7 お茶ポーションの威力
「ポーション飲んだでしょ」
「え?あれはお茶じゃないんですか?」
「あれは、私の自家製ポーションなのよ割と美味しかったでしょ?」
「割とじゃなくて、普通に美味しいお茶でしたよ!」
「飲みやすくするのに、ものすごく頑張ったのよ〜」
「しかも、ダンジョン蜂の毒素が跡形もなくなったし」
「蜂刺されって、痕残るの?」
「中級ポーションでもダルさとか抜けないし、刺された痕はしばらく残りますよ。有り難いことにアナフィラキシーショックは起こらないんですけど。」
「へぇ~、知らなかったわ。治ってよかったわね」
普段このダンジョンでは見かけたことの無い男の子は、高橋くんと言って、ダイバーになって5年の中級者だった。
今日は、6階(このダンジョンの最下層)のトカゲから採れる素材を目的に来ていたらしい。
「そんなことより、ポーション!ポーションですよ!」
高橋くんは、私の肩を掴んで、
「あのポーション、分けてもらえませんか。すごく飲みやすいんですけど、どうやって手に入れたんですか。」と矢継ぎ早に言った。
「さっきも言ったけど自分で作ったのよ。作り方なんてダイバー講習のテキストに載ってるでしょ」
「でも、あれはものすごくマズいでしょう?自分で作るなんて、お金のない1年目くらいじゃないですか」
高橋くんによると、ドロップ品の初級ポーションはあのテキストに載ってる通りに作るのと、似たりよったりなんだが、中級ポーションとなると、はるかに飲みやすくなるそうだ。
だから、初心者ダイバーたちはここで経験値を稼いでランクアップし魔法を使えるようになると、他のダンジョンで中級ポーションをドロップするゴブリンとかダンジョン狼とかを狙うようになるらしい。
このダンジョンにひと気がないのは、そういう理由だったのか。
ここでの稼ぎで満足してたおばちゃんダイバーには、全く無縁の情報だったよ。
「ポーションねぇ、あれ結構手間かかってるし日持ちしないからねぇ。」
「もちろん、適正価格を払いますから、お願いします」
手づくり品なので、何かあっても責任を取れない。
せいぜい家族消費しか考えてなかったので、マジで困る。
さっき高橋くんに使ったのは、あくまでも緊急措置、と言うやつだ。
「中級ポーション、ショップで五千円なんですけど、六千円でどうですか?」
「それって、あのサイズでよね?」
ポーションの瓶はドリンク剤サイズだ。
私が作るポーションは、ペットボトルサイズだが、作ってしまえばせいぜい1日2日しか保たない。元のポーションの茶葉なら一回作ると、毎日600ミリのペットボトルで2本分入れて、半月分くらい。
どうする?私。




