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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第一部 第六章

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3 やるしかない。

「おつかれさーん、看護係になっちゃったんだってねー」


 暗くなり、他の女性たちと使用人小屋に戻ると、非番のライラが布団にもたれかかりながら気の毒そうにほほえみ、迎えてくれた。


「あ、うん」

「ついてなかったねー。しかも、はじめてだよね?」

「うん……」


 朝から見送りや、掃除で心身ともに疲れて覇気のない佐知子を見て、ライラは少し心配そうな顔をした。


「……ご飯食べて、ゆっくりハンム行ってきな? それで早く寝な?」

「うん……ありがとう……」


 正直、すぐに布団に入りたい佐知子だったが、掃除でほこりまみれの汚れたままで布団に入りたくはなかった。食事はもう来ていたので、手早くすますと、ハンムへと向かった。



「はぁー……」


 体を洗われた後、フラフラとしながら中央の石の上にタオルを敷き寝転んだ。


(本当は湯船につかりたいなぁ……)


 それでもお湯を体にかけ、全身を泡で洗われ、サウナのような空間の中、ぽかぽかとした石の上に寝転んだら、疲れや緊張が抜け、とてもリラックスできた。


 少し薄暗いオレンジ色の空間の中、ぼーっと円形の天窓を見つめ、今日一日のことを振り返る。


(ヨウ……行っちゃったなぁ……今ごろ何してるんだろ……お風呂……とか、ないよね……)


 大変だな……と、薄暗い天井を見つめて思う。そして看護係のこと。


(看護係かぁ……今日は掃除して……明日は……なんだっけ……確か布団とか治療器具の用意だったな……)


 そこでカーシャの言葉を思い出す。使用人小屋での女性の言葉を思い出す。


(私にできるのかなぁ……)


 ぼうっと暗い天井を見つめながら、心の中でつぶやいた。しかし、


(でも……きっとやるしかないんだろうなぁ……)


 佐知子はそう思う。



 どうしようとか動揺していても、怖いとか思っていても、どんどんまわりは動くし状況は迫って来る……結局やるしかなくて……立ち止まって立ち尽くしていることはできない。やるしかないのだ。



(そうだな……)


 佐知子はやっと心の整理がついた気がした。



 やるしかない。



 どんな状況でも、動揺しないで、少し大きく息を吸い、吐いて、息を止め、体に少し力を入れ、冷静に状況を見て、判断して、行動する。



 これはこの先、この世界で生きていく上で、きっと役に立つ心構えだな……と、佐知子は思いながら目を閉じた。


 じんわりと体があたたまる。


「よっし!」


 勢いをつけて佐知子は体を起こし、立ち上がった。

 そして、お湯で汗を流し、ハンムをあとにしたのだった。

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