25 簡易鑑定3
鑑定1で見える範囲では、リンゴもどきもレモンもどきも、「疲労回復、お肌に良い」「完熟までもうちょっと」とか、そんな感じなのだが、「採り頃」を信じてアップルティーとレモンティーに仕上げて見たところ…。
ダンジョン省から送られてきた詳細鑑定の結果が、
「超疲労回復 抗アレルギー実効値、共に高し」
アン◯ンマンに新しい顔を与えるが如く、疲労回復力があることが判明。
アレルギーに関しては、花粉症ほぼ全快並みの効き目が〜。
花粉症は日本でかなり沢山の人が悩む症状だ。日常の不自由が無くなるなら、ちょっとくらい高くても買う、という人はたくさんいるだろう。
(そう言えば、私の目薬ポーションも売れるな、と今気がついた。近いうちにダンジョン省に送ろう)
値段の付け方がわかんねぇよ。
これに関してはもう、私の希望とかではもうどうしようもない。
ダンジョン省に丸投げすることにした。もう考えるのに疲れたのだ。
丸投げされたダンジョン省でも、値段を決めきれずに徐々にフルーツティーポーションは値上がりしていった。リンゴもどきとレモンもどきの価値アップに、買取受付担当者も右往左往しているらしい。
全国的にもダンジョンで樹の実採取がすごいことになった。私達が採取しようにも、樹の実なんか何処にもねぇよ!ダンジョンの木は常に葉っぱのみの状態で、採取出来ない。
樹の実採取は、初心者ダイバーが安全にダイブ出来る範囲の上限なので、ちょっとでも稼ごうと思ったら、そりゃやるだろうと思う。特に教会ダンジョンは、うちのくららさんと史郎くんが常に蜂の巣退治に勤しんでる為に、危険もない。ちょっと前の私だって喜んでやっただろう。
販売所の売り物は基本鑑定書が付いてるのだが、安価なものは特に「ダンジョン産」程度の記載しかない。最近の高評価で買取が行われるようになったリンゴもどきを含む樹の実は、正しく「ダンジョン産」と「採取日」しかラベルには無い。
仕方なく私はダンジョンの販売所で鑑定を使いながら、リンゴもどきとレモンもどきを選別しつつ、購入したのだった。
採取した薬草と購入した果実を持って会社に戻ると、珍しくお客さんが来ていた。納入は直接教会ダンジョンにするし、連絡は電話やアプリ、郵便等でするので、会社に人が来ることはものすごくレアな出来事だった。
「あら、高橋くんじゃない、久しぶりね〜」
「こんにちは。エーッと史郎、居ますか?」
「連絡取ってないの?今はダンジョンに行ってるよ」
「急にこっちに来る用事が出来たので…」と高橋くんは後ろにパーティーのメンバーを引き連れて、ゴニョゴニョと語尾をぼかした。
「まあ、中に入りなさいよ。お茶でも出すから」と、会社の事務所というか、ダイニングテーブルに案内した。
「ごめんね~。ここあんまり人来ないから、お客さん向けに出来てないのよ」と、言ってお茶と茶菓子を出した。なんとか茶器は足りたので、ホッとした。




