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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第一部 第六章

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7 メリルの気遣い。

 何度もこなして慣れていてもやはり嫌なものなのだろうか……どんな仕事なのかと、佐知子は緊張して、ドキドキとしてくる。


「大丈夫? サチ」


 すると、隣に座っていたメリルが、声をかけ、肩に手を置いてくれた。


「あ、は、はい」


 佐知子はあわててメリルに顔を向け、うなずく。


「大丈夫。サチは今回が看護係はじめてだから呼ばれるの最後だから。まぁ~……呼ばれないってことはないけど、最後まで、時間はかせげるよ」


 メリルはにこりとほほえんだ。



 メリルという女性は、穏やかなほほえみを浮かべるやわらかい印象の、女性らしい女性だった。おだやかでのほほんとしており、ほんわかしている。お姉ちゃんにするなら、こんな人がいいな。と、佐知子は思っていた。



「……呼ばれてあっちでする仕事……やっぱり……大変ですかね……」


 わかりきってはいるが、佐知子はメリルにそんな質問をしてしまう。


「え、うーん……そうだねぇ。大変……というか、精神的にきついかな……血とか……いろいろ見ちゃうから……」


 あー……と、佐知子は看護係で最初に呼び出された時の、カーシャの言葉を思い出した。


「でもね! 怪我した兵士さんのためになる、とっても素敵な仕事なんだよ」


 あわてたようにメリルは付け足す。


「って……私と彼の出会いが前回の看護部屋だったからなんだけどね……」


 へへへ……と、照れた様子でメリルはいった。


「え! メリルさんと彼氏さん、前回の看護部屋が出会いなんですか!」


 その話には、佐知子も驚き食いついた。


「うん……彼が傷追って、戦線離脱して運ばれてきて……彼はやっぱり傷追って苦しかったんだって……で、やさしく看病してくれた私を好きになってくれた……って……私、特に彼、意識してなかったんだけどね! でも、回復してきて、話せるようになってからよく話すようになって……それで……ちょっと、いい雰囲気になって……退院する時……告白されて……」


「うわぁ~」


 元いた世界では、恋愛の話にはあまり興味のなかった佐知子だが、まるでちょっとした映画のような綺麗な恋の物語に、さすがの佐知子も食いつく。思わず、顔に笑みを浮かべ、瞳を輝かせて声をあげた。


「そうか……ここではそんな出会いもあるんですね……弱ってるからなおさらかぁ……」


 佐知子がそんなことをつぶやくと、


「サチにはヨウ副長官がいるでしょ!」


 ダメよ! と、つっこまれる。


「え! いや、私のことじゃなくて、一般的なことで!」

「ふふふ~、ヨウ副長官が帰ってきたらいっちゃおう~」


 メリルはにこにことほほえみながら意地悪なことをいう。


「え! ちょ! やめてくださいよ!」

「あれ~? 二人はなんでもないんじゃなかったの~?」

「いや、そうですけど!」

「ふふふ……元気でたみたいね」

「!」


 いつの間にか、緊張感や胸の嫌な動悸もおさまっていて、むしろ楽しい時間を過ごしていた……自分の不安を消そうと、メリルは話をしてくれたようだ……。


 お姉さんにはかなわないな……と、佐知子はうれしくも、申し訳なく、情けなく思い、少しうつむいて、眉をさげながらほほえんだ。

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