6. 干し肉作り
「あ、お兄さん」
「ツムギさん……」
母のお使いを追えたのだろう。
手には小動物の死体をいくつか手にしたツムギが洞窟の前に立っていた。
「母様は?」
「話を聞いて、少し楽になるようにしてきた。それよりも話をしよう。母様の話。干し肉作りながらでもさ」
「う、ん」
ツムギはちらり、と洞窟の奥を見るも、何かを感じたのだろう。
素直に、干し肉を作るための場所にミナトを案内し、その場で手慣れた手つきで動物を捌き始めた。
「ほう、きれいだな」
「母様が教えてくれたんだ。わたしは手先が器用だから筋がいいって」
見上げれば、屋根の下にいくつか肉が干されていた。
塩をまぶされ、風の影響もあり、穢れはついてない。
場所も、作り方も、この日のために準備されている。
「母様はずっとあの洞窟に住んでる?」
「うん。わたしもあそこにすんでたよ。でも、いつかは独り立ちしないといけないから、って最近は別の住処を探してるところ」
「まだ見つかってないの?」
「うん。いいところなくて…」
多分、最初からこの山にはあの洞窟以上にいい場所はない。
作業をするツムギの横顔を盗み見る。
――こめかみに『あれ』がある。
しかし、長い前髪と横髪でこめかみが見えることはない。
間違ってほかの人間に会ったときに隠すためだろう。
さて、何から話そうか。
「で、母様はどうなの?」
「そうだね」
黙っていると、ツムギからそう尋ねてくる。
やはりあの狐を育て親として愛情が育っている。
人間はそういうものだ。種族関係なく、恩は忘れない。
あの『狐』め、と
「君の母様はずいぶんと昔から生きてるみたいだ」
「うん。だから、なんでも知ってるんだ!」
「何でも、知りすぎてるんだと思う」
人間とはどんな生き物か、妖怪とはどんな生き物か、自然とは、何か。
ミナトも知らないことを多く知り、多く理解し、多くを諦めてしまっている。
「それは悪いことなの?」
「私たち人間には悪いことではない。でも、君の母様は、違うね」
「それが関係あるの?」
「ああ」
ツムギを育てたから穢れた。
そんなことはいえない。
誰も望まない。




