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第十七章 奇襲

そんなこんなで、俺は神無月の家をお暇した。俺が家を出るとき、なぜか神無月は俺を心配そうに眺めていたが、気のせいだろう。

さて、よく分からないところに来てしまった。

こちらの方にはあまり来たことがないので、迷子になる確率がなくもない。それは避けるべき事態だろう。この不安定な状況で―というより、高校生として迷子はまずい。

だが、家がどっちか分からないほど、俺は方向音痴ではなかった。

「行くか」

…………

結果から言おう。

なんというか、まあ、アレだ。いわゆる……その、迷子っつーものになってしまった。

言い訳じゃないが、この世界の地理は、微妙に齟齬が発生しているらしく、要は、いつもと違うってことだ。

というわけで、今、俺、迷子。

困った。

多分、俺の頭脳が指し示しているであろう方向は、家にはたどり着かないであろう。これも情報操作のなせる業なのかもしれない。適当に、進めば進むほど、より一層迷子ポイントが上昇している気がする。

「ふう」

疲れた。

……そういえば、ここ、来たこと、というか見たことないな。

RPGにでも出てきそうな、絵に描いたような路地裏。

少し怖くなり始めてきた、その瞬間。

「……!」

後ろに気配を感じた。少し躊躇してから、一気に振り向く。

最初、そこに何がいるのか分からなかった。

よくみてみると、黒ずくめの男が立っていた。……死神のような服装で。

「……また、会ったな。」

「こっちはもう二度とごめんだったけどな」

気障な仕草で、髪を払った。

山で出会った、あの変態。

俺に記憶媒体を渡した。

「……周防」

「おや、名前を知っているのか?名乗った覚えはないのだが。どうせ水無月かその類だろう?」

そういうと、彼はフードを取り、あのいけ好かない顔をあらわにした。

が、その顔は、かつてのこいつとは、だいぶ違っていることに気が付いた。

凍りつくような、殺気さえ漂わせているかのような眼。

不敵な笑み。

背筋に悪寒が走った。

「だが、今、お前は独り。水無月がいなければ、お前は何も出来まい?フフ、己の無力さに気が付いたか?だが、もう遅い。……貴様は、時空の歪から生まれてしまったハプニング要素。我々はハプニング要素を消去する義務がある。」

は?

そういうと、彼はポケットから軍隊に採用されてそうなごついナイフを取り出した。今だからこういえるが、その時の俺の驚愕は想像を絶するほどだった。

「フフ、俺らは認めてないとはいえ、貴様も神と呼ばれた男だ。相応の敬意を表すのが筋であろう。神よ。世界の安寧のために……消えたまえ。」

今……なんつった?

 その答えにたどり着く前に、俺は信じられない光景を目にした。

 そいつが、ナイフを腰に構え、突進してくる。

「うわっ!!」

 間一髪、俺は身をよじらせて彼の攻撃をかわした。

 今の一閃、完全に本気だった!

「フン、かわすか。……それもよかろう。今の行動が吉と出るか、凶と出るかはまた、お前ではない、違う神しだい。お前が本物かどうか……確かめてやろう。」

 感情を感じさせない語調で、彼は再びナイフを構えて突進してきた。

が、今度は俺にもいくらか余裕があった。横方向に飛びのき、必殺の一閃をよける。

「待て、わけが分からない!俺を殺す?神?まずそれを説明しろ!」

「……水無月達は、まだ言ってねえのか?」

「ああ」

「……フン、いかにもあいつららしい。お前の正体をまだ教えていないとは……。

なら、どうせ水無月自身の正体も明かしていないのだろう。フフフ…ハハハハ!これはいい。お前は何も知らず……ここで何をしていたのだ?異次元ごっこか?残念ながら事はそんなに甘い物じゃない。むしろ深刻なことだ。それをなぁ……。ハハハ!」

「勝手に話を進めるな、俺にも理解させろ」

フフ、とまだ彼は笑いを残し、そして冷酷に言った。

「山で会ったとき、言ったろう?次に会うときは敵同士、と。敵が敵に機密情報をもたらすとでも?お前は、黙って……死ねばいいのさ。真実を知ることなく……な。」

ふざけるな。

おお、そうだ、あれがあったではないか。

ポケットから、そーっと、それを取り出す。

「何をしている?」

「こんなことをしてるのさ」

そう言い、俺は飾りに触れる。

折り畳み傘小の物体は、そして一気に剣になった。

とりあえず構えてみた。

「む……。」

彼は面食らったようだ。が、それ逃げろ、と思う間もなく、彼はまた冷酷な微笑を顔にたたえていた。

「フン、おもちゃか。くだらん。どうせ水無月の入れ知恵だろう?だが、あいにく、俺はそんなのでビビるほどおろかな人間ではない。おろかなのは、むしろ、お前のほうだ。」

なにお、これだって殴られりゃ痛いぞ。

「殴られれば、の話しだ。……そうだろう?」

そう言うなり、彼は突進してきた。

避けるのは、間に合わない。

「くそっ!」

剣を前に、かばうように立てる。致命傷は避けられるだろう。

ガキィン、と鈍い音が鳴り響き、俺の手には既に剣がなくなっていた。

後ろで、カランカラン、という音が聞こえてきた。

「む……。」

「フフ、バカが。……もう少し楽しませてくれると思っていたが、的はずれだったようだ。」

俺は右上3メートルくらい先におっきな木の棒があることに気付き、急いでとりに行く。

ただでは死なんぞ。せめて道連れだ。

「さあ、死ね。」

また彼は突進を敢行した。俺は渾身の力を込めて、木の棒を振り下ろした。

ザクッ、と小気味いい音がした。

恐る恐る木の棒を見てみると、……変態野郎のナイフが刺さっていて、その変態はというと、やはりそのナイフの柄をつかんだまま、硬直していた。

そのまま、俺は思いっきり棒をひねる。

「うらっ!」

「ッ!!」

カランカラン……。

彼の顔は驚愕に染まり、木の棒の先には、ナイフ……の刃が付いていて、少し下を見ると、柄らしきものが転がっていた。

勝った。そう確信した。

だが……、なんだろう、この余裕は。まるで、自分は絶対に死なない、とか確信しているかのような心境であった。

「……今逃げるのなら、見逃してやってもいいが……?」

実は、前から言ってみたかった台詞の一つである。

だが、彼は冗談を、みたいな顔になり、こういった。

「フフ、これで勝ったとでも・・・・・・?

そういうと、彼は何かぶつぶつつぶやき始めた。

何を……と思ったが、それはすぐに確信に変わった。

まずい。アレか。

完了する前に、勝負を決してやろうじゃないか。

そう考えると同時に体が動いていた。

彼の脳天めがけて、思い切り棒を振り下ろす……!

ギィン、と鈍い音が響いたが、それは頭を直撃して鳴った音ではない。俺は瞬時にそう判断し、とっさに後ろの飛びのいた。

さっきまで俺の首があった位置に、ナイフが空を切った。

「……間に合わなかったか」

「形勢逆転だ」

俺が手に持っていたはずの棒は、いつの間にか半分以下の長さになり、すっぱりと、まるで刃物で切られたようにきられている。

そして、彼は手に前よりも二周りくらい大きく、ゴツさも頂点に達した、ナイフというより短剣を手に持ち、顔をゆがめて笑っていた。

「ふん、俺としたことが、思ったより手間取ってしまった。だが、今度こそ終わりだ。」

ああ、終わりか。と、なぜか納得してしまった。

俺の人生が、ではない。この戦いが。

彼はつかつかと俺に歩みより、ナイフを高く掲げた。

彼は勝ち誇った顔をしているが、なぜか俺の中には絶望、といった言葉はなかった。

変わりに、早く来い、という気持ちが満たしていた。

……俺は何を待っているのだろう。自分でも、分からない。

「死ねッ!!」

だが、そのナイフは俺の心臓を貫通することは出来なかった。……むしろ、俺の体にさえ、触れることは出来なかった。

目前にあるナイフの刃を見てみると、白い手が刃をつかんでいた。

素手で。

その手の先を追って、下へ眼を向けていくと、そこにはしゃがんで、手だけ伸ばした神無月がいた。

相変わらずの、無表情で。

ああ来たな、となぜか俺は安堵した。

「なにっ……!!」

彼はもう、驚愕をすっぽ抜かして愕然、といった感じだ。

「神…無月……?」

だが彼女は彼の顔ではなく、俺の顔を見ていた。

そして、淡々と、

「助けに来た」

とだけ言った。

痛くねえのかよ、という間もなく、彼女はその細い腕のどこにそんな能力が、と思いたくなるくらいの力強さでナイフをどんどん周防の方へ押し返すと、そのままナイフの刃を折った。

その刃を、そのまま周防の首筋に当てた。

「……あなたの負け」

と、自分のことではないような口調で言った。

「どうする?」

と、俺に聞いてんのか?

「そう」

「こいつか?」

「そう」

「……好きにしろ」

「了解した」

そういうと、彼女は刃を彼の首筋から離し、向こうを指さして、

「行け」

とだけ言った。

「……くそっ。」

とだけ言って、彼は逃げ出した。







この小説を書き始めてから、ずっと胸に留めていたこと。それは、『この中に、一度くらいは戦闘シーンを入れる』、『その条件として、大剣が出てくること』

というものでして、それが実現したという意味では、、まあよかったかなあと。やっぱり一つくらいはこうゆうのもないといかんぜよ的な思想を持つ野郎なんで。自分は。

おかげでだいぶ不自然になってしまいましたが、ここはポジティブ思考で行きましょう。

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