逃亡
前話のあらすじ
エイラを送りに行ったお父さんがまだ帰ってきてないけど、国から逃亡することになりました。
「おいっどこに行くんだっ!国を捨てるのかっ!!」
「邪魔だっ!」
「うわぁっ!」
まとめた荷物背負い、家の外に出ると、さっきよりもたくさんの人で道が埋め尽くされていた。
僕達と同じようにこの国から逃げようとする人、その人達を止めようとする人、どうすればいいのかわからず右往左往する人、とにかく今まで経験したことがないくらいに騒々しい。
「ルウクス早くっ、こっち!走ってっ!!」
「うわぁっ!」
僕は手を引っ張られながら走り出す。
人が密集していて混乱している中走るのはとても辛かった。
腕を引かれ、色々の方から押され、転びそうになってしまう。
「はあっはあっ!」
お父さんとエイラにはもう会えなくなるのかな…。
息を切らして走りながら、僕はそんなことを考えていた。
「あと少しだっ!」
「早く行けよっ!」
「押さないでよっ!」
そんな声がどこかからか聞こえてくる。
あと少しで国外に出る。
僕達の国―フルーリュンヌ。
他の国から遠く離れた辺鄙な場所にある小さな国だ。
国壁と言われるものはあると言えばあるけれど、他の国と比べれば全然たいしたものじゃない。
ちょうど僕の背丈ほどの柵がある、それくらいだ。
「わっ!」
前にぶつかった。
詰まっているのだろうか、人々の動きが止まった。
「おい、さっさと進めよっ!」
「う、嘘…だろ…」
「終わりだ……」
「きゃあああ!」
「うわぁぁぁああ!」
「危ないだろっ!」
「どうなってんだ!」
突然止まったことによって後ろの方の人が将棋倒しになったようだ。
悲鳴と怒号が聞こえる。
そして、悲鳴は後ろからだけではなかった。
「逃げろぉっ!」
「うわぁぁぁっ!」
「何で敵がここにいるんだよ!」
前から後ろに逃げてくるたくさんの人々。
その隙間から一瞬見えた光景。
「う、うわぁぁぁぁぁあぁあぁあぁぁあああぁっっ!!」
老若男女問わず、敵兵によって殺された死体が散らばり、地面は赤色に染まっている。
また1人、また1人と真っ赤な血液が空中を舞い、地面に倒れ、息絶えていく。
敵兵はどんどんこちらの方に近づいてくる。
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