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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第一部 第五章

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15 やっと会えた。

 息を切らしながら佐知子は走る。


 隊列は、先頭に黄やヨウの高官たち、その後ろに左右に二塊の隊列のおかげで、一直線に道は開いているが、距離は長い。


(遠いよ!)


 走るのはあまり得意ではない佐知子は、運動部に入るか、体力作りをしておけばよかったと後悔した。


 徐々に先頭が見えてくる。すると、先頭にポツリと一人だけ、馬の傍らに立ち、馬を撫でている人影が見えた。


 走るのをやめて、荒い息で歩いて近づいていく。徐々に鮮明にわかるその姿は、もこもこの防具でも、甲をつけていないのでわかった。


 黒髪に褐色の肌、見慣れたあの顔。

 ヨウだった。


「ヨウ!」


 佐知子は駆け寄る。


「!」


 ヨウは振り向く。


「やっと……会えた……」


 荒い息を繰り返し、下を向きながら息を整えつつ、佐知子は絞り出すようにいった。

 せっかく念入りに整えた髪も乱れてしまった。


「サチコ……ああ、悪い。ここまで遠かったな。つい、いつも通りにしてた……」


 ヨウは今、気付いたかのように、しまった……という顔をする。


「…………」


 黙って、荒い早い呼吸を繰り返しながら、その言葉を聞き、少し悲しくなる佐知子。


 ヨウには、いつも見送る人が誰もいなかったのか、と。

 いつも戦地に赴く時には、一人で、皆が愛する人との別れを惜しむ中、軍隊の先頭で、馬とともにそれが終わるのを待っていたのかと……。


 はぁ……と、大きく息をつき、佐知子は顔を上げた。


 大丈夫か……? と、ヨウは心配そうな表情で聞いてきた。そんなヨウを見て思う。でも、今回は私がいる。今回からは私がいる……と。


「大丈夫だよ。ヨウが心配してどうするの? 私が心配するほうでしょ?」


 佐知子は少しおかしくて、ふふっと笑った。


「…………そうだな」


 その言葉に、ヨウは少し瞳を見開いてから、ふせる。


 心配される……そのことが、じんわりと心に沁みた。


 佐知子は軍隊の先頭の先を見た。

 賑やかな村の方とはガラリと変わり、黄土色の、乾いた草も木もない広大な大地が延々と広がっていた。


 その殺伐とした光景は、死を予感させる物悲しいものだった。ヨウはここから向こうへ行ってしまう……佐知子はヨウへ向き直った。

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