研修会直後
田中さんとダンジョン省の職員と三島さんが部屋を出ていった後、池田さんがやって来た。
「レモンティーポーション作るわよ」と、言った。
そうですよね~作りますよね〜。田中さん60オーバーだったんですもんね〜
絶対あのお肌は、50超えには見えませんもんね。シワなかったですよね〜。
「レモンもどきを仕入れに行きましょう」と吉田さんもやって来た。
つまりは我が第三ポーション制作部の女性勢揃い。周りを見ると、みんな紅茶ポーションの作り方を復習してる。
「グリセリンも揃えないと!」とあちこちから聞こえる。スゴイ、みんなおんなじ事考えてる。
一部の男性社員も同じように物資購入に走って行ったが、うちの部署の中村さんと藤田はそのまま立ちすくんでいた。 気持ちはわかるけど、あなたたちも家族に用意しないと恐ろしい目に合うよっと、小さい声で予言してしまった。
今日の出来事を黙ってられたら問題ないけど、女性スタッフがどれだけ慌ただしかったか、を語ってしまったらもう終わるね。次にあなたが言われるセリフは「なんで私の分は無いの?」だ。
まぁ、それはさておき、部署に戻ってみんなのポーションのレベルを確認しましょうよ。乾燥の練習もして。
一番ポーションレベルの高い人と、水魔法のレベルの高い人に作ってもらおうではないですか。 レモンティーポーションを。
明確な目的と欲望ってスゴイ。
私たちはほとんど1週間で、「乾燥」を完全にモノにした。田中さんの目論見通りなんだろうか?研修会のあの時点で、化粧水の話をしたのって…(なんにも考えてなかったです 田中談)
本来はこっちの方が正しい目的なんだけど、ポーションのレベルは部署全体で少し上がった。元々水魔法の得意な中村さんは、レベル2のAプラス位の出来になった。お茶ポーションにする際に水魔法を使えば、更にレベルアップなので田中さんに遜色ない程だ。
中村さんは出来上がったレモンティーポーションを奥様に贈り、家庭での地位が向上したらしい。そうよねえ〜、分かる、分かるわ〜
それはさておき、仕事の話だが会社としては個人でポーションを作るのではなく、機械化して大量生産することが目的なので、どこに人の手を加えるかを考えなくてはならない。水は水魔法で出して使いたいが、量と必要人数を調べないと。
お茶っ葉ポーションをオートメーション化して大量生産する為、私たちは動き出したのだった。
その後、もう一度ポーションの研修会は行われた。レモンもどきとオレンジもどきを使った研修のその時、参加者の女性のほとんどが「乾燥」を使えるようになっていた。レモンティーもアップルティーも慣れた手つきで作るのを見て、執念ってスゴイわ、思ったのだった。
ちなみにアップルティーのお陰で、その年の春は花粉症とは縁がなかった。




