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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第一部 第六章

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13 無事に帰ってきて。

 それから村は、閉まっていた門も店も開き、徐々に元の姿に戻って行った。

 そして、軍が戻ってくるのが二日後だと知らされる。


 皆は迎えのパレードと宴の準備に取り掛かった。といっても、紙吹雪ならぬ色とりどりの布吹雪と花を投げ、村全体が宴会をするだけらしいのだが……。


 そんな村の様子を知りつつも、佐知子は昨日も今日も忙しく、看護係の仕事をしていた。

 相変わらずのお湯汲みだったが、それでも精一杯だ。少しは慣れたが、それでも肉体的にも精神的にもつらい。浮かれた村とはどこかいる場所が違うような……世界が違うような気がしていた。


 それでも、軍が、ヨウが帰ってくるのは嬉しい。朝起きた時も、仕事中も、ハンムでも、夜寝る時も、帰ってくるんだと、佐知子の胸は高鳴っていた。しかし、


「彼……無事に帰ってくるかなぁ……」

「…………」


 軍の帰還を明日に控えたお昼の休憩中、一緒に昼食を食べていたメリルのそんな一言で、佐知子は目から鱗が落ちた。


「あ、ごめんね! 暗い話して! 無事に帰ってくるよね!」


 メリルはあわてて明るく努め、パンを頬張る。佐知子は咀嚼していた口と手が止まった。


 そうだ、戦が終わったからといって、無事という保証はないのだ。

 怪我をしているかもしれないし…………死んでいる可能性だってある。誰が無事で誰が死んだという情報は入ってこない。


 ただ、重傷で、戦地では治療できない戦線離脱した怪我人だけが、この病院へ運ばれてくる。あとは、戦況報告のみ……。


 佐知子は急に不安に襲われた。あれだけ浮かれて、幸せだったのが真っ逆さまだ。


(ヨウ……無事かな……生きてるかな……)


 生きていてくれさえすればいい……。

 佐知子はそう願った。

 怪我ですむならそれでいい……生きてさえいてくれれば……。

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