プロローグ
「あんっの、くそじじい!!!死ね!!」
あー、、どこで人生狂ったかな。本当なら今頃役職にでもついてバリバリ働いてる予定だったのに35にもなってただの平サラリーマン。
まぁ、美人な妻も可愛い子供もいて幸せだからいいけど。さすがにずっとこのままってのはなぁ~
「あっ、夏耶先輩!」
「、、、」
「夏耶先輩!!待ってくださいよ!一緒に帰りましょう!」
くっそ、せっかく無視してたのに。
「あー?洸夜かよ。1人で帰れよ。」
「たまにはいいじゃないですか。ご一緒させてくださいよ。」
「ったく、クソイケメンが。」
こういう早く帰りたい時に限って絡んでくるクソイケメンな13個下の後輩。仕事もできれば人当たりも良くて、嫉妬だと分かってても俺より早く昇進しそうで全くもって可愛くない。
「いつもくっついてる女共はどうした?」
「いや、一緒にいることは多いですけどいつもじゃないですよ。みんな今日は予定があるみたいで、、、」
「へぇ~、どうでもいいわ。」
「ちょ、もうちょっと興味持ってくださいよ!夏耶先輩って本当にクールですよね。」
いや、お前にだけだよ。だってお前、面倒なことしか持ってこねぇじゃねぇの。
「そういえばお子さん産まれたんですよね?おめでとうございます。」
「ん?おお、ありがとよ。これがよぉ女の子でめちゃくちゃ可愛いんだわ」
本当にもう食べてしまいたいくらい可愛い。目に入れても痛くないってのはこういうことかって思ったね。
「女の子かぁ。いいですね。僕も早く結婚したいです。」
「お前なら選び放題だろうが。」
「いやいや、僕みたいなのと付き合ってくれる人なんていないですよ。」
はぁ。これだから鈍感な残念イケメンは。結婚してなかったらウザくて殺してたぞ。
「あー、はいはい。、、、あ?」
「どうしたんですか?」
角から出てきた女性の後ろ姿がいつも見てる後ろ姿と重なる。あれは、、
「綾女!!」
もともと孤児でやさぐれてた俺に人としての感情を戻してくれたこの世でたった1人の大切な人。この人がいるから真面目に働いて生きていこうと思えるんだ。
「ん?あら、夏耶くん。お仕事お疲れ様。」
「あぁ、ありがと。綾女もおつかれ。」
「ありがとう。あなた、そちらの方は?」
「ん?あぁ、会社の後輩で洸夜。」
妻に部下、じゃなくて後輩としか紹介できないのがつらいところだ。
「あの、いつも旦那さんにはお世話になってます。」
「いえいえ、こちらこそ旦那がお世話になってます。ねぇ、夏耶くん。今、晩御飯作ってるところだったの。もうすぐ出来るから良かったら家で食べて行ってもらったら?」
「いや、こんなやつ呼ばなくてもいいよ。」
「え、ちょ、夏耶先輩、それはひどいです!お邪魔させて頂いてもいいですか?」
「ふふっ。えぇ、勿論。」
はぁ~俺の癒しの時間が、、なんでこうなる。
ガチャッ
「お邪魔します。」
「はいよ。どうぞっと。綾女帰ってくるまでその辺適当に座っとけよ。」
「はい。ありがとうございます。」
綾女は買い忘れたものがあるとかで買い物に行ったから杏を預かって帰ってきた。
「夏耶先輩。杏ちゃん抱っこしてみてもいいですか?」
「ん?おお、いいぞ。可愛いだろ?」」
「親バカですね、でも本当可愛いです。」
「だろ?」
「え??」
その時、足元から溢れ出した目も開けられない程の閃光。何が起こったかも分からない、かろうじて光った事が分かるぐらいの一瞬だった。
最愛の人との間にできた可愛い娘。産まれた時は涙が止まらなかったなぁ。これから家族を作っていくんだって、大切にするんだって覚悟が決まった瞬間だった。
洸夜に抱えられて笑う杏をみたのがまさかこの世界での最後だなんて、まさか思わなかったんだ。あんなことになるなら家になんて呼ばなかったのに。