延々と……
「暑いなー、もう午前になったのに全然涼しくならないな」
高校の不良仲間の洋が愚痴る。
夏休みに入っているのに赤点だらけだった試験の所為で補習授業を受けに学校に来ていたが、勉強なんてクソ喰らえと補習授業が終わったあと自宅がある駅とは逆の方向にある繁華街のゲーセンで遊んでたら終電を逃し、仕方無く俺と洋と鷹一の3人は自宅の方向に向けて歩いていた。
「なぁ、なぁ、どうせ暑いんだから涼しくなる事やらないか?」
鷹一が何か言い始める。
「涼しくなる事って? 何?」
「もう直ぐ学校だろ、だからさ、学校で肝試ししようぜ」
「学校で肝試し? あんななんにも無いところで肝試ししても、涼しくなんてなんねーだろ」
俺が反論すると鷹一はこう言って来た。
「だからさ、丑三つ時に教室でチャーリーゲームをやってみようせ」
「それは面白いかも」
洋が鷹一に同調したんで俺も賛成する。
丑三つ時に3階の教室の鷹一の机の上でチャーリーゲームを始めた。
始めた直後、上側の鉛筆がクルクルと回り始める。
俺と洋の顔が青ざめたのを見て鷹一が笑い始めた。
「ハハハ、引っ掛かった」
「「え? どう言う事だ?」」
俺たちの問いかけに鷹一が机の中から磁石を取り出し見せて来る。
「鉛筆にも磁石を仕込んであるから回ったんだよ」
「お前、俺たちを引っ掛ける為にこんな物用意してたのか?」
「イヤ、元々は晟を引っ掛けて遊ぼうと思ってさ」
晟とは俺たちがよく虐めているヘタレ。
「あぁアイツにやったら泣き出すんじゃねーか」
「「「ハハハハハ」」」
そう、此処までは鷹一の悪戯だと思ってた、違ったのに。
「そんじゃ帰るか?」
「あ、その前に俺トイレ行ってくる」
洋がそう言って教室から出て行った。
俺も行っとくかと洋の後に続いて教室を出ようして一旦立ち止まって振り返り、鷹一に声を掛ける。
「連れションしないか?」
「んー俺はイイや、お前らが戻って来るまで一服してる」
廊下に出ると洋が階段を降りようとしてるのが見えた。
「オーイ、何処に行くんだ?」
「どうせだから階下の先公共のトイレを使おうと思ってさ」
トイレで用を足し出てきて「え?」と声を出す。
廊下の長さは端から端まで精々7〜80メートル程しか無い筈なのに、何方を向いても廊下が何処までも何処までも際限無く続いていたからだ。
トイレの脇にある階段の下の方から洋の声か聞こえて来た。
「なんだよ此の階段、昇っても昇っても全然上の階に行けねーじゃねーか、どうなってるんだ?」
教室からも鷹一の声が響く。
「開かねー! どうなってんだ? 窓も戸も開かねー、オーイ! 洋! 純! 聞こえたら教室の戸を開けてくれー!」
教室の方に向けて走る、走るんだけど教室に全然辿り着けない。
トイレから教室まで2〜30メートルしか離れていないのに。
俺たち3人はあのチャーリーゲームの所為で、異次元の世界に飛ばされたのかも知れない。
窓の外が明るくなって来ても俺たちは廊下から階段から教室から出られず、延々と出口を求めて歩き続けていた。