
ヒロハルの解説によると、元々街を作るための出稼ぎの職人たちの住まいだったらしいが、取り壊さずに放置していた所、浮浪者が住み着いてしまったらしい。
「お前、マジでこんなとこに住んでんのかよ?」
建物の通路を見て、思わずそんな言葉が漏れる。
しかも、後から手を加えた為か、変な所に通路が延びてたりして、まるで迷路だ。
「俺たち3人はもう少しマシなとこだよ」
3人?
そーいや、もう一人いてそいつと生活してんだったか。
廊下を進むと、ぼろ切れ一枚羽織い、肩に小鳥を乗せた老人とすれ違った。
「……」
一瞬目が合っちまった。
煙を吸ってて、明らかにヤバそうだから、無視した方がいい。
そう思った矢先、
「ミナト、生きとったか。 死ぬ方に賭けてたんじゃがな」
「……どういうことだよ?」
「カナリアが鳴いたから、メタルが森に落ちた。 それを教えてやっだじゃろ」
ヒロハルもメタルがどーの言っていた。
メタルってのは、コアのことかも知れねーな。
つか、このじじいにたぶらかされて、俺は森の深みまで出向いたのか?
「お前が俺をたぶらかしたのか?」
「おかしな奴じゃ。 その話を聞いて、飛んで出て行ったくせに。 この生活から抜け出したいと、いつも言っとったろ」
じじいに掴みかかろうとした時、ヒロハルに割って入られた。
「ごめんなさいっ、あんちゃん、今普通じゃないんだ。 また後で!」
何だよ、おい、手をひっぱんなっつの!
掴まれた手を振りほどくと、ヒロハルが言った。
「あれ、ここの長老だから。 ヘタなこと言ったら、出禁食らっちゃうよ」
長老?
こんな所でも、偉そーにのさばってる奴がいんのかよ。
何回か角を曲がると、物置のような所にやって来た。
「あんちゃん、ちょっと入り口見張ってて」
「……ん、まあいーけど」
ヒロハルに背を向けて、見張っていると、後ろからズズ、という音が聞こえた。
「早く!」
振り向くと、木の箱がずらしてあり、その下に階段がある。
秘密の地下室じゃねーか!
階段を降り、下から木の箱を動かして蓋をする。
「この部屋にはお酒とか、ルーレットが置いてあるんだ。 賭博をするための部屋だったのかも」
部屋に辿り着くと、上の部屋よりもずっと快適な空間がそこにあった。
やや狭いが、ここなら居心地が良さそうだ。
「ワンッ!」
「うおっ!?」
……犬?




