物語のハジマリ
幾慧です。
長ったらしい文章ですがお付き合いください。
「っかーっ、おらよ!さっさと起きやがれってんだ!シュネー!」
ボス、ボスという音と腹部に走るとても鈍い痛み、
それ大声で喚き立てる声に起こされた。
「…何よフロスト。まだ外は暗いじゃない。」
「よく見やがれ!ただ曇ってるだけじゃねェか!
お天道サンはとっくに昇っておられるんだよ、
バーローめが!
自分で窓から見てみろ目ェかっ開いて見てみろ!」
私はこの悪い目覚めの元凶が未だにブランケット越しにどーんと乗っかっているのに無性に腹が立って、
ずっと早口で喚いているそいつ―フロストを床に投げ出した。
「もう、こんな寝起きなんて嫌よ。
せっかく夢を見てたっていうのに。」
「夢だぁ?
んなモン、また今日の夜にでも見りゃあいーじゃねェか。」
「フロスト、私はあいにく、あなたと違ってトリ頭じゃないの。
それが不可能だって事をよーく知っているの。トリ頭じゃないから。」
「てんめぇ!俺ン事馬鹿にしたな、この野郎!俺ァ、トリ頭じゃねェ!
それと2回も言うんじゃねーよ、腹立つんだよ、このすっとこどっこい!だったら俺ももっかい言うぞ!俺ァトリ頭じゃねェ!大事だから3回言ってやる、トリ頭じゃねぇぇぇ!!」
「五月蝿いわね。言ったことも忘れちゃうからそんなに繰り返して言うのかしら?言わせてもらうけど、鏡を見なさいフロスト。あなたを見れば誰だってトリ頭って言うわよ。」
そう。
この騒がしいフロストという名の、
私の話し相手は人間ではない。
白鴉である。
昔、城の一塔を与えられた幼い私は、独りはつまらないと駄々をこねたらしく、このギャアギャア物を言う鴉を与えられた。今となっては後悔しかない。
「てめェには言われたくねーなー、シュネー。お前ェだって、小さい頃の記憶がなかったとかいってただろーが!」
まるで切り札でも出したかのように、フロストはどうだとばかりに言い放った。
「……それは認めるわ。」
少々気にくわないが、この言葉合戦の負けを受け入れた。確かに、それは事実である。
「…フロスト、あなたは他人の傷をほじくり返すのが趣味なの?」
ただ、あっさり引き下がるのは嫌なので、少し悲しそうに返してみた。
あ、なんか涙も出てきた。
多分、嘘泣きだけど。
「っつあ、おい、シュネー?な、泣くんじゃねーよ、バーロー!!
あ、ちょ、俺も言い過ぎた。あーその、すまねぇな…悪気はねェんだが…。
えと、ち、ちょいと待ってな、朝食持って来てやっから、な?帰るまでに泣きやんどけ、このヤロー!」
何故か一人で(一羽?)慌てふためき始めたフロスト。
そう言って部屋から猛スピードで飛んでいった。
……トリ頭って便利。
きっと脳のつくりが単純なのね。
これから少しずつ彼女の人生は変わっていきます。お楽しみに。
閲覧ありがとうございました。