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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第一部 第六章

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22 ヨウの訪問。

 濡れた髪をアップにして纏め、パジャマ用のカンラを着て衣類や道具を包んだ布を抱え佐知子はハンムを出る。


 広場はいまだ賑やかだった。そんなお祭り騒ぎの中、ほかほかの状態でふーっと息をつき軍用地の門を通る。そして、こちらもいまだ賑やかな食堂の脇を通り、角を曲がると、


「うわぁ!」


 曲がったすぐの使用人小屋の壁に、誰かが寄りかかっていて、佐知子は驚いて反射的に飛び跳ねて少し距離を取った。


「…………おかえり」


 しかしその声と、真っ暗な中ぼんやりと見える姿を見てその人物が誰かすぐにわかった。


「えっ! ヨ、ヨウ? えっ!? どうしたの!? えっ!」


 先程から考えていて、会おうと思っていた人物のいきなりの登場に佐知子は驚いて慌てる。


「……会いにきたら……ハンム行ってるって聞いたから……待ってた」


 ヨウは壁から体を離すと、真っ直ぐに立つ。


「あっ、ご、ごめんね! 汗だくになるからすぐにハンム行きたくて行ってた!」


 慌てて佐知子は謝る。


「いや……突然……来たし……」


 ヨウは途切れ途切れに答える。しかしこれがいつものヨウの喋り方だ。


「…………」


 暗闇で姿ははっきり見えないが、佐知子は久しぶりに聞くヨウのその声と喋り方に、何だかちょっと嬉しくなり胸がほんわかした。


「ちょっと……今からいいか……」


 昼間の事もあり、少し気まずそうに顔をうつむかせてヨウは問う。


「あ、うん! 大丈夫! 荷物置いてくるね!」

「ああ……」


 佐知子が駆け足で小屋の中に入ると、ヨウが先程顔を覗かせた為、皆に、にやにやした顔で見られ、荷物を置き出てく時に、ヒュー! いってらっしゃーい。などと言われ、佐知子は少し恥ずかしかった。


 外に戻ると、ヨウは同じ暗がりに立っていた。


 今日は満月に近く、月明かりで明るいはずなのだが、雲で影っていて、姿や顔はやはりあまりよく見えない。


「おまたせ!」


 佐知子が駆け寄ると、


「じゃあ……ちょっと……ついてきてくれ……」


 と、ヨウは歩き出した。


(どこに行くんだろう……)


 不思議に思いながらも、佐知子はゆっくりと歩いてくれるヨウの後ろについて歩き出した。

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