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おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります  作者: きむらきむこ
ポーションメーカー

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 隣の男の子

「隣の部屋の佐藤です。田中DP販売㈱で採取と護衛を主にやってます」ガッチリとダイバーらしい体型の彼は、そう言ってお辞儀した。


「藤田ユキです。半年の出向で田中DP販売㈱にお世話になります。よろしくお願いします」とこちらも慌てて頭を下げた。


 佐藤くんは、まだ若手(23才、ちなみに私と藤田は28才)のダイバーで、今ダンジョン省で講師役をしているダイバーパーティーの紹介で、田中さんの会社に来たらしい。


「ここのアパートは、入ってる人はほぼ田中さんのとこの関係者なんですよ。きっと藤田さんの護衛とかすると思うんで、よろしくお願いします」と、話してくれた。


 そう話している最中にも、笹山さんがアパートの入口にやってきた。こいつも同じアパートか…

「笹山さん、おかえりなさい」「ただいまです」と佐藤くんと笹山さんとのやり取りがあり、佐藤君にだけ頭を下げて2階に上がっていった。こっちは一応会釈してるのに、ムカツク。


「笹山さんとは昨日ご挨拶したんですよ」とニコニコしながら佐藤くんは言った。


 住宅街なので、アパートの周りにはお店がないこと。最寄りのスーパー、コンビニの場所、スーパー銭湯の場所何かを佐藤くんは教えてくれた。うん、助かるわ〜。


「そうは言っても、もちろんアパートにもお風呂あるし、会社にシャワールームもあるし、ご飯も食べさせてもらえるんで、あんまり行くこともないんですけどね」と目を細めて笑いながら佐藤くんは言った。


ズキュン ん?なんでズキュン?急に心拍が上がったような気が…


「藤田さん、大丈夫ですか?お疲れのところ引き止めてすみません。それじゃあ、また明日」と今度は心配そうな顔をした佐藤くんが、手を振って隣の部屋に入っていった。


 私も「また明日」と手を振って…そのまま我に返るまで手を振っていた。体感時間は5分くらい、実際は…分からない。けれどもすっかり外は暗くなってたので、ひょっとしたらもっと長かったのかも。うわあ~、私、紛れもなく不審者じゃん。


 部屋に入って、手を洗いついでに顔も洗って、お茶を淹れて飲んだ。

まだ心拍数は落ち着いた感じがしない。気を抜くと、さっきの佐藤くんの笑い顔が浮かぶし、部屋中をウロウロしたい。心拍数も気持ちも一向に落ち着かない。


 どうやら私は隣の部屋の年下の男の子に、心を持っていかれたらしい。彼はそんなものを持っていったつもりはサラサラないと思うけど。


 あ~半年も隣に住んでいられる気がしない。明日から一緒に仕事だなんて、失敗する未来しか見えない。どうしよう。嬉しすぎる〜。赤くなった顔を両手で抑えつつ、明日からの空回りするであろう自分に、希望と暗い気持ちとが入り混じった気分を味わったのだった。


 







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