10. 送り屋 ツムギ
――十五年後。
「おいみろよ、あれ」
茶屋で男二人が一人を見てこそこそとささやく。
「女が一人で旅してるぜ」
「どこにいくんだろうな」
その人はきれいな横顔で空をみている。
時折、隣に置くお茶に手を伸ばし、口に含む。
その所作に男達は釘付けだ。
「声かけてみっか?」
「あんなべっぴんさんが一人じゃぁ旅も不安だろ。俺達がついてやろうぜ」
にやけた口元を隠すことなく、男達は近づいた。
「なあ嬢ちゃん、どこまでいくんだ?」
「俺達が案内してやるよ」
空を見ていた瞳がゆっくりと男達を見上げる。
薄く化粧が施された頬、紅が塗られた口元がつややかに微笑んだ。
「そうですねぇ」
違和感のある声色と、喉元に喉仏があることに、気付くのは同時だった。
「このあたりで、カラスの大量死を聞いたんですが、どのあたりか知ってます?」
「お、男かよ!」
「ひえええ」
男達が尻尾巻いて逃げていくのを笑顔で手を振る。
「簡単に女に声をかけるもんじゃないですよ~」
「ツムギちゃん、そうやってまた遊んで」
「人って、本当に愉快ですよね」
一連のやりとりをみていたのだろう。団子を持ってきた店員がため息をつく。
「変なところ、師匠に似なくていいと思うんだけど?」
「師匠も師匠なら、弟子も弟子ですよねぇ」
そう言って笑う姿は、本当の女性なら引く手あまただろうに。
店員はもう見なくなった男装の女を思い出しつつ、彼に団子と一枚の紙を渡す。
「はい。これが情報」
「ありがとう」
紙の中身を確認したツムギは満足そうに頷き立ち上がった。
「気をつけて、送り屋 ツムギさん」




