3 ダンジョン受付
いいね、ありがとうございます。
すごく嬉しいです。
色んな考えが頭の中を渦巻いたけれども、きっちりと分析できる程の能力もなければ、実験を試みる程の思考もない、のほほんと生きてきただけのおばちゃんは、
「考えるんじゃない、感じるんだ」と、古の映画スターの格言に習うことにした。
即ち、ダンジョンに行くことにした。
「おはようございます、田中さん」と、受付の近藤さんが声をかけてくれたので、こちらも挨拶を交わす。
「今日も1階か2階のあたりに行きます」
「気をつけて行ってらっしゃい」と近藤さんが手を振ってくれた。
近藤さんは、ダンジョン省のパートさんで、近所に住んでる。私の娘の幼馴染だ。
娘にはダンジョンに行くのを内緒にしようかと考えたのだが、小遣い稼ぎに上層階に行くのは伝えた。
近藤さん、と言うか普段は春花ちゃん、と呼んでる。
春花ちゃんは、パートとは言え、ダンジョン省の職員としてきちんと守秘義務を守るので、私の稼ぎがどのくらいかを知るのは、税務署とダンジョン省だけである。
受付でカードリーダーにマイナンバーカードを通して、入ダンを済ませる。
マイナンバーカードにはダンジョンダイバーの登録も紐付けてあるので、事故があって帰れない場合も誰が戻らないのかがすぐに分かるようになっている。
そして、私はこれがカードを一緒にする一番の理由だと思ってるのだが、所得のごまかしが効かないのだ。ダブルワークの人も納税も逃れられない。
軍手をはめて、金槌を持つ。
ダンジョンの中は意外と明るいので、そのまま進む。
ダンジョンが出来てから、電気やガスが、全て魔物の核を元に稼働するようになった。
最初の数年は、ライフラインの供給が安定しなくて、大変だったけれど、今はかなり快適に過ごせている。
クリーンなエネルギーを使用する、と言うことで地球温暖化に対応できているらしい。確かに以前ほど、ゲリラ豪雨が起きないし、気温の上昇が激しくはない。
お金にもなって、地球の為にもなるなら、Win Winと言うやつだろう。
スライムのたまり場を見つけて、トントンと核を採り、ドロップを拾う。
ドロップ品は常にある訳じゃないけど、出たら収入が上がるので、ラッキーだ。
この吸収剤は水分を蓄えるので、砂漠の緑化にも使われている。
吸収剤に吸わせた水を取り出せたら、土砂災害とか水害対策に水不足にも使えるんじゃないかと研究されている。
世の中の賢い人たちの研究成果に、期待している。