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深夜枠規準ヒロインは異世界への案内人 フェリシア・エドラは期待を裏切らない  作者: 一博,ラン
深夜枠規準ヒロイン フェリシア・エドラ
3/17

黒歴史と学園生活の開始

=01=


 都内、某マンション。

 東京都のギリギリ端の方、ほぼ埼玉に近い場所に建っているマンションの505号室の奥の部屋には死因理由不明の突然死した城羽みすずの身体が横たわってた。髪の毛が細く黒いロングヘアーが美しい漫画同好会部長、乙女ロードの住人で立派な古典的なオタク女子。

 恋愛経験、無し。

 超が付く程に美人なのだが現実世界に興味は無く果てしない二次元の世界で幸せに生きていた。

 完全秘密主義。

 現実と趣味の世界がごちゃごちゃに成って居て発する言葉は毎回周囲を困らす(こじ)らせ具合は痛さを通り越して名物になる在り様。自室は南京錠とダイヤルロックの二重の鍵で堅く閉ざされ

誰の侵入も許さなくネット用語を日常会話で使わない人は頭が可笑しいと本気で思っている。

 トホホレベルでいったらフェリシアといい勝負だろう。


 あと数分で死後硬直が始まる。今は突然死の詳しい内容は後に残して置く。隠し味程度のスパイス的なミステリー要素。


 室内は耐久性の強い本棚が壁一面を覆い、偏ったジャンルの書物がびっしり並んでいた。


 安物の本棚では本の重量に耐えきれす板は傾き棚は崩壊しただろう。

 やたら横長の机にはディスクトップのパソコンと文房具が散乱し、誰がどう見ても作業部屋の印象の持つ事は確実な光景である。女高生ながら良く揃えた物だ。部屋に置いてる物は一つ一つが彼女の遺品で、全てが思い出の宝物。


 ひときわ異彩を放つ古いノートが一冊。


 白だった紙は黄ばみが増している。

 表紙には『設定資料』とマジックペンで書かれている。内容は手書きで、オリジナルのキャラクターや文章で埋まり、漫画を描く為の強い思いが込められて居た。

 クオリティは微妙に上手く気合の表れが発揮されているが評価に付いては敢えて伏せて置く。我々はこういったものの名前を一発確実に表現できる素晴らしい言葉を知っている。 


『黒歴史』これ以上もこれ以下も無い。


 創作心が一番輝いていた時期の純真無垢な宝物なのだが、全世界に(さら)され日には制作者の精神汚染は震度8を余裕で振り切り、非常に取り扱いが危険でやっかいな代物でもある。


 時には脅迫の種になるし、友人にバレた日には血の毛が一気に引き、死んでしまっても仕方がないであろう。賢い者は心の成長と共に危険物は処分する事を選択するが、世界に二つとない貴重な品である。いずれ強烈な恥が待っているかもしれないが大切に保管する事も選択肢の一つ。


 創作物全般を愛する友人諸君には、この手の物を見つけた場合には、必殺技『そっとしておく』を使える優しい心を持ち合わせて欲し処である。最悪、…魂の破壊が待っているかもしれないのだから。

 

 城羽みすずの死因は、親バレという犯人も居なければ動機すら無い現象だった。


 心砕かれた(むくろ)にフェリシアの魂が重なり無事、転生は終了した。


 みすずとフェリシアの身体は寸分違わず同じ顔、同じ体型で、これは偶然と言うよりは預言者ジュクブレンドの能力が如何に強力なのかを証明するエピソードの一つで、むっつりスケベなりの配慮だった。心が腐っていても預言者は預言者。


 新しい別の身体に乗り換えても違和感が強く、最悪のケースは死亡してしまう。乗っ取りタイプの転生には、適した器が必要である。


 フレミアの戦争では、戦法として魔法により人格憑依、身体乗っ取りもあるが、魂の反共鳴が激しく自爆、特攻の様なもので実用的では無い。


 思考の誘導程度なら比較的、安全な魔法だが、他国の人間に使った場合、戦争行為と見做(みな)されてしまう。


 新しい、城羽みすずは目を覚ます。


 手の感触や胸の鼓動、皮膚の温度が生きている感触、転生の成功を確信した。

 鏡を見る。髪色以外まったく変化が無い。転生するからには、もっと美人な顔と期待していたが、事は思い通りに運ぶ筈が無い。


 紺色の指定学生服を脱ぎ、裸に成る。全裸です。申し訳無い、諸事情があり脱がないとお話が進まないのである。物語は進まなくて良いから、とりあえず脱がしとけば正解との声も強いのだ。

 

 彼女は両手で胸の大きさや感触を鏡を見ながら確認しつつ意外な変異に気が付く。――身体から発する魔力の強さに。閉ざされたカーテンを開け、目に映る人々街並みを見る。


 京都に在る某アニメスタジオが悪意全開でこの手の表現が得意なので、詳しい方は想像の参考にしてほしい。裸の女子高生が窓を開け姿をあわらにしているのでるのだから。みすずの裸体を文字を使って表現しても良いのだが制限文字数七万を軽々しく余裕で突破しそうなので止めて置く。

 彼女が残した遺産にフェリシアは驚愕する。

 未知なる品々の数々はクーラ国立宝物館に贈呈しても申し分ない程に強力な魔道具なのだ。


 地球人が造った物なので当然と言えば当然なのだが。全てクーラに持ち帰れば富豪ランキング上位入賞は確実。舞踏会デビューは軽々しく華やかな貴族生活が待っている。

 持ち帰れるのが可能な場合の話だか…


 一冊、本棚の書物を手に取る。とても薄い書物。強力な魔力を感じる。


 何せ国宝級。内容は宇宙の秘密を記した文献か、はたまた破壊の魔法の伝授書か。表紙を捲ると(めく)男同士が裸体で絡み合い愛を囁く……。


「――!?」


 一瞬でフェリシアは絶命した。さすがは国宝級、期待は裏切らない。城羽みすずの肉体は一日に二回の死を味わう羽目になった。トホホである。二回目が全裸なので、更にとほほだ。


 薄い本がフレミア惑星に持ち込まれた場合は厳重管理体制の元で保管される事で在ろう。見ただけで命(うばわ)れる危険な書物。


 ジュクブレンド・シンミハーハだけは、其の害、ものともせず悦んで影に隠れて読んでいても可笑しくない。なんなら、その手の物を既に書いてても不思議では無いと記して置く。


 すっとボケた創造主、古乃美ちゃんがフェリシアに話掛ける。


「だらしないですわね。そんなクッタクタな根性では地球ではやっていけませんよ? 初めから地球人に生まれ変わって人生経験を積む事も可能ですが?」


 フェリシアはショックで放心状態。放置しても良いのだが出鱈目創造主は凍りついた彼女に知識を与えて最低限の地球言語を話せる様にし城羽みすずを生き返らせた。優しさでは無く、ただ面白そうとの理由だけが天使の動機だった。――深く考えると恐ろしい限り。


 意識が戻った『城羽みすず』は先程脱ぎ散らかしたブラウスを手に取り袖を通す。全裸だけでは芸が無い、彼女は着エロの重要性を理解して居る。


 冷静に考えると問題は山盛りで戦略を立てる必要に追い込まれた。ノリと勢いで地球に飛ばされた事に怒りを感じる…当然だろう。


 地球とフレミアでは文化レベルが離れすぎて居る。地球人全てがスカウト対象ではあるが危険思想の持ち主は混乱の元に成るので避けなければならない。地球人の魔力は大きすぎて危険である。


 国際規定やクーラ王国の法律、基本的な戦闘魔法術や文化、能力開発などを教育しなければ、とてもだけれど地球人は危険過ぎて惑星フレミアの存在自体が危うくなるのは理解できるがフェリシアの事で在る、法律、魔法術には詳しくない。


 現状の身分が女子高生とは…なんとも心細い。


 偏ったジャンルの書籍で埋められた本棚を眺め、与えられた条件内で使命を果たす糸口を考える。

 両手の人差し指をこめかみにあて考える事三分。

 

 答えが出る。


「今の私は女子高生。ならば…通う学園を乗っ取る! 手始めに部活動から!!」


 答えが出たからといえ其れが正解とは限らない。彼女も何かが間違っている。残念だ。


 酷い話だ。惑星フレミアで地球人が新生活を送っても待ち受けるのは戦争の準備と殺戮。優雅な冒険物語では無い。ジュクブレンドの部下であるフェリシア・エドラも、なかなかの悪党だった。


=02=


 翌朝、フェリシアは黒のパンツスーツを着込み、高校に向かう。指定学生服では無い事に母親は驚き何事かと掛けよるが

「――スカウト稼働!!」と一括し、黙らせた。

 日本の礼儀を重んじスカウト活動となればフォーマルに身を包んで登校する。


 彼女はツンツンするしかない。使える能力は深夜枠規準なので『デレ』が欲しい処だし、其れを見込んだジュクブレンドだが、事態はデレの出る余裕が無い。


 十分、裸のシーンを入れたので許して欲しい。みすずが動く度に、歩く度に乳が(Dカップ)揺れるので、今はここで手打ちとし我慢を乞いたい。ジュクブレンドの事だ、今後、何かを仕掛けるのは間違いないはずだから…

 

 私立四葉高校高等学園。

 普通の高校であれば全生徒が指定学生制服を着てるので、OLスタイルの城羽みすずは異彩を放つのが自然のはずだが、何故か、ゆるきゃら?の様なきぐるみは要るし、謎の軍服姿の学生、ついでに魔法少女っ子は居るし忍者の姿も。


 この学園は様子が奇妙だ?普通じゃない…。


「なーんか、何かに負けて要る気がするわ!」自然とぼやきがでる。


 初日と言う事もあり様子見で一時限目から放課後まで微動せず黙って授業を聞いていた。しかし内容はちんぷんかんだった。そもそも不思議と教師が授業を行って居ない。職務放棄をしている。



 放課後、私立四葉高校高等学園、西校舎3F、漫画同好会部室。

 フェリシアは、部室に向かう。何事も最初が肝心…気合と勢いで制圧して流れを作るしかない。ドアを勢いよく開けセリフ放つ。

 

「諸君聞け! 此処はクーラ王国の地球支部と宣言する! 部員は全員今から強制的に私の部下と成り、私の所有物とします!」

 

 一人の部員が立ちあがり拍手をする。


「――部長! 遂に振り切ったんですね! 素敵です! 成り切り系ですね。私、この時を待ってました! 万歳! 万歳!」


 コスプレ好きの『鳥飼雪美(とりかいゆきみ)』は目をキラキラ輝やかす。みすずと同じく2年生で前下がりのショートカットで身長が低い。漫画同好会に所属しては居るもののペンを握っている姿は見た事が無い。性格は非常に明るく転んでも怪我をしても大笑いする程、何かが抜けて要る。


 高校の入学式では魔法少女のコスプレ衣装で登校し周囲を凍らせた。彼女なりの気合の表現なのだが抜けて要る子なので仕方が無い。

 勿論入学早々2時間程、説教を受けた。彼女の事だ、怒られていても絶対に笑顔だったであろう。髪の色は薄いパープルで手入れが大変だが誰に突っ込まれても

「――地毛です!」と言い放つ堅い根性を持っている。

 

 残念な事に胸のサイズだがどら焼き程度と言えば丁度良いだろう貧の乳!でも需要は在る様だ。血液はAB型。やるな、それは絶対にやるなを平気でやってしまう子。非常ボタンは見たら押したくなる。

リードで繋がれた犬を見かけると解放してしまう等、厄介なエピソードを書きだすと止まらない。

 

 非常に我儘で要注意危険人物で五歳上、血の繋がって居ない超問題な兄が要る。

 其れに輪を掛けて雪美も超超問題児なのだが…


「意味が解りません。芸術、それも男性の裸しか書きたく在りません! 部長の裏切り者!」

 文句を述べる『内田ひとみ』更に苦情を重ねる。軽くカールが掛かった黒髪はサロンで仕上げたものでは無くナチュラルである。バストは丁度良いCカップ。

 

 大人しく滅多に感情を表に出さない基本無表情キャラ。堅い印象を持つ彼女だが何故か男子からは人気は高い。理由は服装。とにかくダラシナイ。ほんとに目のやり場に困る。指定学生服なのにガーターベルトや網タイツを着用し白いブラウスからは赤や黒などの派手な色のブラが目立つし、時にはノーブラで大切な突起が二つくっきり浮き出て要る。


 酷い場合はシャツのボタンは第三ボタンまで開いている。狙ってやって居るのでは無く天然なのだ。本来ならば先生から注意を受けるのが現実だと思うのだが教師とは言え男性だ。黙って黙認して楽しんでいる。究極の男子裸体像を書く事に命を燃やし書き上がった際には誰かれ構わす静かに

「――今回どぉ?」と評価を聞きまくる困った子。礼儀正しいが、真面目では無い。


 綺麗な顔立ちだが、気取る事は無く相手が誰で在ろうが平等に接する態度が親しみやすく男子からの好感度が高い理由の一つ。愛の告白でも受ければ、あっさり受諾しそうだが四葉高校に根性のある男子は居ない模様。


「新しいオリジナル作品ですか? 設定考えるの嫌ですよ! 剣を振り回すとか細々(こまごま)とデザイン考えるとか趣味じゃありません。私達は、男性の優雅な裸だけを追求すれば良いのす!」


「お、お、お、男の裸の追求とは頭がオカシイのか貴様は! 危険思想者だ! 絶対にフレミアの秩序を乱す危険思想の持ち主!」さっきから遣られっ放しのフェリシア。BL如きで心を乱すとは意外と純粋なのかも知れない。経験が無いのか?


「既に、な~んか設定が出来上がってる! さっすが部長! この際、異世界物にしましょう!」

 雪美は更に拍手する。この子は多分ノリで生きている。


「今後、私の事は――フェリシア・エドラと呼ぶように!!」

 たじたじな主人公この先大丈夫だろうか。(こじ)らせるのも、此処まで来ると何かしらの処置が必要とひとみは頭を抱えた。


 説明するまでも無いが、頭を抱えた内田ひとみや鳥飼雪美も、何らかの処置が必要なのは明白である。


 とりあえず漫画同好会の乗っ取りは部員がアレなだけに失敗に終わった。


=03=

 

 クーラ王国、予言補佐官執務室。

 物事の発端の一連の主犯ジュクブレンドは致命的なミスに気が付く。地球側の宇宙にゲートが無い事に…

 要するに行ったは良いが戻ってくる方法が無い。大概(たいがい)であるが、むっつりスケベは相変わらず…ぶれない。

「しゃーねーなー、こうゆう時は飲むしかない!」

 此の男の行動の予想は深く考えては行けない――飲む――酒となると出てくるのはあの『お方』だろう。 


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