レンジャー達がやる気も救う気もないのにふざけた茶番をするばかりでやってられるかと叫ぶ
辞めたい、激しく辞めたい。そう心の中で繰り返し唱えるのは。
とある秘密組織(非公式とも言う)の下っ端の助手こと、マリアス。激しく、今の仕事に就いたことを後悔している、やや一般人手前である。
世間では、裏の仕事に足を入れている等と囁かれても、完璧に反論出来ない事をしていた。それは──。
「皆!行くわよ!」
その言葉を皮切りに残りの少女達が応える。シュババッと、華麗に飛んで変身する動作と勝手に変わる便利な服。これ裸じゃね?と言われても、完璧に否定出来ないお約束。
そう、彼女達は戦う魔法少女。相棒はいない。
宇宙からの使者とやらも、使命を与えられて空からやってくる可愛いが特徴の生物もいないのだ。何故なら、変身の服を作ったのも魔法に近いエネルギーを作ったのも、地球人だから。
皆から博士と呼ばれ、いつも白衣を着ているシシリディスという男性だ。おじいさんではなく、青年以上大人未満の若者だ。シシリディスは、まだまだ若いというのに落ち着きある爽やかな人。
魔法のステッキや変身服を作った、天才でもある。
悪の組織の存在を知った、秘密組織(魔法少女連合とも言うらしい)が先鋭として施設(所謂秘密基地のようなもの)に責任者として送り込んできた、出来る人。そんなシシリディスと共に、白衣に身を包むマリアスは、働かないがモットー(それを世間ではアレだとさ)の少女以上ギリギリ未満だ。
何がギリギリなのかは、そっとしておいて欲しい。
「おお、まーたお前等かぁ~」
登場したのは悪の組織の手先。何故か仮面を被っている。
「出たわね!仮面のアテニス!」
一人の魔法少女が叫ぶ。
「出るだろ。おれらは悪行が仕事なんだからな」
「シャイド、ガラウリも居るわ!」
またまた、一人の少女が赤い頭とゴテゴテした衣装を纏う悪の手先を見る。
「シャイド。可哀想だから真実を突きつけてやるな」
「なんてこと!マッドハンティングまで居るわよ!」
シャイドこと、マッドハンティングという三人目も現れた。三人が出終わったところで、魔法少女の一人が残念な声音でぼそり、と言う。
「ハーブンは?」
何だって?
この子は、フラグを立てたがるようだ。呆れる。
悪の手先の幹部は四人居て、魔法少女側も四人だ。何なのだこの子は、敵を増やしたいのか馬鹿なのか。どちらにしても、頭の馬鹿さには苛立つ。
「ここだ。カツ丼を食べてて、少し遅れた」
(地球の侵略やろうとしてるけど、実は地球人の食文化気に入ってるんだ……)
確かに、彼の特徴の一つであるマスカレードマスクの口元等辺に、米粒が付着している。
「でたわね!ハーブン!……米粒くらいは取ってからこれば?」
ちゃっかり言うところが、彼女らしい。マリアスなら、毎回頭痛の種を植え付けている敵方に、そんな親切はしないだろう。戦いが終わった後に、気付いて恥ずかしさにのた打ち回れば良いと教えない。
「ああ……気付かなかった。お前は優しいな」
「別に……普通のことよ」
始まった。茶番劇が、始まったらしい。
「ガラウリ!そこから降りて来なさい!」
「なんでおれが、んな事しなきゃいけねぇんだよ!このクソアマ!」
「何ですって!?よくも!このクソ野郎!」
喧嘩が始まった。
「おい、その貧相な体を見せるな」
「な!あんたの方がひょろっとしてて弱そうな癖に!」
「は、ガキに言われても痛くも痒くもねぇ」
こっちはこっちで、鬱陶しい。
「なぁ!おれと悪の組織やらねーか?」
「えっ!……えっと……そのぉ」
コラコラ、何こっちを勧誘してるんだ。魔法少女も迷うな。無垢な瞳で、悪の手先とか悪質な詐欺じゃん。何とか、収拾に取り掛かろうとしても手遅れ。こんな場面を、もう何回繰り返しただろうか。
この仕事を辞めたいのは幻滅したからと、付き合ってられないという、馬鹿馬鹿しさのせいだ。やってられるかと、白衣を徐に脱ぐ。
「シシリディス博士、私、姪の迎えに行くので失礼させていただきます」
シシリディス博士が、コクリと頷くのを確認すると踵を返して、出口に向かう。しかし、男によって塞がれる。帰るのに邪魔しようなんて何様だ。やろうってのか?
「帰んのか」
何故、聞かれる。何故、答えないといけないんだ?と溜め息をつきたくなった。
「待て」
いや、待たない。
「下っ端!マッドハンティングを捕まえるチャンスよ」
(誰が下っ端だ)
魔法少女に言われると、腹が煮える思いだ。シシリディスにだって、名前で呼ばれるのに、この小娘は人を苛つかせるのが最高に上手い。
どこにでもありそうな、触手でも仕掛けて服でも溶かしてやりたくなる。つまらない仕事をしているな、と最近特に思うんだ。
上空にて、ガラウリと魔法少女が戦っている。
──ドウン!
いや、喧嘩してる。
「なんであんたは建物破壊するの!?バカなの?」
「お前だけにゃ言われたくねーっ」
「それは反論出来ないからでしょうが」
ケンカップルみたいな会話で、聞いているのが苦痛。それに、魔法少女の方が多目に器物を破壊している。的確に狙うものの、相手が避けるものの、一方的な攻撃な為に。
束縛魔法にしてくれないか。請求額が恐ろしい。内心突っ込みまくる。
マリアスは呆れを滲ませる。早く、迎えにいかなきゃ行けない。でないと、寂しがるし。
そそくさと抜ける。後ろから、待てと言っているだろう、なんて敵側の声が聞こえてくるが知るものか。侵略者に傾ける耳はない。
その後、組織のトイレに行こうとしたら魔法少女達の声が聞こえて、隠れるように身を引く。
「ちょっと。あなたがあの人に話しかけ過ぎて怒られたじゃない」
「わたしのせいにしないでよ」
「怒られるのはまだいい方でしょ」
「そうそう。クビになったらどうするの?」
どうやら、あの後上司から怒鳴られるかお叱りを受けたようだ。
(当たり前だっつの)
「クビにされたらもう会えなくなるんだから、気をつけてよね!」
(お見合い感覚だったの?)
薄々感じてはいたけどもさぁ。
シシリディスのところに戻るとその前にボソボソ聞こえて、反射的に隠れる。
「皆、もう少し改良をするから静かにしておいてくれよ」
「おう」
「わーってる」
どこかで聞いた声。例えばさっき戦っていた組織の。シシリディスは反逆者かスパイだったか〜。
告発とか証明とかエネルギーたっぷり、時間もたっぷり使う上に。己よりも、長年貢献している人より信用される可能性の低さに、天秤がカタリと寄る。
見なかったことにしよう。そうしよう。
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