フェリシア・エドラは期待を裏切らない
トホホな主人公とは言えフェリシア・エドラは主人公であり――ヒロイン。Dカップは伊達ではない。多感な男子友人諸君を裏切らない為にも詳しい解説は避けられない。
Dカップと言っても、その形体、その弾力、その色艶等は城羽みすずに詳しい池袋急行男子の秘蔵ノートの文面を借り解説する。
『ファイル№01――滝川純。23歳。隣家の幼馴染。元婚約者。僕が6歳の頃に将来お嫁さんに成ってあげるね、と約束してくれた筈だが、裏切る大嘘付きの馬鹿野郎。家に彼氏は連れ込むし夜居ない事も多々あり朝帰りも頻繁。此処三年は口を聞いてくれない。小六までは、まな板の様なおっぱいは今ではメロンの様に育ち…此のページでは無い様だ。――ファイル№21内田ひとみ。とにかくエロい。彼女の近くに居ると恥ずかしくて前靴姿勢じゃないと歩けない。謎のフェロモンに中毒を……此のページでも無い様だ。――ファイル№45城羽みすず。間違い無く乳首は上に35度から40度を向き、上乳が張っており、下乳にハンカチを入れる程では無い。あのすべすべ感からすると弾力は堅いのは間違いない。歩くと揺れるが激しくは無い。乳安めが必要な程、大きくは無く、肩が凝る程ではない、更に……』
電車を乗りちがえる事だけはある。
長くなりそうなのでノートは閉じて置く。油断するとタイトル通りに物語は進まず――途中から話しが変わる『最悪なケース』が匂わすからだ。途中で主人公が変わるなど絶対に犯してはいけないラインは安安と壊れ易い。
フェリシア・エドラは抜けては要るものの努力家なのは確かだ。部屋には膨大な資料があるので勉強には困らない。偏ったジャンルしか無いが充分である。――が、先々の事を考えると不安もよぎる。
なにせオタク部屋。一晩掛け、部屋の資料を読み漁り、何度か其の内容の過激さに死にそうになりながら『勉強』!?は済ました。
ジュクブレンドが言った『深夜枠基準』の意味を理解し、初日にパンツスーツで登校したのは重大なミスと気が付く。スーツはスーツでもマイクロミニじゃないと基準を見たさない。サイハイニーソの出番がないじゃないか。
彼女はとりあえず気に入らない事が一つ――黒髪。白金や青やピンク色じゃないと落ち着かない。地球人二日目、本日は土曜日。
とりあえず下着姿になり、鏡の前で色々とポーズを取る。――やはりというか両手を胸にあて、大きさや感触を確かめる。10本の指は驚く程に――動く動く。
「――今日も問題無し!!」
と問題児が問題多き発言をする。何が問題なのかは伏せて置く。読んでる側の同士諸君の感想も是非聞きたい処だが…
もっと過剰に書け。やり過ぎだ。物語は進まなくていいから、とりあえずヒロインには……させろ。男は出すな!むしろ男だけ出せ等…論議は白熱し最終的には殴り合いの喧嘩に成りそうだから止めて置く。
慣れない携帯電話を操作し――鳥飼雪美に電話を掛ける。
「――フェリシアだけど、この髪色なんとかならない?」
「みすず部長!? 派手髪も決意ですか! 素敵です! 何色にします? 道具、揃ってますよ!」
問題児の周りには問題児しか集まらないのか。雪美の順応性は無駄に高い。普通に考えれば『フェリシア』と聞いただけ、何かしら突っ込むのが…正解なのだが。
「――う~ん。 気分的にはスカイブルーかな? しかしシルバーも捨てがたい。今から家に来れる?」
「御邪魔しても良いんですか? あれ程、住所教えるのを拒んでいたのに!」
堅く閉ざされ、人はおろか蟻一匹の侵入も許さない鉄壁の秘密公開にワクワクする雪美。彼女が上がりこんだ際には絶対に部屋は荒らされること確実。黒歴史はあっさり見つかり、ゲラゲラ笑うだろう。手短に会話を済ませ、携帯電話の電源は切れる。
次に電話を掛けるの相手は内田ひとみ。慣れない地球人二日目、端末の操作は難しい。画面は真っ黒ろのままで悩む事20分…。
癇癪を起こすフェリシア。此のままでは文鎮としか携帯電話は役に立たず、苛々は溜まり遂には壁に投げつける。暴言の一つは口に出し、表面のガラスは割れアイフォンがバリフォンに進化した。
友人とは言え長い間、住所を教えないのは怪しい。絶好のタイミングで謎が解明されるのだ。悪意の問題児、鳥飼雪美が一人で突入する筈が無い。雪美は――ひとみとコンタクトを取る。
下着姿のまま、慣れない地球、日本の文化に戸惑いつつも課された使命を全うする事に全力を捧げる姿勢はやはり――主人公。
次は後ろ姿が気になり鏡を見つつオシリの感触を確かめる。
下着の後ろには割れ目が食い込んでいるが直す事はしない。普通の女子ならば気持ち悪くて正すはずなのだが、ヒロインは裏切らない。抑える処は抑えるのだ。縦すじ一本在るのと無いとでは盛り上がりに掛けて重要な問題と成る。フェリシア・エドラは期待には答える――深夜枠規準の、なんたるかを理解してる可愛い子だ。
なんだかんだで40分程、時が進むと笑顔満開の少女がプリンを食べながら扉を開けた。――見つけた!と言い放ち案の定…部屋を荒らし始める。急いで来たのか本日はジャージ姿だ。
雪美がインタホーンを鳴らす筈が無く、玄関が無施錠な事を良しとして途中、冷蔵庫を経由してオタ部屋に辿り着いた。
ちょっと高めの――300円は越えそうなプリンを罪悪感無く頂戴するとは良い度胸。
続いて――失礼しますと言いながら休日なのに制服を着た内田ひとみが姿を現す。真面目な彼女は手土産持参。今日はシャツが上まで全部閉められているものの、ボタンは一つづつ掛け違えて要る。
脱色作業が始まり、あぁ勿体ない。可憐黒髪乙女は――白金に成る。雪美が持ってきた『ハイメガブリーチmk=Ⅱ:改』は一本では足りず二本使った。派手髪族、鳥飼ゆきみは手際が良い。作業にこなれて要る。
実は青色の毛染め剤は持ってはいたが雪美の髪色は薄いパープルなので被る事を嫌い敢えて持って来なかった。流石に二本も使うと、髪のダメージは激しいので高級トリートメントは持ってきていた。性格が良いのか悪いのか。
ひとみは黒歴史ノートを見ながら一人で頷いて、勝手に納得している様である。
手土産の中身はマイクロミニスカートだった。芸術家の天才肌は一味違う、金曜日のみすずの恰好を見て――何かが違う?と気に成ってお土産にしたのだ。
***
クーラ王国、予言補佐官室。
ジュクブレンド・シンミハーハと大天使はまだ飲んでいた。床には大吟醸の瓶が数本転がっている。昭和臭が強い屋台の暖簾は湯気でひらひら泳いでいる。具材は卵、白滝、こんぶ、つくね、とりもも、牛筋、ルッコラ、大根、ハンベン、里芋、ジャガイモ、アスパラ、レタス、タコ、粒貝、トマト、がんもどき、つみれ、コンニャク、厚揚げ。何故か海老は無い。
「あんぁ! スイカ見たいなおっぱいを書く奴は…死刑で良い…牛筋が無いぞぉ!」
「――なんにせよ拘る事は良い事です! そろそろ差し水しないと、 煮え過ぎちゃいますよ!」古乃美ちゃんは飲めど飲めどシラフ――強敵。
「あとあれだ! 男主人公は要らん…なんはら全員、おんなだけでいい…牛筋が無いぞぉ!」
「――つくねはまだ在りますよ! 意外とトマトのおでん、美味しいですね!」
「牛筋も無ければ……タテ筋も無い! 書き込む度胸の無い原画マンとOKを出さない監督は…」
「――グラス空ですよ! もう、瓶ごと行きましょう! それでこそ権力者!」
あと数日は飲み続けてるだろう此の二人。
***
白羽家、505号室内浴室。
フェリシアは白の入浴剤のお湯で満たされた湯船に浸かりながら、毛先の色を見ながらピンクでも良かったかなと思案していた。湯船が入浴剤要りなのは、決して見えては行けない、隠すとこは隠す、基本中の基本を解って居る彼女の――深夜枠規準を崩さない為の配慮。
必要も無いのに足を斜め45度に上げて生足を魅せる処も素晴らしい。湯船から上がる際には誰も見て居ないのに腕や手で大切な処はちゃんと隠す。
同時刻白羽家、505号室内、禁断の開かずの部屋。
鳥飼雪美はPCの履歴を見て大爆笑。内田ひとみは黒歴史ノートを見て、これは素晴らしいと綺麗な涙を流す。
旧:城羽みすずが居たのならばショックで二回か三回、命を落として居ただろう。
***
夜、帰宅した母親は冷蔵庫の中を見て怒りが込みあがる。在る筈のお楽しみがが無い。食べたな!――食っとらん!と口喧嘩は遅く深夜まで続いた。