終章
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………
…………
光が闇と入れ替わる。意識が近づき、夢が消えた。
「おうあ?」
奇声を上げつつ、俺は覚醒した。ここは……?
シーツの白さが眼にしみる。
ここは……保健室だ。
そして、俺は全てを思い出した。が、どうやってここに来たか覚えていない。たぶん抹消されたんだろう……お、でも抹消された、ということをちゃんと覚えてる。ってことはだ。大丈夫そうだ。よかった。
そして、俺がそう認識すると共に、一つ疑問が浮上してきた。
神無月は?
まあ、ここにはいまい。保健室を見渡してみたが、そうだった。先生はいないようだ。
ベッドから起き、窓に近寄る。そしてこの部屋の真向かいの教室に眼を凝らす。そこは、一年六組のはずだ。
いないか?
なんて、ここから見えるわけがないか。
俺は諦め、窓から目を離した。
「あら、如月君、大丈夫?」
保険の先生だ。もう少し感慨にふけりさせていただきたかったが。
「なに言ってんの。ほら、授業戻れる?」
大丈夫ッす。
「そう、じゃ早く合流しなさいよ。」
「ういっす」
そういうなり、俺は保健室を出た。この廊下も、久しぶりな気がした。俺は教室へと急いだ。当たり前の現象だろ?
……おそらく、この世界は普通の、何の変哲もない世界だろう。
でも、それが退屈だとは、もう思わない、思えない。
ほとんどの人が、今、目の前にあるもので満足しているのだ。むしろ、それは幸福でさえある。そう、俺は教えられたのだから。
なァ……。神無月。
神無月は、教室の、俺の隣の席に鎮座していた。
俺が教室に入り、彼女と目が合ったとき、神無月がふと微笑んだように見えたのは、錯覚ではないだろう。
うららかな日差しは春の完全なる訪れを告げ、俺の睡眠の促進にもつながってくれるだろう。
……とにかく、珍奇で倦怠な俺の体験談はこれで終わりだ。
神無月は、希望で満ち溢れた思いを馳せていることだろう。
さて、じゃあ俺は。
何が起こるかわからない明日を心待ちにしていようじゃないか―




