36 研修会再び2
うちの会社の男子たちは、簡易鑑定を育てて、トップランナーに迫る勢いで成長しているらしい。
で、その基になったのが、私の魔法の使い方、なんだそうだ。
そんなの見て勝手に真似したら良いじゃん、と言ったのだが意外にもそれが難しいらしい。いや、うちの会社の子たちはすぐに覚えたよ。魔法はイメージなんだから、適当に覚えるでしょ、と、抵抗したのだがいつの間にやらスケジュールが組まれていた。
教えるのはウォーターボールと電撃らしい。
それこそホントに◯ケモンでも見て覚えたら良いじゃん、と心から思う。私の時間は高くつくのよ、と彰良に囁いておいた。
なんかどこかの体育館みたいな所に連れて行かれ、2日ほど練習指導をさせられた。ウソぉと言うくらいに、魔力操作ができない。うちの子たち、こんなんだったっけ?と思い出してみるんだけど、比べられないくらい、ショボいので、グループ分けで少人数クラスにして、指導をやり直す。
「では、このボールを水で包んで持ち上げてください」と、やり方を見せながら、やってみた。
私の両手から出た水でサッカーボール全体を覆い、持ち上げる。遠目からみるとボールを入れるネットの両端を握っているように見えると思う。
「そのまま5分キープしてください」
周りであっとか、うわっとか声が聞こえるけど、もうコレ私にどうしろと?
だってやってることは、ものすごく単純なんだもん。制御できるんなら、火魔法でやったって火事にはなんないよね?
「これで、中の蜂が死んだら、ドロップ品が出てくるのでそれまで頑張って〜」
私が言えるのはそのくらいです。ほんと頑張って。そこら中水浸しで、ボールごとあちこちに飛んでいってるけど。
「ドロップがでたら、今度は乾燥を使います。まずはこの水を消しますね〜」と言って、水を消してボールを掴む。そのまま乾燥をかけて、ボールについてる水を乾かす。
「本来の蜂の巣だともっと繊細に乾燥をかけた方が、中の素材もキレイに採取出来ます。乾燥が上手に使えると収入アップに繋がりますよ〜」と説明すると、またもや周囲がざわつく。
「先生、ダンジョンだと討伐モンスターは消えるのでは?」と目の前で不器用にボールを落としていた参加者が言った。
「あら、そう言えば…。でもこのやり方だと、だいたい蜂の巣ごと残るんですけど、知らない?」と横にいたダンジョン省の職員に聞いてみた。
職員の男性はちょっと怒ってるみたいだった。「ダンジョンエラーが起こるとは、こちらの方が聞いてないんですが」と言われた。
そんな事言われても、今までも普通に買い取り受付で買い取ってもらってたけど、何にも言われたことなかったのになぁと、息を吐いた。
ダンジョンでのモンスター討伐は、だいたいドロップ品を残して遺体が消えてなくなる。泥汚れとかはあっても、ありがたくも血で汚れることはない。でも、時折モンスターの遺体がそのまま残ることがある。これがダンジョンエラーだ。ドロップ品にプラスして素材が手に入るので、ダイバーにはラッキーな現象だ。
蜂の巣退治で、水魔法で蜂の巣を水に閉じ込めて全体を溺死させると、なぜだかまるまる残るのだ。蜂の巣ごと。ローヤルゼリーと、蜂の針とか素材取り放題だ。




