出会い。
これまでの人生、何をしてきたかって聞かれても16〜7歳で答えられる奴は少ないだろう。
けれど、俺は一番を目指した。小さな大会だけど優勝したんだ。だから、それなりの自信はあった。
この先進国、日本に生まれることが出来たし、今の最新技術にも負けない自信があった。
それはIT関係だけの自信だったが(笑)
それ以外は何もやってこなかった性分だった。友達なんてろくにいないし、人間ができているわけでもない。
だから、これからもITだけに打ち込み世界に負けないで頑張っていくつもりだった。
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今日は7月20日。俺の地域ではほとんどの学校が夏休みだ。
一学期最後の授業が終わりって学活をしているときのみんなの様子が意外にも面白い。
友達とこの後の集合場所を確認している人、イライラして、貧乏ゆすりをしている人やもう立っている人もいる。
そんなことは超おじいさん先生、橘先生には伝わっていない様子で、ゆっくりと学年通信を読んでいる。
「えー夏休みの間は、えーーしっかりと勉学に励むようにね。えーー、ゲームセンターには、えーー、むやみに、えーー、立ち入らないように…。金銭面での、えーートラブルの、えーー、発展に、えーー、繋がるので、えーー、やめるように。…………」
それにしてもこれは遅すぎないか。みんなの線が切れそうだ。
「はい。ではこれで学活を終わります。はい、解散!!」
はぁーやっと終わったー。長いお経を聞いているような時間が終わると、蜘蛛の子を散らすように教室から消えていく。
「やっと終わったぜー!」 「流石にナマケモノ、遅すぎるわ〜。」 「よっしゃー!早よ帰るぞー!」
楽しそうな声が廊下中に響き渡る。
急に教室がガランとなる。何故か俺は座り続けていた。
その時、妙な視線を何処からか感じた。 すぐに廊下に目をやる。
しっかりと見回したが、その姿はもうなかった。おそらく、女の子のような気がした。
帰るか。俺はバッグを手に、戸締りを済ませ、教室を後にする。
急に、グローブが背中に当たる。
いや、グローブではない。 手だった。
「よっ!」
意外とモテるというと評判の野球部員、瀬戸達也だった。
割とイケメンで、性格もいい。勉強も出来た。
「お疲れ」
「いつも通りのクールさだな、葵。」
「うるさい」
「わかったって、そう怒んなよ!」
そう言って、達也は背中をバシバシしばいてくる。
いつものやりとり。意外にもこれが嫌ではなかった。
どういうわけか、毎日のルーティーンになりつつあった。
「早く帰ろう」
「ヘーイ」
みんなよりかなり遅れて、ようやく帰路を進んでいける。
家はそう遠くない。帰ってしっかりと充実とした夏休みを送ろう。
達也とは途中で別れ、やっとの思いで家に着いた。
上で音がする。お母さんが昼ごはんを作ってくれているのだろう。
「ただいまー」
お母さんがこちらを向く。
「あら、おかえりー、葵」
「ご飯出来てる?」
手を洗いながら、話しかける。
「出来てるわよー!今日は唐揚げとラーメン定食!!」
おおー。なかなかすごい。出てきた料理は中華料理店で食べようと思えばかなりの金額はするくらいの豪華さだった。
カリッと仕上げられた衣を身に纏った唐揚げと、新鮮そうなキャベツ。
その横にはチャーシューが多めでメンマ、ねぎ、海苔が入っている、スープはおそらく自家製の豚骨スープ。本当によだれが出そうだ。
「いただきます」
そう言うと、唐揚げを口に頬張る。うん、うまい。肉汁が出てきてすごく美味しい。
続けて、ラーメン。
蓮華に持ち替えて、スープを頂く。マジの店の味がする。美味すぎないか…これ。
という具合にラーメン定食はさらりと完食した。
そこで掃除が終わった母さんが近づいてくる。
「ねぇ、お願いがあるんだけどー」
「な、なに?」
「じーじのうちに行って欲しいの。ほら葵、暇でしょ。じーじは葵が大好きだから、行かないと本当に
死んじゃうって毎日電話がかかってくるの」
「は、はぁ」
「だから、お願い。じーじに一目顔を見せに行ってやって」
「わかったよ」
死んでもらっては困る。親族の皆様から お前のせいで死んだんだ!なんて言われたくないしな。
しょうがない。行こう。
お母さんはちょっとした食べ物を作ってくれるのか、再びエプロンを腰に回す。
俺は身支度をするために自分の部屋に行く。
俺の部屋は普通の人とは違う雰囲気がしている。なぜなら、なにかを作るための工具だったり、パソコンと3Dプリンターを使って日々、将来自分がしたいことはなんなのかそれを探している最中だった。就きたい職業が決まっていないだけで、工業系に進みたい。そう思っている。
そんな自分には日本という国に生まれたことは都合の良いことだった。第二次世界大戦後からずっと止まらずに発展をし続けた国、日本。その実力はたしかに世界でもトップの技術力をもっていた。俺はそんな国に生まれたことに、日本で生まれた親から生まれたことを感謝していた。
俺は日々、すごい速度で世界が動いていると言うことをおじいちゃんから幼い頃から話を聞いていた。そのおかげで日本の技術力を持つ高校生になることができた。日々怠らない努力で誰にも負けないものを持っていら自信があった。
そんなことを考えていると少し時間がたった。
そろそろ時間だな。っていうか、かなりぎりぎりになってしまった。
新幹線のチケットはお母さんが用意してくれていた。
どうやら最初から行かせるつもりだったらしい。言ってくれればいいのに…。
「はい!きびだんご!ってのは冗談で、フルーツとチヂミよ」
「わざわざありがとう」
「さ、いそいで。ギリギリよ」
「う、うん」
あんたのせいだというのは言えないので胸の金庫に封じ込めた。
「いってきまーす」
家を勢いよく飛び出す。
いってらしゃいという声がいつもより小さい気がした。
住んでいる町は意外と綺麗な町だった。散歩中の犬と目が合う。可愛い。
じゃあねと目で会話をしてから結構急ぎ足で歩を進める。目の前の信号機が赤になった。反射的に足を止める。
こういう時の信号機はいつもの5倍以上いら立つ。
青になると、さきほどよりも早く歩く。
気づいたら、駅の近くまで来ていた。
ガサッガサ…。
ふと薄気味悪い路地裏からの音を耳が拾う。ゴキブリか?
気になって、そちらに目をやると帽子を被った2人のスーツ姿の男と一人のスーツ姿の女が一人の女の子を取り囲んでいた。
「おい、そろそろ観念してあれ、出せよ」
少し高めの男が言った。
「はぁ僕もうあきちゃったんですけどー」
俺よりひょろっとした男が帰りたそうに言った。
「早く出しな!!」
ロングの少しいかつい女が甲高く吠える。
「姉さん、お静かにお願いいたしますぜ…」
俺の足はその状況を理解した瞬間そちらの方向に動いていた。そう小さい肩の少女は襲われていたのだ。
俺は助けないとという使命感に駆られる。
こうなったら、もう止められない。
「うごごッ」
ひょろっとした男は意外な反射神経で俺の正拳を避けた。
その時自分の拳が黒い煙のようなものを纏っているように見えた。
それは一瞬で消滅した。
「ま、まずいです。逃げましょう。」
「あ、ああ」
「まて!」
奴らの襟を掴もうとしたが、空を切った。
その隙にそこにいたはずの奴らは消えていた。
早すぎる。人間技ではない位に早かった。まぁいい、先に女の子優先。
襲われていた女の子を見る。
白いフードをかぶっていて、目は透き通った青色で髪は長髪で白色だった。
かなり顔のバランスはよかった。かなり可愛かった。
「大丈夫……ですか?」
テンパりながらも聞いてみる。呼吸がまだ荒い。
「・・・・・・・・・・・・・」
返答はなかった。
これ以上の質問は意味がないと考えたので質問はもうしなかった。
「じ、じゃあ気を付けてね…。もう裏路地なんか入るなよ。じゃあね」
立ち去ろうとしたとき、駅に向かっていることを思い出した。ふと時計を見る
うわっ時間過ぎてる!!マジかー。かなりのショックが俺を襲う。不幸の神様よ、次は俺の番ですか。
その場で少し立ち止まる。どうするか考えるためだ。
急にあの女の子が近づいてくるのが見えた。
そして、すっと手を俺の前に出してくる。
「手を・・・繋いで・・・。」
ええ?俺の思考回路が完全に止まる。もう一度自分の中でくりかえす。
てを・・・つないで・・・? 手を繋ぐってあの恋人とかがするやつですか!
「は、はい。わかりました」
そう言ってしまっていて自分でも驚く。
神経がなくなってしまったのように、俺の手は彼女の手に吸付けられる。
俺の手をそーっと彼女の手の横まで手を伸ばす。
「こ、これは………」
思わず声が出てしまうくらいやわらかい女の子の手の感触をしっかりと感じていたその時、
瞼を開けると目の前が完全に薄暗い路地裏ではなくなっていた。
そこは巨大な学校だった・・・・・。
成宮 葵:本作の主人公。
長崎県に住む、16歳のごく普通の高校生男子。
過去に悲惨な経験をしているため、クールで内気な性格。親友は達也ともう1人。友達は作らないといっていつも教室では1人。達也ともうひとりの親友がかまってくれる為、本当にぼっちではない。
配達部特待生部所属。