生きたい
前話のあらすじ
ルウクスは地下収納的なところに隠れて、お母さんはいなくなって、敵兵っぽい足音が近づいてきている。
「次はこの家だ」
荒々しい複数の足音。
僕の頭の上にある扉がガタガタと揺れ響く。
ガラガラ!ガシャンっ!!
乱暴に家具をどかし、人が隠れていないか探す敵兵。
「この部屋にはいないみたいだな、奥に行くぞ」
必死に物音をたてないよう、震える体を抑え、泣きたいのを我慢した。
お願い、見つけないでっ…!
「…? おい、どうした?」
急に静かになった。
ドクドクドクドク……。
反対に僕の心臓の音の激しさが増した。
暗い世界に光が射し込み、眩しくて思わず目を瞑ってしまった。
「子供……」
「ほらなやっぱりいただろ?」
「ああ…すごいな、気付かなかった」
絶望と共に目を開くと、男が悪魔のような笑みを浮かべながら僕のことを見ていた。
「っ!」
「すげぇ怯えてんぞ」
男はニタニタと笑っている。
同じ人間だとは思えなかった。
ここから逃げたいが、あまりの恐怖で体を動かすことも打開策も思い浮かばない。
「悪ぃがなガキ、ヴァイシュロスのために、死んでもらうぞっ」
「……ぅっ、ぅぁぁっ!」
頭を鷲掴みにされ、そのまま投げ飛ばされた僕は壁に体を強打し、床に落ちた。
全身が痛い、動こうとすると痛みが増す。
「おい、遊んでないでさっさと楽にしてやれよ」
「はいはい、わかりましたよーってもう行っちゃったのかよ」
もう一人の兵士は他に生存者がいないか捜索しに行った。
「さて、どうしようかな?」
男は剣を振り上げた。
その瞬間、とても大きなサイレンのような音が鳴り響く。
ヴァイシュロス兵が来たときの音とは違う。
「あー…」
男は剣をおさめてこちらを見る。
「お前、生きたい?」
「…………!」
そんなの、生きたいに決まってる…。
「くく…息するので精一杯か?」
男は立ち上がる。
「もうすぐここに魔物がたくさんくる」
魔物…? 魔物って最近、国や村を襲ってたあの……。
「動けないお前はすぐに喰われちまうだろうな。…まあ、もし逃げて生き残れたんなら、強くなってヴァイシュロスを滅ぼしに来いよ」
何を言ってるのか訳がわからない。
「もしそうなったら面白いだろうなぁ…くく、くくくくくく」
男は去っていき、僕はその場に取り残された。
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