16 無事でいて。
その後、隊列が門の中に入り切ると、門は閉まり、民衆は広場でお祭り騒ぎをはじめた。歌い踊り、そのまま宴会に突入だ。
「サチ、中入ってヨウ副長官、確認してきな? まだ姿見てないんでしょ? 副長官亡くなった話は聞こえないし……雰囲気的にも大丈夫そうだけど……」
その言葉で、佐知子に不安が襲う。
「私はとりあえず彼の姿確認できたから先に仕事に戻るけど……ごめんね」
メリルは赤い瞳と目元ですまなそうに、けれどどこか幸せそうにいう。
「あ、はい! 大丈夫です! 私もすぐ戻るので先に戻っててください!」
佐知子がそういうと、メリルは、うん、わかった! と、頷いて病院の中へと戻って行った。
「はぁ……」
佐知子は一つ、息をつく。そして高い、青い空を見上げた。
その空にはちらちらと、すぐそばで騒ぐ民衆のカラフルな布吹雪がちらつく。
ヨウに会いに行く……門をくぐり、軍用地に入って、ヨウの姿を確認して、二言、三言、無事でよかったと言葉を交わして戻る。それだけだ。それだけ…………ヨウが無事ならば。生きているならば……胸がドクドクと少し早く鼓動する。
怪我をしているだろうか、戦死……していないだろうか……様々な不安が頭に浮かび、渦巻く。心が重くなる。泣きそうになる。吐き気が込み上げてくる。
だが、行かなくてはならない。確認しなくては。早くこの不安から開放されたいのもあるが、元気で無事な姿を見たい……あの顔を見たい……。
佐知子は門を見据えた。




