11 おばちゃん、始動する
高橋くんから電話があった。
「こんにちは、先日は有難うございます。ポーションも譲ってもらって助かりました」
「こんにちは、助かった、と言うことはケガをした、っていうこと?」
「そうなんです。仲間が足を骨折したんですが、飲むのと掛けるのとで治りました。他にも小さいケガが何ヵ所か。」
「高橋くんの水魔法で作ったの?」
「そうです。田中さんに掛けてもらった時程スグには効かなかったんですけど、半時間くらいしたらキレイに治りました。
パーティの連中から、もっと仕入れてこいと言われたんですけど、また譲ってもらえますか?」
「あれ、使い切っちゃった?」
「はい、この間泊まりでダンジョンに行ったんです。パーティも5人なんで、すぐに無くなっちゃって」
「じゃあ、色々と使い方を試してもらえないかな?
今度は高橋くん以外の水でポーション作ってみてくれない?
次回はまた他のメンバーで、っていうふうに。
で、水を出した人のランクとかも情報が欲しいんだけど、構わない?」
「そのくらいならメンバーに言えばオッケーしてもらえると思います」
「今手元にあるのが、煎茶風味と紅茶風味にアップルティー風味とレモンティー風味なんだけど、それぞれ適当な数で良いかな?」
「味変わると飽きなくて良いですね、お願いします。
何ならまた、果物もどきの樹の実を取ってきましょうか?」
「あら、助かるわ。そうしてもらえる?」
先日会ったダンジョンの受付前で、明日待ち合わせをして、電話を切った。
荒茶薬草を種類別に小分けして、簡単なアンケート用紙を作った。
味は個人の好みだし、やっぱりポーションを誰が作ったか、ケガの大小と、効き目の感想は必要事項よね~と、あまり面倒臭くない程度に項目を作った。
その場で息子にチャットを送って、会って相談がある旨を伝えた。
もしかしたら、割と画期的かもしれないし、他に研究してる人がいれば、紹介してもらえるかもしれない。
最悪、大局からは全然歯牙にもかけない程度のものだと判明するだろう。
高橋くんたちのパーティーからは、「欲しい」と思ってもらえるんだから、他にも欲しい人はいるだろう。
ダンジョン省からは相手にされなくても、細々とダイバー相手に商売する事は出来るはず、と何故か私はこの時点で自分が商売人になる事を決めていたみたいだった。
よし!
まずは息子に特許を取れるか確認してもらうこと。
自分の立ち位置を確認しよう。
私の詳しいレベルを知ること。
私が作るポーションの成分を分析できるか、出来るならその成分を知りたい、
このあたりを息子に丸投げしよう。
晩年の雑事を全て私と妹に丸投げしてきた今は亡き迷惑な母に、自分がすごく似てきたな、と思ったが、そこは気が付かないことにした。




