表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

夢の中

私達は2人分のチケットを購入しエレベーターに乗り込んだ。びっくりするくらい早く第1展望台に着く。


キラキラとした都市のネオンが美しく輝いている。しかし、第1展望台は人でごった返しゆっくり見るには不向きだった。ぐるりと1週周り第2展望台へ移動する。プラス料金のこちらはいくらか空いていた。


ゆっくり、ゆっくり進みながら眺める。

見たこともないくらい綺麗だった。

「綺麗。」


思わず声が漏れる。


「本当に綺麗だ。」


その発言が私に向けられた気がしてドキリとする。


「・・・何?アンタ今、自分が言われたと思った?このちんちくりんがぁ!!」


笑いながら頬を引っ張られる。


「い、痛いです。それにちんちくりんなんて失礼ですよ!」


心のドキドキを悟られないように怒った振りをする。

苦し紛れに質問を向けた。


「彼女とか居ないんですか?」


「彼女?居ないね。でも、すっげー好きな奴が居る。」


なぜだろう?胸が締め付けられる気がした。


「好きな人居るのに私と出掛けて大丈夫なんですか?」


「大丈夫。俺の片思いだし、アンタの付き合いとは全く違うから。」


「どんな人?」


「どんな人?真面目で、しっかりしてて優しさとか、思いやりとか人としての温かみが透けて見えるようなすっげー良いヤツ。誰にでも優しくて自分じゃなくて周りが幸せならそれでいい。みたいな。ある時、気付いたんだよね。いつも笑顔で居るけど、本当は淋しいんじゃないかって。心にたくさん淋しさを抱えているけどそれを見せたくないからいつも笑って過ごしてるんじゃないかって。笑顔の中の淋しさを垣間見た瞬間から好きになって生まれて初めて他人を幸せにしたいって思ったんだ。まぁ、でも何も出来てないけどな。少し話しかけて笑わせる位が関の山でさ。正直、距離を縮めていこうにも難しいんだ。」


「そこまで思われるなんて幸せですね。その彼女。」


「だから彼女じゃねーよ。好きな人。」


「私に接するくらい強引に行ったらいいじゃないですか?」


「だよな。当たって砕けろじゃねーけど、運命の流れを変えるのは自分だもんな。やらない後悔よりやってスッキリした方が良いんだよな。アンタのお陰で少し勇気が出たよ。ありがとな。」


「いいえ。いいんです。ちょっと見直しました。」


照れ臭そうな顔ですり抜けようとしたフリーのボンボンさんの袖を慌てて掴みその場に留める。


「ひとつ忠告があります。ふたりが上手く行ったとしてお酒飲んでプラネタリウムは止めた方がいいですよ。絶対恋愛感情醒めますから。」


したり顔で忠告する。


「分かってるよ。ってかさ、俺、アンタに言っとかないとなんないことがあったんだよ。アンタの護衛してやるって言ったじゃん?あれが明日から出来ねーかもしれねーんだよ。」


「・・・。」


びっくりして無言になる。


「なぁに鳩みてーな顔してんだよ。」


「は、鳩?!」


「豆鉄砲喰らった顔。」


「どんな顔ですか?!ってか行きたい所いっぱいありました。原宿とか歩いてみたかった。あと動物園とか、渋谷とか。」


「ポッ!!って顔だよ」


目を見開いて唇を突き出し可笑しな顔をして笑っている。

つられて笑ってしまう。


「まぁ、はっきり分かった訳じゃねーんだ。明日になってみないことにはさ。だからはっきりしないってだけで。」


「保留って事ですか?」


「まぁ、そうだわな。」


「仕方ありませんね。大丈夫です。」


「・・・アンタさ、行きたいところ1つに絞っておけよ。午後になるかもしれないけど行ければ行こう。」


「行きたいところを1つですか?」


「お客様、そろそろ閉館時間になります。」


警備員さんに声を掛けられスカイツリーを後にする。来たときと同じように電車に乗り、当たり前のようにホテルの前に届けられる。


「じゃぁ、明日な。 1時頃かな?ここで。」


「はい。」


「昼飯、済ませとけよ。」


「はい。」


「んな顔すんなって。」


ぐしゃぐしゃに髪を撫でられる。


「行きたいところ決まりました。詳しくは言えませんが付き合って下さい。」


叔母にラブレターを送ってきた人のお姉さんの所に行こう。行ってきちんと話そう。そう心に決めた。うやむやで帰ってきてしまった事に後ろめたさを残すのが嫌だった。


「そっか、分かったよ。明日な。ゆっくり寝ろよ。おやすみ。じゃぁな。」


あっさり消えていく後ろ姿を見送って私もホテルに戻った。いろいろありすぎて疲れたなと思ったけれど、何だか気持ちが高揚して寝られそうにない。別に見たくもないテレビをつけて時間をやり過ごす。いつの間にか寝てしまっていて目覚めたら8時だった。のろのろ立ち上がりバスルームに入りシャワーを浴びた。眠気が醒めてきて頭がスッキリする。フリーのボンボンさんの護衛も今日で最後かもしれないらしい。分からないけれど。あの感じなら明日からも何事もなかったようにひょっこり現れそうな気がする。1時まで時間があるな。お腹もまだ空きそうにない。備え付けの冷蔵庫を開けミネラルウォーターを飲み干した。カーテンを開けて外を覗いたら爽やかな青空が広がっていて少し気持ちが華やぐ。


そうだ。

外に出てみよう。

手土産を買ってブランチを済ませたらいい時間だろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ