4 交戦の知らせ。
翌日からは、夜明けの鐘に起き支度をし、病院に向かい九時まで働き、三時まで休憩して、三時の鐘から日没の鐘まで働くという生活になった。
翌日からの佐知子は少し気分がすっきりしていた。負傷して帰ってくる兵士のために頑張ろうという気にもなり、意気込んで看護係りの仕事をしていた。
布団を干し、布団を並べ、治療器具を煮沸消毒し、並べる。包帯や布の調達。足りなくなるらしいので、準備が一段落すると、看護係の休憩部屋で皆でひたすら包帯を作っていた。
看護係になり、はじめて会話したり仲良くなる人もいた。元々、同じ使用人小屋なのもあり、包帯を作りながらずっとおしゃべりをしている。不謹慎だが、佐知子は少し楽しかった。
皆で話しをしたり、歌を歌いながら作業をして、つらい気持ちも少しやわらいできた数日たったある日のこと、バタバタと廊下を走る音が聞こえたかと思うと、扉を開け放しかけておいた布をめくり、同じ看護係の女性があわてた様子で駆け込んできた。
「軍が交戦したって! 戦時新聞、張り出されたよ! 今から広場で読み上げもするって! 行きたい人は行っていいらしい! 行こう!!」
作業をしていた休憩室がざわつき、次々に女性が立ち上がり、部屋を出て行く。
佐知子はその知らせを聞いて、突然のことに、え……と、呆然としていた。
交戦と聞いて、映画で見たことのある大勢がぶつかりあう光景が脳裏に浮かぶ。
交戦……ヨウは……と、呆然としていると、
「サチも行こう!」
胸まであるウェーブした栗色の髪を後ろで束ねた、そばかすのある二十代のメリルという仲良くなった白人の女性が声をかけてくれた。その声でハッとし、あわてて立ち上がる。そして広場へと向かって走り出した。




