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VRMMOで現地の人やってます  作者: ゆうき けい


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9/11

9 ギルド長s

「バロネス。何でまた、絡まれてるんですか?」

呆れた声をかけて来たのは、傭兵ギルド長のバーン。2m越えの長身と150㎏越えの体重の堂々とした体躯は濃い茶色の体毛に覆われ、簡易な皮の胸当てと腰当をつけている熊獣人の男性だ。以前からクレハに対し当たりが強いが、それは、彼女がバトラーを執事として雇っているからだ。


バーンは傭兵ギルド長になる前は、ある傭兵団に所属していた。孤児院を出て直ぐに冒険者になったが、生意気だと暴行を受け、置き去りにされた所を助けたのが、その傭兵団に所属していたバトラーだった。

その当時から体格に恵まれていたバーンは、確かに生意気で冒険者ギルドのルールを守らず、力こそ正義、とばかりに、好き勝手をやっていた。身から出た錆とは言え、殴る蹴るの暴行の末、動けなくなっていたバーンは、このまま死ぬのかと覚悟した程だ。

そんなバーンを拾って、手当てをし、回復するまで世話をしたのが、当時傭兵団の参謀を務めていたバトラーで、バーンはその恩に報いるために、改心し、冒険者から傭兵に転身したのだった。

バーンのリンチと放置した事件は、やがて冒険者ギルド長の耳に入ったが、バーンはもうその頃にはすっかり冒険者に未練はなく、バトラーの後を喜んでついて回っていた。


と、まあ、NPCにしては、役職持ちなだけあり、結構、詳細な過去話を持っているバーンさんであるが、ガイド猫に言わせると、定番、鉄板、お約束、なのだ。

「不幸な育ちをした粗暴な若者が命の恩人に感謝し、懐く」

うん、確かに。


そんな尊敬する先輩であるバトラーが、何処の馬の骨とも知れない女の執事、しかも、重用されている訳でもなく、領地の管理を任され、滅多に会えない、となれば、その境遇をもたらした雇い主に良い気持ちを持たない。自然、クレハを咎める口調になった。

『そんな事言われても。』とクレハは内心で溜息をつく。

これは明らかに向こうの有責だ。クレハは何もしていない。アンの行為が過剰防衛と言えなくもないが、相手は旅人だ。アンが警戒するのも仕方ない。


「例え、バロネスを貴族とは知らなくとも、見ず知らずの相手を指差し、その持ち物を奪おうとする段階で、犯罪では?」

冷ややかに地面に転がる旅人を見下ろして、断じたのは商人ギルド長のリコ。

「旅人はゲートをくぐる前に、常識を身に付けるべきですね。」

ほっそりとした体に、上品なスーツドレスを着こなし、如何にも、出来る女、と言った風情だ。

「冒険者ギルド長のロットに、ギルドに所属させるなら、こちらの常識をちゃんと教え込るよう文句を言わなきゃいけないわね。」


常識が無いと断言された旅人の少女は、反省するどころか、ますます、怒り狂った。

「何よ、このくそ婆!大体このゲーム、初期装備がしょぼすぎるのよ。課金しないとまともな武器の一つも手に入りやしない。」

これには傭兵ギルド長のバーンも呆れ顔だ。

「おいおい、何言ってるんだ、このお嬢ちゃんは。

街中で旅人に武器持たせる程、俺たちは能天気じゃ無いぜ。旅人の武器の携帯には許可が必要に決まってんだろ。」


そうなのだ。

勿論、NPCである傭兵ギルド長のバーンや執事兼護衛のバトラーやアン、目の前の商人ギルドの警備員も武器の形態は許されてる。

だが、プレーヤーである旅人たちは、基本、街中での武装は許されていない。

まあ、古のRPGでは、木の棒なんかを持ってスライムと戦う、が開始時のプレーヤーの強さだからね。

そう考えれば、おかしなことではない。

けれど、そんなコンピューターゲームの初期も初期の時代を知らないんだろうなあ、この旅人さんは見た目通り、若い世代の様だ。


「なぁ、魔凛(マリン)ちゃん、これはそういうゲームなんだって、何度も説明しただろ。」

一緒にいた旅人男子が、女の子を助け起こして、宥めている。その子は初期装備の上に、しっかり街の外に出るための防具やアイテムを装備していた。


旅人には運営から、初期装備の他に、旅費が幾らか配られていて、それだけあれば、最初の街で装備を整えて、街の外の弱い魔物なら狩ることが出来るようになっている。そうやって、順当に稼いで行けば、次の街に旅立つことが出来る。他にもギルドに所属すれば、ギルドの仲間、所謂NPCと共に行動する事で安全に経験値を稼いだり、共に街を移動する事も可能だ。とまあ、考えれば、色々と手段はあるのだが、この女の子は、最初から”ガンガン行こうぜモード”なのだろうか?


でもまあ。

とクレハは旅人少女を改めて見て、納得する。

少女の着ている服はお腹の部分が剥き出しのセパレートのセーラー服、だった。

『あれ、多分、初期の旅費だけでは購入できませんよ。』

ガイド猫がみゃぁと鳴いて教えてくれる。

どうやって不足分を補ったのかは、今は、考えないでおこう。

一応、このゲームは、現実社会の法律に違反するようなことは出来ない筈だ。うん。


「取り敢えず、バロネスはこちらへ。」

そう言って、商人ギルド長リコがクレハを建物内に誘導する。

「ちょっと待ちなさいよ!」

後でギャーギャー喚く声を無視して、クレハ達3人とリコは商人ギルド内に入った。傭兵ギルド長のバーンは、バトラーの視線を受けて、この場の対応を継続するらしい。


応接室でお茶を供され、ほっと一息をつく。

「本日は、わざわざお越しいただいたのに、ご迷惑をお掛けし、申し訳ございません。」

深々と謝罪され、クレハは慌てた。

「いえ、全然、ギルド長の責任ではありませんよ。むしろ、私のこの格好が、旅人たちの興味を惹くとわかったので有意義でした。次からは街に来る時には注意します。」

「そう言って頂けるのはありがたいのですが、私としましては、以前からバロネスの故郷の民族衣装に非常に興味がありまして、バロネスのご許可を頂けたなら、同様の衣装を製作・販売したいと思っていたのです。」

リコギルド長はそこで一息ついて、クレハの様子を窺った。特に不快を示してはいないと判断し、続ける。

「如何でしょう、許可を頂けますか?」


『これ、クエスト?』

膝の上のガイド猫に問いかける。

『クレハ様は現地の人なので、基本、受注クエストは発生しませんよ。単純に現地人としての自然なお願い、でしょう。受けるか受けないかは、今後の商人ギルドとの関係を考えて決めたらよいと思いますよ。』

ふにゃぁ、とあくびの様な返事をして丸まる子猫に、無責任な返事とは裏腹に、顔はにやけてしまう。


「確かに、この衣装はちょっと変わっていると思うけど。売りに出すほど、需要があるのですか?」

しっかりとデレているところを見られてしまい、こほんと空咳を一つ。

そうして尋ねた問いに、商人ギルド長は、満面の笑みで答えた。

「勿論です。私も着たいぐらいです。バロネスは一枚の衣装でも裾丈を変えたり、羽織り方を変えたりで何通りにも着こなしていらっしゃるでしょう。一着でも工夫次第で様々な印象を与える。素晴らしい素材です!勿論、バロネスがお召しになっていらっしゃるものとは材質は比べ物にならないでしょうが、それでも皺にならず、軽い生地の目星はついています。」

って、これはクレハがOKを出せば、直ぐに生産できるよう準備万端かい?


「えっと。そんなに言われるなら構いませんよ。別に私が考えた訳でも無いですし。どうせなら、小物も一緒にどうですか?帯とか、帯締めとか、半襟とかも色々、組み合わせで楽しいですよ。柄で季節感を出すのもありですし。」

クレハの言葉にリコは飛びついた。

「是非!」


商人ギルドでの当初のアンの予定をすっかり忘れてしまいそうになり、慌ててアンを見る。

瓶底眼鏡にそばかすのゴスロリメイドは、外での立ち回りを欠片も見せず、ニコリと微笑んでそっと持っていたバスケットを差し出した。

「新しいお菓子とそのレシピでございます。」

そう、転生物あるあるのこの世界にはない食べ物の提案だった。




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