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夢の始まり。

翌朝、目覚めたら9時半になっていた。

随分寝たなぁ。

約束は10時だっけ。今から準備しても約束の時間には辿り着けそうにない。行けないっていうか、行かないって決めてたんだっけ。


ゆっくり起き上がり出掛ける準備を整える。

10時10分。さてと、出掛けますか。

お腹空いたなぁ。何食べよう?どこ行こう?

ホテルを出て歩き出したら後ろから肩を叩かれた。振り返ると、フリーのボンボンさんが立っていた。


「アンタさ、どこ行くのよ?時間過ぎてるし、駅に向かうなら向こうだし。もしかしてばっくれようとしてた?」


「あっ、いや、寝坊して間に合わなくてもう行けないなって思って。」


びっくりしすぎてしどろもどろで答える。


「んなこったろーと思ったよ。昨日送り届けといて良かったわ。逃がさねーからな。」


襟を掴まれ駅の方へ引っ張られる。


「ちょ、ちょっと待って下さい。これじゃ護衛じゃなくて拉致じゃないですか!!」

唐突に前に押し出され手を離される。


「そうだな。拉致だわな。昨日のスカイツリーの食いつき良かったからさ、喜ぶかと思って。出過ぎたわな。じゃぁな。」


またサッサと帰って行ってしまう。どんどん人の波に紛れていき見えなくなる後ろ姿。途端に淋しくなって追いかけた。


「待って。行かないで下さい。スカイツリー行きます。行きたいんです!!」

グウゥゥッ。その瞬間、お腹が鳴った。


「なにアンタ、飯まだ食べてねーの?」


「はい。何せ寝坊したもので。。。」


「ったく、世話焼けるヤツだな。牛丼食うか?」


「はい。」


揃って牛丼屋に入り並を頼む。フリーのボンボンさんは食べるのがとても早く追いつけない。あれよという間に食べ終わり、蔑んだ目で私を見ながらお茶を飲んでいる。


「早く食えよ~。時間無いからなぁ。」


「はい。」


私は威圧感で殆ど味を感じなくなった牛丼を流し込んだ。淋しさを感じたことが間違いだ。これじゃ私は子分みたいだ。


「行くぞ。」


「はい。」


レジ前で私は財布を探りお金を出そうとした。するとすごい力で手を弾かれ、出口の方へ追いやられた。フリーのボンボンさんが支払いを済ませ出て来て言い放った。


「アンタさ、男に恥かかせんの?女と割り勘だとか奢らせるとか趣味じゃねーよ。止めてくれ。」


「でも、他人だし、護衛だし。」


「分かってるよ。俺もよく知らない女に気前よく奢り続けるほどお人好しじゃねーから。これ見てみ。」


差し出された携帯の画面に行き倒れ、電車賃230円と打ち込まれていた。


行き倒れ。。。

私のことか?


「あの、この行き倒れってもしかして??」


言葉にならず自分を指さした。


「そう。アンタのこと。金なんて心配すんなって。最終日にしっかり回収する段取りだからよ。俺も男のメンツは保ちたいし、アンタも奢られるの嫌ならお互い利害関係ありじゃん。今の時代、割り勘当たり前って言うヤツもいるけど、俺はまだその感覚について行けなくてね。」


言いながらさっさと携帯に牛丼代を打ち込んでいる。どうやら自分の体裁を気にするお金に細かい人物らしい。本当にボンボンなんだろうか?でも、逆にここまで割り切って計算されると私の気持ちもドライに保てる気がした。行き倒れ表示はムカつくけれど、私も心の中でフリーのボンボンさんと呼んでいるし。まぁ、私の場合さんを付けているだけマシだ。


「こういう場合、私はご馳走さま~ってサラリと捌けた方がいいんですかね?」


「そうだね。なるべくスマートに田舎者感出さない感じで。上手くやってね。」


いちいちムカつく。

でも、こういう扱いって意外に楽かも。


私達は電車とバスを乗り継いでスカイツリーの麓まで来た。


「うわぁ。おっきい。すごーい。デカーい!!」


「アンタの感想って、結局デカイだけな。上行きたいだろ?夜がいいか、日中か選べよ。」


「どちらがお薦めでしょう?」


少し考える様子で


「そうだな。日中は爽やか。夜はロマンチックってとこか。アンタはロマンチックって柄じゃ無いけど、田舎じゃネオンの夜景なんて見られないだろうし、お薦めは夜じゃね?」


「じゃぁ、夜にします。」


「どっかで時間潰すか。行くぞ。」


私達はすぐ傍のソラマチへ入った。


「ビール飲みてぇな。アンタも飲む?」


「飲みたい、飲みたい!!好きですビール。」


「オッケー。席の確保頼んだよ。」


「はい!!」


戻って来たフリーのボンボンさんはトレーに生中4杯とおつまみ数種類を載せていた。どう見ても昼に飲む量じゃない。

目の前に1杯を差し出される。


「どーぞ。」


「ありがとうございます。あの、3杯も飲まれるんですか?」


「うん。俺強いからさ。もう1杯飲みたかった?」


「いや、私は1杯で。」


「そう?じゃ、カンパーイ。」


「か、カンパーイ」


フリーのボンボンさんはおつまみを食べながらいい飲みっぷりだ。私も慌ててビールに口を付ける。冷たくて美味しい。喉も渇いていたしどんどん進む。ふと気付くとフリーのボンボンさんはもう3杯目だ。本当に大丈夫なんだろうか?


「美味いね。つまみも食べなよ」


トレーにはポテトフライが数個。


「もう殆ど無いですね。」


「ハハハッ。悪い。残り食っていいよ。」


えらい上機嫌だ。絶対に酔ってる。私は残りのシナシナしたポテトフライを平らげてビールを飲み干した。


「アンタも飲みっぷりいいね~。じゃぁ、行くか」


フードコートを出てすぐの所にプラネタリウムの看板があった。フリーのボンボンさんが立ち止まり


「行くか?」


と聞かれた。


話さなくてすむプラネタリウムは時間潰しに最適かも知れない。

私達はプラネタリウムに入った。薄暗い空間に案内され座席に座る。椅子を倒し待っていると上映が始まった。リアルで美しい星空。ナレーションは馴染みのあるアナウンサーが担当していた。プラネタリウムは子供の頃以来だったけど、こんなに映像技術って進歩したんだろうか?映し出される星空に素直に感動していると横から雷鳴の様な音がした。驚いて振り向くとフリーのボンボンさんが物凄く大きな口を開けてイビキをかいていた。酔っていて暗がりで横になったものだから寝入ってしまったらしい。後ろの席の人がフリーのボンボンさんの席を蹴り上げた。起きる様子は無い。私は慌てて大きく開いた口を押し戻した。どうにか止まった。ほっとしたのも束の間また大イビキ。恥ずかしくて死にそうだ。公害並みの大音量。鳴り出してはアゴを閉じ、数回繰り返してプラネタリウムスタッフがやって来た。


「お客様、失礼ですがお連れ様でしょうか?」


「はい。」


「大変申し訳ありませんが、他のお客様にご迷惑となりますのでご退場願えますか?」


「はい。」


私は隣で大イビキをかいているフリーのボンボンの耳を思い切り捻り上げた。


「痛いぇよ!!」


構わずもっと捻り上げ座席から引きずり下ろす。ギュウギュウに引っ張って出口まで引きずり出した。


「すみませんでした。」


出口横に立ち並ぶスタッフに謝罪しその場を後にした。幸せなのは訳の分かってないフリーのボンボンさんだけだ。私の怒りはピークに登りつめフリーのボンボンさんに食って掛かる。


「お酒、強いって言ったじゃないですか?酔ってるのに何でプラネタリウム?しかもイビキかいて寝ちゃうし。」


「悪い。悪い。プラネタリウム良いかなと思って。まさか寝るとはなぁ。暗がりで横になるとかダメだわなぁ。本当に悪かったよ。ごめんな。」


本当に申し訳なさそうな顔をしてそんな風に謝るなんて狡い。許しちゃうじゃないか。。。


「いいです。許します。」


「まじで?ありがとう。やっぱアンタ優しいな。夕飯奢るよ!!夜景にはまだちょっと早いし飯、済ませようぜ。」


「アルコールはもう抜きですからね。それとフードコートじゃないところでご馳走して下さい。」


「分かってるよ。そんなの好きなの食べれば良いじゃん。」


「じゃぁ、オムライス。」


「はいはい。オムライス。お子様の定番ね。」


私は思い切り耳たぶを引っ張った。


「痛えな!!」


「自業自得!!」


私は偶然目に付いたお洒落なカフェにフリーボンボンさんを引き込んだ。


「2名様ですね?」


店員さんに尋ねられ


「はい。」


と応えてしまう。


「こちらへどーぞ。」


席に案内され、メニューを渡される。私は無言でメニューを開き選んだメニューを指差しでフリーのボンボンさんに伝える。


「メリーおばさんの自慢のフライパンで焼き上げたトロットロのふわふわ夢オムライス。マジでこれ注文すんの?」


「はい。」


私は目を合わせないで答える。


「アンタさ、Mに見えて絶対Sだよな。」


何とでも言え。


私は素早く呼び鈴を押した。


「俺、決まってもねーよ!!」


しれっとやり過ごす。


にこやかな店員がやって来て


「ご注文、お決まりですか?」

と尋ねられる。フリーのボンボンさんは腹を決めたようで店員さんに向けて言った。


「メリーおばさんの自慢のフライパンで焼き上げたトロットロのふわふわ夢オムライスとデミソースハンバーグビッグセット下さい。」


「夢オムライスとデミソースハンバーグビッグセットですね?」


「はい。」


注文を済ませたフリーのボンボンさんが顔を真っ赤にしている。店員さんにも省略されたことが恥ずかしいんだろう。すごく分かる。裏切られた様な気がするもんね。ざまーみなさいよ。私もさっき恥ずかしかったんだから。お互い様。


メニューが届き、食べ出しても無言だった。怒る訳じゃなく、この人はこういう人なんじゃないかと思った。気にせず食事を済ませる。美味しかったし、何よりしてやったり感が私を高揚させた。フリーのボンボンさんが早く食べ終えても気にせずゆったり食べた。水を飲み干し、余裕の笑みを見せる。


「ご馳走さまでした。」


「おう。行くか。」


「はい。」


支払いを済ませ外に出るとスカイツリーがライトアップされてキラキラと輝いていた。

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