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NOT FACTOR  作者: Ribain
蛾の誕生編
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蛾の誕生編 第五話 第四幕 想いの果てに


 傍観者 古川楔



 前にも見たことがあった。誰かが目の前で倒れている姿。床には血溜りが出来て、鉄臭い匂いが立ち込める。生きてやしない。

「また殺した」

(吸収した方が成長できるのよ?なんでいつも殺してしまうの?)

 脳内に反響する身に覚えのない過去の記憶。優しい老婆の声で俺のことを宥めている。やんちゃをしてしまった子供を叱るように。

 でもこれは俺の記憶じゃない…?

(好きなのね…人殺しが…)

「…違う…」

(大丈夫。特殊なことだけど、別に変なことではないのよ。)

「…違う…」

(愛しているわよ。―――。)

「…違う…それは俺の名前じゃない…。俺は古川楔、陽正高校三年A組、男子バスケ部所属の…」

(落ち着いて記憶の継承が上手く行ってないだけだから、直ぐに思い出すわ。)

 頭痛に頭を抱え目の前の女性を見る。血に濡れた銀髪の女性。

「こいつは…誰だ?」

 後ろを向けば腹部を貫かれた黒髪の女の子。制服を着ていることから生徒だと断定できる。

「…お前も…誰だ?」


 記憶が飛んでいる。


「俺は…今まで何をしていた?」


「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 全身が熱い。何かを俺は求めている。こんな暗闇じゃ何も見えない。外に出よう。月明かりで少しは落ち着くかもしれない。建物の外へ向かおうと歩き出すと先ほど見た女子生徒と思しき死体が足に当たった。

「邪魔くさいな。」

 死体を蹴り飛ばすとそれは壁に当たり腕を明後日の方向に曲げた。

 何も感じない。何で死体が二つもある場所に俺は居たんだ?

「………び…」

 微かに聞こえた声に俺は蹴り飛ばした死体を三度見た。どうやらかろうじて生きているらしい。

「生きてたのか…」

 どうせこの先は長くない。

「今楽にしてやる。」

 両手を彼女の首に当て、絞めた。

「…くさ…び…」

「!」

 だらん、と首を落とした彼女が最後に呟いた一言が俺の全身を駆け巡る。何か大切なことを忘れている。俺は…彼女を助けたかったんじゃないのか?喪失感に支配されると俺は後ろに不穏な気配を感じた。俺と同じ匂いのする否定的な存在。

 後ろには銀髪の美女が立っていた。



  


 傍観者 ヴィルマ・ガソット



「……古川楔。貴方は自分を守ってくれた彼女を手に懸けたんですか?」

「なんの話だ?」

 男は何を話しているのか解らないと言った表情で女の子を放り捨てた。

「彼女の気持ちを汲んでやれよ。クソガキ」

 銀色の闘気が私を包む。少しずつ思い出してきた過去を握り締め、私はNOTの腕を生成した。二本の腕は元通りに回復し、扱いやすい体の形を取り戻した。

 …この違和感…記憶が飛んでいる…

 そうか…私、死んでたんだ…。

「お前が俺の何を知っている。答えろ。」

「貴方はそんなことを言う資格がありません。俺の何を知っている?そうじゃないでしょう。自分で思い出すんです。自分の犯した罪くらい自分で償えって言うんですよ!」

 武器は既に破壊され刀はもうない。得意の剣術は使えないが、どうすべきか。

思案。過去の潜流。

(養成所で習ったはずだ。異形の怪物は規格外で規定に定まらない。定まった形なぞ存在しないと。)

 NOTは型に嵌らない。あの言葉はそのままの意味だったんだ。意識を集中させ、私は腕から武器を生成させる。不恰好な棒切れのような物体ができあがったが、元々、不斬黒刀も切傷能力は皆無の武器。相手がNOTならば問題はない。

「自分で考えろ?自分で償え?…俺だって忘れたくて忘れたわけじゃねぇ。償う、償うから…返せよ…俺の記憶をよ」

 彼の眼が緋色を灯すと地面から無数の腕が生える。冥府へ誘う死霊の手だ。悪魔は完全体になるために生と死を掌る。無意識に彼は全てを捨てていたのだろう。奢りも誇りも命も、知覚できなくても彼は解っていたはずだ。後ろに倒れる彼女、色芳彩香が自分の恋人で誰よりも古川楔を信じていてくれたことを。

 だって声に出てる。

「……ごめん。アヤカ…ごめん。」

 涙が枯れて流れないのか悲痛の表情で佇んでいる。彼は無意識だ。私を倒すために意識が飛ぶ寸前まで自分の力を開放している。支えているのは目の前の私という敵を倒さんが為。ならば私は貴方が安らかに逝けるように敵を演じましょう。

「その行為が十三委員会の理念に背いているとしても…」

 死霊の草原を刈り進む。一振りで腕が五、六本飛び、空中で霞に消えていく。五メートルくらいしか距離は開いていないが、このままだと気の長くなる程に遠い。跳躍して一気に距離を縮めようにも死霊の手が伸びて来て逆に戻されてしまう。一進一退でもなく、後退ばかり、古川楔を止めないと…色芳彩香が…島崎真二が浮かばれない。

 失う怖さを知っているから、辛い思いをさせたくなかった。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 古川楔は体の端々が少しずつ剥がれ落ち、人間の姿が崩れ始める。

「……NOTを処理すれば、これから山程の人を助けられる…でも、目の前の犠牲者は助けられない…。教官…これはジレンマですよ…どうして私たちは正義の味方に成れないんですか?どうして…人助けができないんですか?」

 壊れていく古川と自分の両親が重なった。私が倒せば存在は消滅する。彼一人いなくなることで一体どれだけの人間が影響を受けるのか。肉親、友達、クラスメイト…まだ学校に通っている高校生で私よりも生きていないと言うのに…

「この仕打ちは何ですか…神は…NOTを許さないのですか?」

 神殺しの名を持つ十三委員会には相応しくない台詞だ。嘆くのも終わりだ。私は私の仕事を全うしなくては。

「俺は…俺は!俺は!」

「視界は暗くなり、思考は止まる。身体の感覚が遠くなり、声も発せられない。でも大丈夫です…古川楔。死ぬのは怖いでしょうが一瞬で終わらせます。」



 十三委員会の入会テスト時、私は爆死した。

 NOT因子との適合が悪く悪魔に選ばれなかった。その時私は死んだと思っていた。現に死んでいたのだが、目を覚ますと真っ白な部屋。横を見ると神戸教官が私の起床を待っていたらしい。

「おはよう、君が第一号だ。」

 不敵な笑みは嫌じゃなかった。


「早乙女、お前らは第三室についてもっと知っておいた方がいいと思うぞ。仲間が何を研究しているのかくらい把握して置いて損は無いと思うがな。」

「三室それぞれが独立しているからそれは無茶な話だな。しかし、それが新人のヴィルマと何が関係ある?」

 ソファに座りながらスーツの男は睨みを利かせる。しかし、黒衣の男は淡々と答えた。

「彼女は…僕の作った人造人間だ。」



 私はNOT因子とのシンクロを高めると、銀色の髪を靡かせ身体が数十センチ程度浮遊する。

「古川楔…貴方は人造人間を知っていますか?」

「知ってるよ。機械だろ?」

「いいえ、機械と思いがちですが、私はNOT因子により命を与えられている言わば、十三委員会の契約者よりもあなた方NOTに近い存在。教官は私の存在を『死人種(デッドマンクルー)』と呼んでいます。」

「それが…何だと?」

「私は一度死んでいます。それは無残な姿で一生を終えました。まず死んでいたことを理解するまで時間がかかったものですが、その間私を傍で支えてくれた神戸教官が教えてくれましたよ。現代で化学技術は飛躍的に進化していると。」

「?」

 私は銀色に包まれる自分の身体を見て安らぎを感じる。この体は私一人の物じゃない。第三室の全員が思いを込めて復活させてくれた人類の希望が詰まっている。せめて貴方にも心の安らぎを与えたい。

(世界の運命は僕らに掛かっているんだよヴィルマ君。僕らで世界を助けよう。)

「…はい、教官」

 闘気の激しさが増して周囲に空気の歪みにも似た波動が伝播する。髪や開けた服が風で靡き闘気の奔流を目に見える形で表現する。僅かながら私に反応を見せた古川は首を傾げ瞬きする。緋色の眼が点滅した様に輝くと空間が三度揺れた。地面に倒れているのは私で、視界の隅に両手を赤く染めた古川がいる。腹が抉られていることから三度攻撃されたのだろう。何事もなかった様に起き上がると点滅した光が見えた。同じ攻撃が来るのだろうと身構えると、今度はちゃんと見えた。

「後ろから来るなんてちゃんと頭を使えているじゃないですか…古川楔。」

 着弾する前の拳を棒切れで叩くと古川の拳に銀色の筋が入り炸裂した。拳を失った古川は驚きの表情を作ることも無く、反対の拳を叩き込んできた。常人が目で捉えられる速度ではないが、今の私にとっては間が開いた二連撃。体勢を逸らして逆に回り込むと脇腹に一線を描く。飛び散る深紅の液体と黒い煙。ステージまで飛んだ古川の腹部に大きな傷を残した一撃は、古川のNOT化を助長し、周囲には濃密度の黒い霧が発生する。

「……アンタ…怖くないのか?自分の力が…」

 姿は見えないが正気を取り戻した古川が私に語りかけてくる。罠であることも考慮して戦闘姿勢は崩さない。しかし、恐怖の感情をNOTが持っているのか。

「貴方はNOT?それとも古川楔?」

「俺は古川だ。でもどうしてだろう。俺はアンタに憎悪しか抱いていない。今日まで会ったことないアンタをどうしてこんなに憎いんだ?」

「それは私が貴方を傷つけたからでしょう?」

「いや…違う…。俺には分かる。俺の中に居るコイツはずっと怒ってる。お前ら黒いコートを着た連中に対して…どうにもならない怒りを覚えている。こんな感情がどっから来るのか…見当もつかない。アンタら何をやったんだ?」

 NOTが怒りを覚えている?十三委員会に対して?

 確かにNOTに対し私たちは無知に近い。しかし、奴らの感情が憎しみとはどういう事だ?

「………何に対しての憎しみですか…?」


「同族を殺された憎しみだ。ヴィルマ君。」

 聞き慣れた声に振り返ると私の後ろには、命を与えてくれた神戸教官が立っている。

「教官…」

「ヴィルマ君。試験は合格だ。僕が手を出して終わらせてもいいけど、これからを考えて古川は君が倒すべきだ。罪や罰を背負い僕らは人殺しとして生きるしかない…この世界を助けるためにね。」

 教官の言葉から私は一つ覚悟を決めねばならない。

 『人殺し』として生き、『正義の味方』を諦める。

「…教官。私は目の前の犠牲者を助けられる方法を探します。例え世界を救えても人が居なくなってしまったら無意味ですから、私は人助けを諦めません。この力も命もそのために使います。」

 教官の顔を確認するのが怖かった。十三委員会の理念とは異なる考えを持ち、剰え自分の師も拒絶した考えだ。似て非なる世界を救うことと、人助けをすること。

「NOTが同族殺しで怒っているのであれば、上等です。私だって人を殺されて、餌にされて怒っているのですから!」

 主に両親の事だ。私が十三委員会に入ったのも両親を殺された恨みを晴らすため、しかし私の考えは訓練期間を経て変わった。殺すことから守ることへ考えをシフトした。過去に囚われては誰も救えない。仲間と共に今を生きたい。そう考えてしまった。

 こんな考えだから悪魔との契約は結ばれず、爆死したのだ。教官には申し訳ないことをした。折角救った兵士がこんな体たらくでは一銭の得にもならないだろう。身を切るように黒い煙を向くと棒切れを構え直す。相手の呼吸も整っている頃だ。別れも済ませた。もう何も怖くない。足に力を込め、煙の中心を見定めると教官の声が届いた。


「…行って来い。ヴィルマ君。」

「え…?」

 予想していない言葉だった。

「僕が十三委員会の理念通りに動いていたら君を復活させないだろ?そんなこと今まで会話してきたら解っているもんだと思ってたよ。僕は君だから復活させたんだ。世界を救うには君が必要だ。ヴィルマ・ガソット!君は僕の手足と成りこれから大いに活躍してもらう!最初の司令だ…古川楔を救って来い!」

 嬉しかった。教官の第三室に迎えられ限りない喜びが全身を包む。銀色の闘気が再び波動を生み、黒煙を吹き飛ばす。

「Yes, my God.」

 古川楔はステージ上で臨戦態勢。吹き飛ばした拳も再生して緋色の眼を点滅させている。こちらに手を出さなかったのは神戸教官が居たからだ。

「教官…帰ってきたら私を抱きしめて下さい。」

「おう、良い子良い子してやるよ。」

「救って来ます。あの若い少年を。」

 飛翔してステージへと肉迫すると古川楔は雄叫びを上げて威嚇する。意に介さず棒切れを振り貫くと古川の左手を殆ど抵抗なく切断した。驚いたのは手を切断された古川よりも私自身。棒切れ同然だった銀色の生成固体がいつの間にか鋭く砥がれた日本刀に変わっていた。色が全て銀色のことから私が生成した固体であることは確かだが、意志の違いでNOT因子のコントロールも可能になるらしい。

「アアアア!」

 左手を失った古川は失った部位の再生をせず、背中から新たな手を生み出し私を襲う。指先は鋭く尖りコンクリートすら易々と穿ちそうな形状をしているため、回避を余儀なくされる。古川の右手と第三の手を刀で払うと頭を蹴り飛ばして距離を取る。古川は体勢を崩してステージに片膝をつく。私は銀色の闘気を両腕から放ち空中でブレーキをかけた。

 今ならば…逝ける。

NOTの因子をバラ撒き続け戦った私はシンクロ率が極限まで高められていると実感した。これから行うことの不安は既にない、左手に嵌められていた銀色の指輪。シンクロ率が一〇〇%を超えると嵌められた銀色の指輪が爆発し絶命する。十三委員会から悪魔落ちを出さないための政策でこれまで何人犠牲になったのかも知る方法はない。一〇〇%のラインでは爆発しない、この一〇〇%の状態を臨魔状態と呼称し、否定存在NOTの能力を等価で扱うことが出来る我々十三委員会の切り札。能力の等価、つまり食事状態のハイブリッドNOTではなく完全に悪魔化したNOTと同等の力を発揮できる。そのレッテルが無い為、私は限界まで力を絞れる。

押しているのは私、しかし、このままだと一手足りない。

そうこうしている間に古川はステージ上で立ち上がっている。身体から人間の皮が剥がれ、七割程度NOTと化している。


「……殺して…くれ…」

 目を見張る。確かにNOTから古川楔の声が聞こえた。彼は消滅を望んでいる。現段階での私では古川楔を人間に戻すことは出来ない。人助けにこの命を使うと叫んだばかりなのに恥ずかしいが、自分の実力は理解している。

「ごめんなさい。貴方を助けられなくて…」

 悲しみは悔しさに変わり、思考を冷静にさせた。背中から銀翼が生え、客観的に見れば天使にも似た姿だ。

「ヴィルマ君…臨魔状態成功だ。」


 意識はクリア。自分がヴィルマ・ガソットであることも理解しているし、覚えている。視界にあるモノも今までと同じ何も変化はない。取り敢えず成功と言えるでしょう。

 Code SILVER MOTH…銀色の蛾だが、教官は天使の様だと言った。

「ギリシア神話に天使は登場しませんが…これも宗教を捨てた十三委員会の宿命ですかね。大丈夫…です。意志は保っています。」

 天使だなんてそんなことは一切ない。私はただの汚い蛾。

 銀翼を広げ日本刀を構える。死霊の手が草原を作り、彼の防御を手伝う。少しずつ手が成長し始め、数秒経つと古川の姿を確認できなくなった。しかし、この臨魔状態ではNOTの存在をかなり近くに感じることが出来る。視覚的に見えなくても彼の位置は手に取るように分かる。意を決し、死霊の草原へと突入すると無数の手が私の行く手を阻もうと集まってくる。滑空の勢いを殺さないように日本刀の入射角を四十五度に合わせ、更に加速する。間もなく視界に悶える古川を確認すると有無を言わさず両断した。死霊に囲まれて反応が遅れたのか、それとも古川の意志が死を望んだのかは解らないが、抵抗は見られなかった。切り口から黒い闇を放ちながら倒れると苦しそうに喚き出す。

「お前ら…俺を許してくれるのか?駄目な…俺を…」

 仰向けに倒れ誰もいない虚空に手を伸ばす彼を見て胸が痛んだが、彼の思いまでは汲み取れない。ただ最後の時を人として迎えられることを祈るばかりだ。死霊の草原が消滅したのち臨魔状態を解く。古川は未だ苦しみながら虚空に手を伸ばしていたので私は遠目から手を組んで神に祈った。

「どうか…死後の世界があるのなら、彼をお救い下さい。」

 古川の手が微かな音を立てて倒れると今まで感じていたNOTの気配が完全に途絶えた。これで今回の初任務は無事成功したと言っていいが、後味が悪く自分の中でも気持ちの整理が上手くいかない。体育館に転がる死体は三つ。私がNOTを倒すまでに犠牲にした人の数。

「ヴィルマ君。」

「……教官」

 神戸教官は動けない私の元までやって来て、組んだ状態で固着してしまった手を優しく解いてくれた。手を力なく下ろすと教官の胸に倒れ込む。蓄積した疲労感と自分の志を達せなかった悔しさ、責任感が重く圧し掛かる。

「……重いかい?」

「とても…重いです。」

 今回は三人の犠牲で済んだ。しかし、今度は何人になるか。たまたま人の居ない深夜、人が居ない休日の学校という環境だった。

 それに倒すべき相手は否定存在のNOTだというのに、事実上人間と戦っているに等しい。化け物相手なら倒すのに躊躇いは無い。寧ろ死んでくれと言って倒すだろう。だが、今回の古川は人間の皮を被ったままNOTとして戦った。彼は自分が異形の存在であることを自覚していたのだろうか?人の感情が前面に出てきてとても戦えない。NOTに憑かれている彼らでさえ、私は守るべき対象として見てしまう。十三委員会の理念からも外れ、養成施設でも再三言われてきた。

(人助けは出来ない。我々は正義の味方じゃない)

 今になって自覚する己の未熟さ。誰一人として助けられていない。NOT伝染者は勿論、一般人の色芳彩香ちゃんも助けられなかった。私は調子いい事ばかり言う餓鬼だ。神戸教官が言った世界を救うなんて夢のまた夢。

 私は教官の胸にしがみついて泣いた。今までの感情を吐露しながら、涙が枯れるまで泣き尽くした。教官は私の頭を撫で、不安を少しずつ溶かしてくれた。


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