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VRMMOで現地の人やってます  作者: ゆうき けい


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26/26

26 夏休みイベント 

前話に引き続き、予約投稿を中止して書き直ししていたら、そのまま、投稿されてしまいました。

誤字、脱字ありましたら、すみません。

ちょっと、説明がうるさいかも。

そして、8月になり、EEC16夏休みイベントの詳細が公表された。


アウストリ(東)、ヴェストリ(西)、ノルドリ(北)、スドリ(南)。

地底の根の国にある四つの迷宮を探索し、その最奥に隠されているドワーフの宝物を手に入れよう。

 ミョルニル: 投擲すれば絶対に外れない、戻ってくるハンマー。

 グングニル : 決して的を外さない槍。

 ドラウプニル : 黄金の腕輪。9夜ごとに同じ重さの腕輪を8つ生み出す。

 スキーズブラズニル : 畳めばポケットに入るほど小さくなる船。


どの迷宮を探索するかは、旅人次第。途中で変更も可。勿論、複数の迷宮を探索しても問題なし。出現する宝物は、ランダム。

初回踏破者にはオリジナルが、それ以外の踏破者には廉価版が褒賞として与えられる。更に、一定数を越える踏破者が出た場合は、その人数に応じて、根の国のゲート解放数が増える特典付き。


迷宮探索はソロでも複数人のパーティでもOKだが、報酬はゴール地点に到達した人数に拘わらず、一つのみ。迷宮内には高密度の魔力が満ちており、長時間の暴露で魔物化の危険がある為、滞在時間は一日6時間が上限。それ以上は強制転移で地上に戻され、その日の探索は無効となる。迷宮内限定のセーブポイントを設置できる鍵を、迷宮の入口で各自に配布。探索終了時に、迷宮の壁に鍵を差し込めば、そこがセーブポイントになる仕様。現れた扉は迷宮の入口に繋がっており、入口で、その日に獲得したアイテムの換金が可能。探索者間の協力・妨害はOK。但し、生命維持に支障が出るレベルでの戦闘を認めた時は、その時点で地上に戻る。過失・事故でも同様。イベント期間は8月8日から二週間。時間の流れは現実と同期。迷宮以外の根の国の探索は自己責任。そして、根の国で死亡判定された場合、復活は不可能。二度とそのアカウントではEEC16にログイン出来ない。

以上の内容を理解した上で、探索に挑む者は、各自、所属ギルドに申し込む事。なお、ギルドに所属していない旅人に、迷宮探索への参加の権利は与えられない。



「うん、やっぱり、鬼畜使用だ」

紅葉は公式ホームページで、イベント内容を確認する。

最後の一文、アカウント消失につながる根の国の迷宮以外での死亡判定については、早速、物議を醸しだしている。

運営の言い分としては、根の国の迷宮以外の部分は、今後の展開に関わって来る秘匿性の高い情報が含まれている為、現段階で、ユーザーに知られる訳にはいかない、と言うのだ。

そして、例によって、過激スポンサーのセリフ。

「死ななきゃいいんだから、行きたければ行けば?」も、報道された。


『本当に我儘だなあ、星王』


クレハは、EEC16にログインした。

今日はゲーム内でリ・リーと会う予定だ。

待ち合わせ場所は、星都の学園内の食堂。星都にはセイもいるのであまり行きたくは無いが、リ・リーは元より、ロメオもビッグ・Mも学生なので、そこが一番良いだろう、とクレハが提案した。

以前、学園で講演をした事もあり、天空島調査の関係者だった経歴もあって、許可は簡単に降りた(とクレハは思っている)。


意図せず、クレハが成長を促してしまった木々は、今日も元気だ。因みにこの一件が無ければ、クレハの星都への立ち入り許可は降りていない。今や、星力の満ちた清浄なる森として、一部の熱狂的な信者を持つクレハだった。

ちょっと遠い目をしながら、その当時を思い出し、きっかけとなった少年少女たちとテーブルを囲む。

放課後の学園の食堂は、人気もまばらで、窓際の角に陣取った彼女らの他は、2,3組が、飲み物片手に楽しそうにおしゃべりをしていた。


「こんにちは、先生」「ご無沙汰で~す」

「もう!二人とも、バロネスに失礼」

若いって良いわねー、と微笑ましく思いながら、クレハもひらひらと手を振った。

「はい、こんにちは。ロメオ君もビッグ・Mちゃんも、元気してた?学生生活は楽しい?」

「アハハ、先生、近所のおばさんみたい。もち、私は元気だよ」


ビッグ・Mちゃんは、ちょっとぽっちゃりした体型の金髪碧眼の風魔法使いの女の子だ。現実では病気の為、思い切り体を動かしたり出来ない分、この世界ではっちゃけて、色々やらかしてしまい、学園クエストに強制参加させられている。

ロメオ君はリ・リーの親友だ。小学校入学直後、交通事故にあい、歩けなくなった。EEC16のロメオは自分の足で歩いて、走って、飛び跳ねる事が出来た。どこにでも行ける自由を履き違えて、ゲーム世界に入り浸り、現実をおろそかにした。学園クエストで、他者との関わりを学んでいる最中だ。

リ・リーは、男子になれない女の子だ。性同一性障害の診断を下すには早すぎるが、自分の気持ちと世間の見方の乖離に悩んでいる。ル・ルーの愛情とテイマーの能力が、今の彼女の自己肯定感を育てる手助けになっている。


この学園に通う子供たちは何かしらのトラブルを抱えている。

『それでも、今は、こうして笑顔を見せている』

だから、その笑顔を守りたいと思うクレハだった。

「結論から、言うね。私は、リ・リーちゃんたちと一緒に迷宮探索にはいけないの」

やっぱり、とリ・リーの表情が曇る。

「ごめんね、誘ってくれてありがとう。嬉しかった。私もギルドを通じて公示された情報を調べたけど、予想以上に迷宮内は高密度の魔力が観測されてるみたい。だから、私達、この世界の人間が迷宮探索を行うのは、厳しいと思うの」

「それって、」

「エターナル・エデンに生まれた命は星力を持っている。そして、星力と魔力は相反する関係。魔力に満ちた場所では、私達を構成する星力は失われてしまう。その程度によっては、死んでしまう事もあるわ」


「ル・ルー姉のエンチャントした魔力耐性を付与したアイテムを身に付けていてもだめですか?」

「リ・リー!」

そう言ってロメオはテーブルを叩いた。

「お前、先生の命が危ないかもってわかってて、誘ったのか?」

その声には非難が混じっていた。

「だって、だって、バロネスは転生者かも、って思ってたし、僕たちだけじゃ不安で」

「何だよそれ。不安はわかるけど、先生はお前の恩人なんだろう?その人を危険に晒すのかよ」

う、とリ・リーは詰まった。

「バロネス。ごめんなさい。僕、あれから、ル・ルー姉に魔力と星力の事とか教わって、やっぱり無理かなって思ったんですけど、会いに来てくれたから、勝手に期待しちゃって。ル・ルー姉のエンチャントアイテムは絶対だから、大丈夫って、思い込んでました。でも、それをバロネスの命で試す、って事なんですよね。すみませんでした」

深々と謝罪するリ・リーと一緒に、ロメオもビッグ・Mも頭を下げた。


いい友達だなあ、とクレハはほっこりした。

彼らにとって、クレハはNPCだ。その知識を利用して、その結果、クレハが死んだとして、それはゲーム内のキャラの話、として、気にする必要がない、と考えてもおかしくはないのだ。

真摯に謝罪してくれる三人に、クレハは微笑んだ。

「ありがとう、本当に三人とも良い子だね。だから」

そう言って、クレハは一枚の紙を取り出した。

「ヴェストリ鉱山の地図。公表された迷宮の場所はかつての鉱山の場所と一致しているの。だから、廃鉱山が魔力汚染で迷宮化したのだと思う。この鉱山地図は役に立つかもしれないから、もらってくれる?」

それは、過去のEECシリーズで舞台になった地底の地図を参考に鉱山の坑道を立体的に書き起こしたものだ。


「え?そんな凄い地図もらって良いんですか?」

「あくまで参考程度にしてね。大きな坑道は多分、そんなに変わっていないと思うけど、水没や崩落なんかがあったり、脇道が増えたりしてるかもとは思うし、トラップの場所とかはわからないから」

「凄い!これがあれば、最短で迷宮の最奥に行けます!」

「あと、これ」

もう一枚には、考えられるトラップを並べてある。 落とし穴、矢のトラップ、押し潰してくる壁、密室の毒ガス、宝箱に仕掛けられた爆弾、落ちてくる岩or天井、隠し扉、等々。

あの運営の性根の悪さから、もっと悪辣な罠が仕掛けられている可能性はあるが、これまでのシリーズを通しての傾向と対策を作ってみた。


「ありがとうございます。頑張ります。」


リ・リーたちと笑顔で別れることが出来て、クレハはホッとした。

地図とトラップ対策が役に立つかは、わからない。けれど、彼女たちの夏休みイベントが、楽しいものになれば良い、そう、心の底から願った。



8月21日

地下の国・根の国の迷宮探索イベントは終了した。

その日、イベントに参加していた旅人から、緊急連絡が入った。


根の国の迷宮のモンスタールームが開いた。

迷宮内は魔物が溢れ、地下世界にも溢れだしている。


それは、宝物が奪われた事への迷宮の報復なのか。






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