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7. 痣を持つ同士

「母様には寿命がきたんだ」

「じゅみょう…」

「そう。あれは、私にどうにかなるものじゃなかった」

「じゃあどうなるの?」

「君の母様は、この世界から消える」

「きえる、…やだ」

「もう私には手の尽くしようがない」

「でもお兄さんは母様をよくしてくれるって言った」

「私がいなかったら、母様はどんどん悪くなる」

「よくしてくれないの?」

「悪くしないがよくしない、なんだよ」


自分でも難しいことを言っている自覚はある。

今はわからなくていい。


「なんで!」


ツムギの小さな手がミナトの上着をつかんだ。

人間から離れて育てられた瞳は、純粋で貴重だ。

だが、いつまでもそのままではいられない。

その純粋さは、いつか世界を(ほろ)ぼす。

ミナトは静かにツムギの顔に手を()えた。


「ツムギ、忘れたらいけないのは」


右手に感じる、同族の証。


「君は私と同じということ」

「人間だから?妖怪じゃないから?それがなに?」

「違う」


右手でツムギのこめかみにある(あざ)をなぞる。

ツムギが忌み子として捨てられた理由。

本当は忌み子ではない。


「君は私と同じ、妖怪に干渉できる者。この痣はその証だ」

「かん、しょう」

「そう。君の母様はとてもえらいから、君を私みたいな送り屋に渡すまでがんばって育ててた。自分の体が限界になりながら」

「かあさま……」

「私の仕事は」


左手でミナトは自分の首元をさらす。

そこにはツムギと同様に、いびつな痣があり、その奥に、送り屋の『核』が埋め込まれている。


「君の母様みたいな、寿命の近い妖怪を周りに影響しないように静かに(とむら)うことだ。大きな、とくに長生きした妖怪が消える時は周囲に大きな影響が及ぶことがある。それを防ぐんだ」

「…」


ツムギはミナトの痣を凝視(ぎょうし)していた。

その痣が自分と同じ、とわかったのだろう。


「協力、してくれるね」


ツムギは立ち上がり周りに目を向ける。

何かを悟ったように、山を見渡す。


「もしかして」


山全体にはあの洞窟と同じ、重い空気が立ちこめている。

このままあの『狐』が穢れに飲み込まれると、木々は枯れ、水は(にご)り、動物たちは妖怪化するか命を失う。

それが災いとなって、ここ一帯を飲み込むだろう。


「この山の調子がおかしいのは」

「…」

「母様のせい?」

「私が君の母様を弔うとき、この山も浄化できる」

「…わかった」


多分、なにもわかってない。

でもそれでいいとミナトは思った。


「母様に最後の挨拶(あいさつ)をするのは、早いほうがいい」

「うん」


手元の肉を干し終わる。

ミナトが差し出した手をツムギがつかむ。

二人で、重い空気を生み出す洞窟へと向かった。

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