沸き起こる不安
前話のあらすじ
国の様子がおかしい……。
二人は家に帰ることになりました。
帰り道の途中、付き合いのあるおばさん達とお母さんが少し話をしていたが、みんなの落ち着きのない顔に僕は不安を感じた。やっとの思いで我が家へと着き、僕は疲れて椅子に座り込んだ。
「ね、ねぇ、お母さん。一体今、何が起こってるの?」
帰ってきてからも窓から外をしきりにうかがっている、落ち着かない様子のお母さんに聞いてみた。
国の皆がこんな様子なのだ。僕は不安で不安で仕方がなかった。
「……今、どこかの国がこの国を攻めているのよ」
「どうして……」
「それはっ……。……わからないわ」
お母さんが困ったように答えた。
お母さんも僕と同じように不安なのが伝わってくる。
お母さんからだけじゃない…、きっと他の皆も同じなのだ。
怖くて怖くて泣いてしまいたくなるのを我慢するしかなかった。
ビクっ……!
遠くの方からだが、叫ぶ声や地響きが伝わってきたのだ。まだ微かだが、それらは体の奥に重く響く。
「ねえ、ここまで来ないよね?」
僕の声はもう震えている。
「兵の方達を信じましょう……」
「うん…」
そして……。
ついに国の中にまで敵が攻めこんできた。国壁の近くにあった家は燃やされ、男女年齢問わず、次々と殺されていく。
「どけ!逃げられなくなるだろっ!」
「きゃあっ!!」
「ママーパパーっ!うわぁぁぁんっ!!」
「もうこの国はダメだっ…」
「諦めるな! 俺たちも戦うんだ!」
悲鳴や怒鳴り声、泣く声など、様々な声が飛び交っている。
「ルウクス、この国から逃げるわよ」
お母さんが静かに言った。
……どういうこと?
「待ってよ! お父さんは!?まだ送りに行ったまま帰ってきてないよ!…それにエイラも……」
「今出ないともう手遅れになるの! お父さんも、エイラもきっと…きっと大丈夫よ…!…大切な荷物をまとめなさい」
お母さんはいつもとまるで違う……必死な形相で僕の肩を掴む。
僕を言い聞かせるかのように…いや、自分自身に言い聞かせているかのように言った。
「っ………わかったよ…」
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