35 研修会再び
ポーション化粧品の弊害、というのがあるらしい。
ポーションを使うと、前の状態に戻ろうとするので、何も手を加えてない場合は問題ない。
たまたま簡単な整形手術をした人が、動画配信のライブで、ポーションを化粧水がわりに使ってしまったのだ。
本人の意図では、お肌がきれいになりました、をアップで見せたかったのだろうが、阿鼻叫喚の図となってしまったらしい。
ポーションを作ってる私たちを訴える話が出たそうなのだが、ポーションを化粧品として使うのは、目的外使用なので事なきを得た。迂闊に化粧品販売に手を出さなかった、あの時の私にGood Jobと言ってやりたい。
例えばケガや病気による手術を受けた場合、そこで傷跡が治りましたと判断されると、それ以降ポーションを飲んでもカケても、変化はない。
ケガの痕や摘出手術等が無効化されたりはしない。
一番私たちに身近な例が、史郎くんだ。彼はダンジョンの中で膝をケガした。治療をしたが、一旦これ以上の回復は出来ないと判断された。
ケガをした直後ならポーションは効いたハズ。おそらくポーションの効果を期待できる一定期間を過ぎてしまったのだと思う。故に彼がポーションを飲んでも、膝は治らない。
今回の整形の人も、もうちょっと時間を置いてたら無事だったのだろうに。
我が社の最大の目標は、期間経過したケガにも効果のあるポーションを作ること、となっている。
そんな目標を掲げつつ、レベル上げに勤しんでいたら、ダンジョン省からまた研修会の依頼が来た。
今回はお茶ポーションではなくて、なぜだか魔法の使い方、の方だった。
「研修ってポーションの作り方なんて、もうみんな知ってるでしょ?」
「今回頼みたいのは、安全な蜂の巣退治のやり方なの」
息子の彰良からの電話だった。
「そんなの普通にやったら良いじゃん」
「お母さんの会社の人はケガしないけど、普通はもっと大変なの。それがやり始めて1年くらいで全員取得って、あり得ないの、本来は!」
「ダイバー雑誌のランキングには、簡易鑑定は割と取りやすいって書いてあるじゃん」
「5級とかに比べたら、取りやすいっていうだけで難しいの」
鑑定の最高峰はS級で、これはもう途轍もなく難しい。ダンジョンの下層のエリアボスを倒して出てくるドロップスキルに数回に一度あるか無いか、という難易度だ。
5級から1級までは、初心者ダンジョンから中級者向けダンジョンのボスモンスターの討伐でドロップすることがある、という感じ。どちらにしてもそう簡単には取れない。
簡易鑑定はダンジョン蜂の女王蜂からドロップする。もちろん必ず、ではない。何度も挑戦してやっと手に入る。
その簡易鑑定は、持ち主がレベルアップすると少しずつ鑑定もレベルアップする。私は簡易鑑定が今5級鑑定に育ったところだ。史郎くんと太一くんは4級まで行った。下まで潜ってレベルアップするってスゴいなーと感心する。史郎くんは電撃を使えるようになってから、後方支援で大活躍中なのだ。




