第1章『バスタード ― 錆びついた過去の炎 ―』
未来、人類はすべてを変えるエネルギー源を見つけた。
その可能性は計り知れず、環境問題すら克服できるようになった。
誰もその起源を問わず、誰もその代償を考えなかった。
――こうして、世界は滅びの未来へと導かれていった。
2027年6月5日、パロ・サント市。
市の北部にあるCROWSの施設が突如として震え始めた。
その門の前に、フードを被った少女が無言で立っていた。
フードに隠れた顔の片側からは、意味深な笑みが浮かんでいる。
そして、何の前触れもなく――
ドンッ!
爆発が施設を一瞬で吹き飛ばした。
地下のコントロールルームでは警報が鳴り響いた。
「緊急事態です! 北施設が完全に破壊されました!」
金属的な声が混乱の中に響く。
制御室内の全員が緊張を走らせた。
スクリーンには、煙と瓦礫の中にぽつんと立つ人影。
カメラがその姿を捉える――また、彼女だ。
エレガントな佇まいと冷たい眼差しの女性。
CROWSの創設者であり、作戦指揮官でもあるその人物は、唇を引き締めたまま映像を見つめていた。
「……また、あの子か。」
「“バスタード”と呼ばれる対象を確認しました」
反抗的な雰囲気を持つ若い女性が背後から報告した。
指揮官は憤りに満ちて立ち上がる。
「逃がすな!」
高層ビルの屋上を、少女の姿が軽やかに駆けていく。
「ふぅ…ちょっとやりすぎたかな」
くすくす笑いながらつぶやいた。
「でも……まだ“あれ”の手がかりは――」
そのとき、ヘリの音が空を裂く。
彼女が振り返ると、CROWSの兵士たちが包囲していた。
「やばっ!」
「目標を発見! 包囲完了!」
高台から三人の少女が現れる。
「ようやく顔合わせだな……“バスタード”」
「そのあだ名、誰が考えたのよ?センス最悪」
少女は見上げ、挑発的に笑う。
空気が張り詰める。
煙幕が広がり、瞬く間に彼女はリーダー格の少女の前に現れ、強烈なキックを放つ。
一人が防御に入り、かろうじて受け止めるが、そのまま後方に吹き飛ばされた。
「速い……!」
満足げな笑みを浮かべる少女。
しかし、その後の一撃でさらに後退させられた。
監視室の指揮官は、目を離すことができなかった。
「あの子……三日間で二つの施設を破壊した。あの容姿、あの力……」
カメラ越しに、少女がこちらを見上げる。その視線には、明らかな挑発があった。
「……間違いない。ずっと探していたのは、あの子。」
戦場に戻る。
少女は興奮を隠せず立ち上がる。
「面白くなってきたじゃん」
一気に敵へと突撃する。
高速の攻防が続く。
「いいねぇ!今度は本気で行くよ!!」
「彼女は……」
モニター越しに女性がつぶやく。
「運命を左右する存在……未来を握る因子……」
煙が漂う中、少女は両手を顔の前で組み、微笑んだ。
「ちゃんと名乗っておこうか。あたしはリリアナ。よろしくね、遊び相手さん」
少女は困惑した表情で見返す。
「えぇぇ? なにそれ?」
目が野獣のように輝く。
リリアナは驚きつつも微笑んでいたが――
少女の体から熱気が放たれる。
「行くよ!」
爆発音と共に、リリアナが吹き飛ぶ。
「こ、これは……人工じゃないの!? “抑制”能力なのか!?」
少女の姿が煙の中から現れ、まるで獣のように突進する。
その時、天から雷が落ちた。
静寂。
リリアナの仲間であり、最初に攻撃された少女が一歩前へ。
「こんな小娘に任せておけるか」
「ジェーン……」
リリアナが顔をしかめる。
「私がやる」
異様な重圧を感じる少女。
「……何かが違う。」
ジェーンが雷のような速さで動き、腹部へ一撃。
少女は膝をつき、息を切らした。
「終わりだ」
ジェーンは顎を上げ、冷たく言い放つ。
「その美しさも、灰の臭いと罪で台無しだ。ここまでだ、バスタード。」
「本当に?」
少女が笑う。
目が獣のように輝き、炎と風が周囲を吹き飛ばす。
炎の翼、獣の体、野性の眼差し。
彼女は変貌する。
――「過去の錆びた炎」――
「これが……真の力か」
ジェーンは静かに言った。
監視室では指揮官が息を呑む。
「フルシー……!」
「ドカーン☆」
ジェーンが指を鳴らすと、雷撃が竜に降り注ぐ。
咆哮とともに苦しみ、力尽きそうになる。
そのとき、脚が地面に沈む。
「な、何……!?」
最後の一人が氷の視線で近づく。
「動くな」
「体が……動かない!? 体温が下がっていく……!」
バスタードが地に伏す。
「……何もできなかった」
ジェーンが近づき、ささやく。
「これが、私たちとの格の違いだ。」
動こうとした瞬間、電撃が体を走る。
「無駄よ。拘束して。」
「……いや」
少女がつぶやく。
閃光――記憶。
仲間、家族、笑顔……守るべきもの。
彼女の内側から火炎が爆ぜる。
バスタードが咆哮し、再び飛翔する!
「撃て!」
銃弾が空を切り、
少女は撃たれ――空へ消えていった。
――姿を消して。
数時間後、パロ・サント市内の学園。
放課後、生徒たちが校庭を歩く中。
空を見上げる青髪の少年。
その時だった。
空から隕石のように落ちてくる人影――燃え上がる炎に包まれて。
「人……!?」
その出会いが、少年の運命を変えることになるとは、
この時はまだ知らなかった――
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次回もお楽しみに!




